[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-00-430837-2, \700
前著「メディア・リテラシー」に続いての第二弾。New York Public Libraryの先進的機能の紹介に留まらず,図書館関係者や実際の利用者へのインタビューがふんだんに盛り込まれており,近年の不況によって財政的に苦しい(Public LibraryではあるがNPO法人)という実情もちゃんと報告してある辺り,何事も過不足なく調査する著者の誠実さが際立つ。
利用者の望む「本」を無料で貸し出すだけではなく,利用者の望む「情報」を,書籍やThe Internetを介して提供する,という先進的機能は,日本でも浦安市立図書館が実践していることで知られつつあるが,まだまだ全国の行政の認識は甘く,経験を積んだ司書も足りない現状では,そう簡単に普及するとは思えない。しかし,本書で示された「知のインフラ」としての機能は,間違いなくこれから必須のものとなるだろう。
The Internetが飽和状態にある今,Googleを検索すれば望みのものは何でも見つかる,という夢物語は胡散霧消し,無数の二次的情報の中から信頼のおける数少ない「情報」を求めるリテラシーが求められるようになった。そして,結局,未だに信頼の置ける情報源は,人間である著者が情報をまとめ上げ,人間である編集者が意見を述べて改良した「紙の本」であることが多い。そしてまた,あまたの本から,利用者の望む情報をすくい上げる手助けは,人間である司書に頼る他ないのである。
図書館よ永遠なれ,と,本書読了後には願わずにはいられない。ああ,著者のマジメさに引きずられて,わしの文までマジメになってしまった。