大島弓子「キャットニップ5巻(完結)」小学館,私屋カヲル「ブリちゃん日記2巻(完結)」竹書房

[ Amazon ] ISBN 978-4-09-389877-5, \1400+TAX

[ Amazon ] ISBN 978-4-8019-9502-4, \1500+TAX

 久しく出ていなかった大島弓子の猫エッセイ漫画,「キャットニップ」5巻がやっと出た・・・と思ったら完結ということで,つまりは本人なりの終活の一環ということらしい。あれだけ猫にまみれた生活を過ごしていながら,徐々に老いていく猫と自分,とうとう最後の2匹も昨年息を引き取ったとの由。猫のために住み慣れたマンションを売却し,今の一軒家に越して元の飼い猫から保護猫,たまぁに現れる野良とも交流しつつ,しっかり避妊させて自然に摂理に従って去って行く猫たち。完璧なまでの終活模様,おみそれしましたと言う他ない。簡素を極めた素朴な線はアートの領域に達しており,それでいてしっかり少女漫画テイストは生きており,可憐であり美しい。よき老後を送られんことを。

 ・・・じゃ,ずっと年若い私屋カヲルの猫漫画をこれからは楽しもうと2巻を買ってきたらこれで終いというじゃありませんか。あんまりだ,大島弓子御大の代わりを誰に求めればいいというのか,バツイチ独身女の酸いも甘いも嚙み締めて幾星霜,日がな一日がっつり猫と戯れる一戸建て生活を楽しめる漫画を,これからはどこに求めればいいというのか。デビュー時はあんな絵だったのにあれよあれよとエロくなり,欧米では危険書扱いされるレベルまで到達した表現力をもってして躍動感たっぷりの中年女の雄たけびを他のどこに求めればいいのか。まったく次の連載の当てがないなら同人誌でもいいから続けて欲しいモンである。

 以上,夏休みの終わりに猫エッセイ漫画2冊も終わってしまってシオシオのパーになってしまった五十路男の愚痴でありました。

9/27(日) 駿府・曇

 9月も半ば過ぎになるとすっかり暑さも遠のき,西日本で荒れ狂った猛暑もどこへやら,秋雨前線がのへーっと関東から東海を縦断して京都から日本海に抜けるところに停滞し,時折北に上がってきた台風からの湿気が刺激になって線状降雨帯を形成しては収穫前の農産物を台無しにする有様。涼しくなったのはありがたいが,急激な気温の変化が季節外れのインフルエンザ流行をもたらしているようで,これから予防接種を受けようかという五十路夫婦を脅かしている。10月にならないと予防接種費用の補助も受けられないから,一刻も早く受けたい&補助も欲しいのダブルパンチでケチ臭い煩悶に身を焦がす今日この頃である。

 とゆーことで,8月から9月終わりにかけては京都・三十三間堂・大阪・道頓堀・福岡・登別温泉・名古屋駅・オープンキャンパスと盛りだくさんの行事と出張・旅行を交えつつ,例によってAIにより,+3本の論文を投稿することになった。1本はAcceptされているので,査読待ちが2+1+1+1+1=6本あることになる。アホの仕儀である。

 加えて新しい教科書の企画書に使うとかでまえがきと目次案を作って先方に先ほど送付。これにて〆切仕事は全て終了・・・というタイミングでもう秋学期が始まるのである。幸い,静岡のド田舎非常勤仕事は終わったし,時間的余裕は確保できているから,この後は10月中に一本仕上げ(①11月発表と同時に投稿),acceptされた論文⓪の続編②も同時に完成させておきつつ,11月中にはさらに②の続編となる仕事③を完成させつつ②を投稿,③を仕上げながら12月の研究発表会でこの仕事の途中経過を発表し,③の完成度を上げて②がacceptされた暁にはこの結果を踏まえて一流どころに論文③を1~2月に投稿,1月までには3月の研究発表会のための仕事④をまとめておき,同時に④を査読のある国際学会に投稿・・・という予定でいる。つまりは①~④の4本を査読論文として年度内に投稿しようというのだから暴挙もいいところ。それもこれもAIのなせる業で,疲れたとか頭が働かないといった言い訳の効かない状況にあるのである。教科書の方もそーゆー状況を踏まえて「AIと共に学ぶ」内容を予定しており,もし企画が通っちゃったらこの執筆も加わる訳で,五十路過ぎたワシを殺す気か~Claude,ChatGPT!と叫びたい。

 とはいえ,これで定年以降も続くかと思われた懸案は全部片付いてしまったわけで,3月からは次年度以降の研究テーマをひねり出す過程に入らねばならん。査読論文は年齢と同じ数だけないといかんという向きもあるが,完全に個人仕事のワシにはしょせん無理・・・だったが,来年ぐらいには四十路の域に達し,定年までには五十路半ばになれる見込みが出てきた。頭と心身がついていけば,の話であるが,定年までのカウントダウンが始まっているワシとしては,このあたりを目標に頑張っていきたいモンである。

 HPCのテキスト,ある程度はできてきたが,どーも構成に難があり・・・やっぱり後半は深層学習一般で攻めた方がいいかなぁ,と悩みが出てきてこの9月いっぱいの完成は無理臭い。3月までの仕事かしらねぇ。

 まずは12月の大師匠墓参りまでにどこまで進展があるか,もうひと頑張りしていきまっしょう。ではまた。

岡野原大輔「ヒトとAI」岩波新書

岡野原大輔「ヒトとAI」岩波書店

[ Amazon ] ISBN 978-4-00-432122-4, \940+TAX

 2026年9月13日(日) 20時現在でAmazon Kindleストア282位(コンピュータ分野 1位),書籍104位(IT分野 2位),この時点で最も売れている岩波新書である。AIを構築するための中核的なプロセッサを含むSoCを開発しているPreferred Network社の創業者・社長であり,日本のAIを引っ張る大役を担っている第一人者が,AIの中身を人間の知性と対比しつつ,AIが世界を席巻し我々の日常生活を覆いつつある現在,何を人間が担い,何をAIに任せるのか,読みやすい短文を積み重ねた短い28章で語っている。Claudeがどうの,ChatGPTが賢くなっただの,Kimi3を含む中華AIのコストの安さは驚異的だの,そーゆー目先のことではなく,根本的な原理と人間が構築してきた社会制度を踏まえた怜悧な分析が冴える本書は,AIに右往左往している我々が今こそ読むべき新書と言える。

 まーしかし2025年から2026年にかけての,LLM(Large Language Model)に代表される生成AIの進化は恐ろしいものがある。昨年早々にはChatGPTとGeminiを有料課金する最低ラインのところで使っていたのだが,正直,卒研生並みの能力しかなかった。具体的に言うと,論文に記述してあるアルゴリズムを読み取ってプログラムに起こすことはまともにできなかったし,せいぜいワシが書いたコードを機械的に書き換える程度のことしかできず,しかも結構つまらんミスをして気が付きもしないレベル。それでもまぁ目も肩もくたびれてきて,ぼちぼち人生黄昏時で根気も集中力もなくなってきた年寄り仕事の補助ができればいいか,ぐらいに考えていた。
 それがどうであろう,Claude Codeを導入し,Vibeコーディングのための研究費をつぎ込んでMaxプランを本格的に導入したのが本年3月。コーポレートカードの支払いは新年度からだから4月支払い分は自腹を切ったのだが,ちょっとびっくりするほど役に立つ・・・どころか,ワシがかつて3か月格闘した挙句に移植を諦めたライブラリのCUDA化を,悪戦苦闘しながらも成し遂げてしまったではないか。あろうことかベンチマークテストまで自動的にPythonコードを書いてサクサク進め,「あれとこれに載っている論文のアルゴリズムを起こして比較して」という漠然としたプロンプトにも的確に対応し,翻訳調ではあるが完璧なTeXレポートを仕上げてきたではないか。ワシは興奮していそいそとまとめてarXivにぶん投げつつ,ちょっとレベルの高い国際会議にも投稿した。残念ながら国際会議は3名の査読者のうち1名から難癖としか思えないrejectを食らって落ちてしまったが,1名はプラマイゼロ,1名はWeak acceptという評価をもらった。つまりは「筋は悪くない」のである。
 その後は今まであきらめていた題材を次々にClaude Codeに投げ込みつつ,ChatGPTやGeminiも併用してあれとこれをarXivに投げ込み,あまつさえ,arXivの投稿制限を超えて入りきらなかったそれとそれとそれも書いてしまったのである。どれもこれもワシ単独では到底こんな短時間ではできず,Claude Codeのパワーのおかげで仕上がったものである。そのうち一本は情報処理学会論文誌採録が決定している。今も,2本ばかり準備が終わったネタがあり,これから3月に発表と投稿を控えるテーマについても下調べと基本ベンチマークは終わっており,おそらくはワシの研究者人生において最高の査読論文・査読国際会議採録数になること間違いないのである。せいぜい卒研生並みの能力しかなかったAIが,ClaudeでいえばOpus 4.8あたりでポスドクの博士ぐらいの能力を持つに至ったと言える。

 まさに生成AI様様なのであるが,いざ使ってみると,うまく活用するためには人間によるディレクションが不可欠であることも事実である。本書の第4章「AIは継続学習が苦手」でも述べられているが,一度やった仕事を完璧に忘れているのである。それどころか,レポートをまとめながら進めてきた仕事でも,最初に指示したことをすっかり忘れて間違い仕事を繰り返したり,小改良で済むところを一からやり直したりと,究極的な鳥頭なのである。これが人間相手なら「おまえなぁ,何回同じことを言わせるんじゃ」と愚痴の一つや二つや出てくるが,記憶力のないAIにそんなこと言っても仕方がない。こちらでも自衛のため,いったん区切る仕事は必ずTeXレポートを記述させ,次に開始するときにはそれを読み直せば記憶を呼び起こすことができるようにしておかねばならない。

 さらに厄介なのはAIには感情がないということである。つまりは仕事に対する動機付けがないのだ。人間ならば,出世したい,そのためには業績を上げたい,論文を書かねばならない,論文執筆のためには研究せねばならない,みたいな,つまりは行動の動機となるアカラサマな欲望が必ずあるものだが,それはAIには期待できない。欲望を駆動する感情があってこその人間であり,「何を記憶し,何を忘れ,どのように行動するかを強く規定」(第12章「感情」, P.86)するのも感情がなせる業なのだが,そこがAIには決定的に欠けている。逆に言えば,全知全能の神みたいなAGI(Artificial General Intelligence, 汎用人工知能)に到達するための一里塚として,何らかの感情的な駆動装置を発明する必要があると言える。最近の研究ではどうもその萌芽のようなものがあるとの報告も上がっており,これはこれでちょっと怖い状況であるが,にしてもワシも含むAIの能力に魅了された人間がこの便利なツールを手放すわけもなく,世界中の電気を食いつくすまではAI能力向上競争が止まることはないのであろう。

 著者は既に科学を支える基盤としてのAIについての考察をまとめてしまっているらしく,東京化学同人から「AI計算科学:表現・推論・探索による計算科学の再編」が11月に出るらしい。全く東大・松尾研出身者の馬力の高さは恐ろしいほどである。ワシ自身がAIに駆動されながら論文作成に邁進しているぐらいだから,もう学術界の,特にコンピューティングに依存するところは「AI計算科学」に染まりつつあるのだ。本書はその土台となる基盤技術,人間社会のありようとAIとの協調をどこに求めるのか,AIの導出した結果の責任の取り方を考える基礎教養書になること間違いないのである。

8/15(土) 駿府・雨後曇

 蒸し暑くて気が狂いそうになるほどであるが,天候は不順で,どんよりした日が続く。カンカン照りの方がまだ米の作付けにとっては良かろうが,それもナシとなると,今後の米価が気になってくる。何にせよ,早く夏が終わって欲しいモンである。

 とゆーことで,前職場の最後の講義終了。15週講義の上に定期試験がある分,なかなか学生にとってはハードだが,結構カジュアルに欠席したりしてうまくやり過ごしている感。相応の成績は付けたのでこれで一段落。毎月のオープンキャンパスの準備で大変そうであった。

 後期からは一日空くので大分らくちん。その分ガンガン仕事せんといかんわな。

 毎週楽しみしていた「山田五郎・大人の教養講座」,ご本人逝去(キリスト教徒だったので「帰天」と言うらしい)されてしまい,誠に残念である。時折販売されるグッズが好きで,犬印鞄は講義用の物入れとして重宝しているし,このみうらじゅんのマイ走馬灯Tシャツは永久保存ものである。2回ほど袖を通したので,額縁に入れて飾る予定。古希手前というのはちょっと早いよなと思う昨今であるが,五十路代でもガンガンがん患者が出ていることを考えれば,まぁそういうこともあるよなと。そうなると68歳定年の現職場,ありがたくはあるが,さてめいっぱい務めるのが良いかどうか,難しい所である。ま,退職時期は63歳の時点で決めればいいようなので,その時の精神・経済・経営・健康・神の御心状態を加味して考えることにしよう。

 毎年恒例,SWoPP2026の講演,今回は飛騨高山での山ン中の立派な会場での開催。名古屋からは高速バスでもJR特急でもあまり時間が変わらないという山中の悪路をひたすらに走るのみである。

 道中は絶景ではあるんだけどね。しかしまぁ,規模がデカくなった分,地元コンベンションビューローからの補助も取れるようになったようで,シャトルバスはあるは,飲み物サービスは充実しているわで,至れり尽くせりでした。しかし運営委員は大変そうであるなぁ。

 自宅に戻ってみれば,自著の増刷のお知らせが届いていた。まいだりー。

 ま,部数はコミケ大手サークル程度ではありますがね。何にせよ有難し。

 論文は3本投稿できたし(これとこれとこれ),これから4本目を描きつつ,卒研用HPCテキストを書き始めるのであるが,AIのおかげで下書きや例題の執筆は楽になった。その分,無駄に分厚くなりそうなので,コンパクトに納めるのが大変そうである。

 あ,そうそう,こっちの方もよろしくです。発売一週前にはサンプルコードを更新するように致しまする。

 つーことで,ぼちぼちやりまする。

7/4(土) 駿府・曇

 沖縄・奄美は明けたが,九州から東北までは梅雨真っ盛りである。台風が立て続けに発生して近畿から関東を脅かしたり,非常勤先で「危ないから」と受講生が自主欠席したりと,なかなか慌ただしいが,気温は平年並みでごく涼しい。それも今週で終わりで,次週からは梅雨末期の大雨の後に猛暑がやってくるようである。体が追い付かないうちに熱気にやられて熱中症にならないよう,無理せずこの夏を乗り切りたいモンである。

 とゆーことで,生成AIである。まー,昨年はまだ高校生ぐらいか,と,せいぜいSIMD intrinsicsのAVX2→Neon移植ぐらいの仕事ができりゃいいかと割り切っていたが,そのあとにMythos騒ぎがあり,Fatal 5が出てきたりして,もう,博識で生意気で怠惰で命令したことしかやらない博士課程の学生のようである。おかげでしばらく放置していたCUDAプログラミングバリバリのネタを投稿できたし(通るかどうかはともかく),心残りの題材をガシガシFatal 5にやらせて一本論文の下書きまで辿り着いた(これも通るかどうかはともかく)。Token食いであっというまにClaudeのMaxプランの上限にぶち当たること多数であるが,こっちの頭と体力とやる気の問題で着手できなかった物事をガシガシやってくれるのは痛快を通り越して怖いぐらいである。一番のボトルネックはワシという人間にあり,理解力が追い付かないので咀嚼するまでのデッドロックが長く,そこさえなければあっという間に論文投稿→次の仕事というステップが進むはずである。そのうちワシら人類が生成AIに退治されるのではないか。

 何はともあれ,6月中の3本の〆切仕事を6/29(火)にすませて気が抜けたのである。生成AIがなければここまで進まなかったが,どつかれるように成果を出すもんだから,文章にまとめるこちらの筆が追い付かないほどである。とまれ,先方に仕事を投げ,伸びちゃったけど当初の締め切りまでに論文投稿し,8月のSWoPPの予稿をsubmitできたのだから良しとする。

 ということで締め切りに追われる6月であったが戦果もあったのである。例えば

とか,

とか,

などなど。詳細は省くが,それなりに出かけることができているのであった。あと,珍しく来客もお二人ほど。お一人は時間が合わずにすれ違いであったが,ま,メールは届いているので良しとする。

 つーことで,今後の出張は8月のSWoPP@飛騨高山,9月のJSIAM@博多,12月の環瀬戸内@松山,3月のHPC@北大の予定。今のところ,であって,合間にもう一つ二つあるかもしれんが,それはそれで。今となってはあんましウロウロするよりは,Claude or ChatGPTにあれこれ個人的趣味の研究の相談しながらあーだこーだしている方が有意義かなと。8月以降は旧職場の非常勤もなくなるし,もうちょっとディープな関西を堪能したいモンである。

 さて,前期講義の残り2回をしっかりやってオープンキャンパスに備えようかしらん。