12/31(土) 駿府・晴

 西高東低冬型の気圧配置が年明けに来るようだが,この年末はその手前,そこそこ寒いが完璧な青空とはいかず,富士山にも雲がかかっていて明日のご来光も少し遮られる可能性がある。朝晩の寒さは例年並みで,日中は日向でも少し肌寒い。

 コロナウイルス対応ワクチンも4回目を打ってしまい,それでも完全な予防効果は見込めずに職場でも教職員・学生問わず罹患者が続出する状況ではあるが,慌てる人はもはや誰もおらず,完全にインフルエンザ並みの対応と反応に成り下がっている。ワシの場合,11月初旬に4回目を打ったので2月以降に5回目を打つことになりそうだが,正直だんだん馬鹿馬鹿しくなってきている。もちろん感染せずに済めばそれに越したことはないが,ここまでオミクロン亜種が蔓延ってしまうと一回ぐらいかかっておいた方が予防効果が上がってむしろ良いのではないと言いたくなる。中国は国内からの反発に慄いてゼロコロナ政策を放棄し,「どーせオミクロンは軽症だからいっそ感染しまくって集団免疫を目指せ!」と真反対の方向に走り出した。荒療治もいい所だが,春節後のピークアウトが済めばむしろいつまでもマスクや定期接種やめられない国を嘲笑うに違いないのである。日本でもようやく次年度からコロナウイルス感染症を5類へ変更する検討に入ったし,この第8波が終わればその宣言を行うに違いないのである。来年早々,さっさとやってしまって頂きたいものである。

 とゆーことで,ウクライナ戦争とコロナウイルスに明け暮れた一年であったが,今の所,戦争に巻き込まれず,物価高に伴う金利上昇にようやく日本経済が乗り始めたのは幸いであった。2023年はせいぜい足手纏いにならないよう,あと10年は頑張ってプログラミングと論文書きに明け暮れたいものである。そのためにも楽しんで情報収集とアプリ作成に勤しみたい。

 新年の準備(旨煮とカレンダーのセッティング)も終わり,紅白歌合戦で知らん歌を楽しみながら,いつもの年越しを楽しんでいる。ここんとこ年が明ける前に眠気に負けていたが,今日は除夜の鐘を聴けるかしらん?

 本年も大変お世話になりました。
 来年もよろしくお願い致します。

佐藤賢一「シャルル・ドゥ・ゴール」角川ソフィア文庫

[ Amazon ] ISBN 978-4-04-400732-4, \1240 + TAX

 フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」()は,最初,原作の翻訳を夢中になって読んだものである。その後,長じて映画も見たが,これもひたすら渋い作りで,原作のフランス警察警部がコロンボの如くパッとしない中年親父にも関わらず,ジリジリとターゲットのド・ゴール仏大統領の暗殺を狙う冷酷な犯人を地道に追いかけていく。派手な音楽もなく,クライマックスの暗殺実行シーンもあっさり終わり,それがまたひたすらリアルで寂しさも感じさせるあたり,こういうのが大人の映画だなと勝手に決めつけているのである。
 とはいえ,原作を読んでも映画を見ても,今ひとつ腑に落ちなかったのは,このシャルル・ド・ゴールという年老いた背の高い大統領がなぜこうも執拗に命を狙われるのか,その理由である。もちろん,原作では説明があり,アルジェリア独立を認める大統領の政治決断に対して反発する政治勢力がテロを敢行している,ということであったが,そもそも「アルジェリア独立」がどれほどの衝撃をフランスにもたらしたのか,その辺りの時代背景を知る由もないワシの胃の腑には落ちてこなかったのである。
 そんなワシにとって本書はピッタリの参考書であった。第2次世界大戦ではフランス国土の半分がナチスドイツの支配下に抑えられ,もう半分もペタン傀儡政権がかろうじて存続しているだけということはぼんやりとは知っていたが,ド・ゴール将軍がイギリスに渡って自由政府を立ち上げて大戦末期にレジスタンスや連合軍と協力しながらフランスの解放を行い,かろうじて「戦勝国」の地位につき,国連の常任理事国の一席を占めるに至ったという経緯の詳細は本書を読むまで全く不案内であった。その後のフランス植民地の独立の機運の高まりでにっちもさっちも行かなくなったフランス政界にカムバックした救国の英雄は,大統領の権限を高めた第5共和政を立ち上げて,単なる植民地とは言い難いほど関係を深めていたアルジェリアの独立を認めるに至る。この辺の詳細は第9章「アルジェリア問題」に詳しい。なるほど,これだけ本国からの移民が深く根ざしたアルジェリア社会を切り離すのは相当な力技が必要になるなと,著者の圧倒的な筆力に唸りながら納得するに至ったのである。そりゃまぁ,反対する側としては暗殺したくもなろうというものである。

 本書は「フランス」を骨身に染みて体現していると自負している救国の将軍の生い立ちから,長年住み続けたコロンべ・デ・ドゥー・ゼグリーズに若くして死んだ娘と共に葬られるまで,過不足なく時代背景や政治状況を繰り込みながら巧みにその人生を詳述している。正直,直木賞作家なんだからフツーに角川文庫に入れてもよかろうと思ったもんだが,あんまし売れないと思われたのか,お堅い学術文庫に収められてしまった。とはいえ,鹿島茂も講談社学術文庫に納められちゃうし,学術的価値があるとなればお高めの価格で販売される所に入っちゃうのも仕方ないのかもしらん。

 とゆーことで,近寄りがたいソフィア文庫ではあるが,本書は愛国的熱血将校のフランス救国物語であるからして,安心してワクワク楽しんで読める。年末年始のお供としてふさわしい良書である。「ジャッカルの日」に連なる長年の疑問を解消できたワシからもお勧めしておく次第であります。