[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-12-204528-2, \552
最近は教育者として熱心に学生さんを指導しているためか,読み応えのある長さの作品をめったに描かなくなってしまったK子たんであるが,幸い,旧作が次々と文庫化されている。本書もその一つで,ブライトシリーズだけでは飽き足らないワシのようなファンにとってはありがたい。
ワシは所謂24年組の熱心な読者ではない。少女マンガの入り口は70年代後半~80年代前半の「りぼん」だったので,最初の洗礼は乙女チック路線であり,有閑倶楽部開始前の一条ゆかりですら,ワシにとってはちょっと古めかしく感じられたのである。そんな人間であるから,いくら世評が高くても,絵柄が今風(当時の)ではないマンガを読む筈もなく,大島弓子は「サバタイム」で,K子たんは「紅にほふ」で,共に1990年代に入ってようやく初邂逅を遂げたのであった。
そんな遅まきながらのK子たんファンなので,「天馬の血族」以降の絵が一番好みである。ちょっと古めかしいが,それが土俗的な凄みを感じさせ,現実から遊離しない雰囲気を醸し出すのに成功しており,「吾妻鏡」や本書のような歴史物を描くには最適である。
それにしても,この物語の主題である主従関係の,なんとまぁ退廃的なことか。解説の村上知彦さんは「絵から発するオーラ」を感じたそうだが,ストーリーからもただならぬものを感じる。主人である廣信を抱く左中太は,性欲・愛欲に加えて,幼い頃に別れた母親の面影も主人に重ねている。人間の欲望を三つ巴にしているのだから,ものすごく重苦しい物語なのに,目が離せず一気読みしてしまった。
お気楽なボーイズラブに飽き足らない向きにはお勧めである。
Posted by tkouya at June 25, 2005 10:47 PM