ふわ~,中途半端な時間に寝てしまったので,こんな時間に目が覚めてしまった。徹夜なんぞやるもんじゃありません。もうしない,ぶー。
あんまりにもVistaのIMEがバカになってしまったので,古いATOK15なんぞを引っ張り出してインスコしたのだが,32bitアプリでしか有効になってくれない。ひえー,秀丸は64bitバージョンなんだよー。今更32bit版に謎戻したくないんだがなぁ。新しいATOKを買って入れるしかないって訳? それもなー,貧窮シフト体制に戻さないといけない状況では避けたい。どーしよーかなー。
いい機会なので,書き逃していたことつらつらとメモっておく。そもそもこのblog,自分用のメモなんだからな。原点回帰は重要である。
SIAM newsの最新号を眺めていたら,GottliebとYoungの訃報記事が載ってた。両人とも昨年12月に亡くなっていたとのこと。Gottliebなんて先日まで知らなかったんだが,タマタマ文献渉猟していたらこの人の論文がまーたくさん見つかること見つかること。時間発展PDEの高次公式に関してはオーソリティだったらしい。ふーん(もう不明を恥じるという羞恥心は失っている。中年だしね)。
ワシにとってはYoungの方が,SOR法の定理なんぞでなじみ深いんだがな。そーいや定常反復法って手がける人,減ったよねぇ。大体,Krylov部分空間法から出発した非定常反復法の研究が進み過ぎちゃって,大規模計算でもこっちの方が高速化しやすいって環境ができちゃったからね。・・・ってワシみたいな門外漢がうっかり書いたら怒られそう。誰かちゃんとした概説書いて下さいな。
このレンタル仮想サーバを置いているのはWebArena SuitePro V2なんだが,来週月曜日から,CentOS 5にも対応するとのこと。現状ではV1がFedora(相当古い奴),V2がCentOS 4。まあ4でも5でも,きちんとセキュリティパッチを出してくれているから,ワシみたいなコバンザメユーザにとってはどっちゃでもいいんだが,本格的にDBMSを使い出したらどーしよーかなーと悩むかも。いや,昔みたいにtar ballからコンパイルしてディレクトリを決めてインストール・・・などとやれないことはないけど,そんな根気はもうない。大体こんだけウィルスがうようよしている状態で,素人仕込みの付け焼刃的対処では危険でしょーがない。さっさと新しい奴に乗り換えていくのが吉,なんだろうけど,めんどくさいんだよね。12月に重い腰上げてよーやっとV1からV2に移行したばっかだしさぁ。半年ほどしてそのうち現実逃避したくなったら(ワシは逃避行動に基づいてしか動かない人間なのである)やるかもねー。
ニトリが値下げで売上伸ばしたとかコンビニ弁当300円台突入とか(朝日新聞),またデフレかよ,という日本経済。まー,若い奴に投資しなくなって年寄りを介護するだけで財政が借金漬けになっちゃってる状況ではしょーがねーよなー,と。ワシも早々に貧窮シフト体制に戻ることにしようっと。
ん~,他にも色々ネタはあったんだけど,spam消したらメモってた自分メールも消えちゃったのでこの辺で。そろそろ寝ます。あー平和な土曜日っていいなー。
起きました。もう桜がボチボチ咲き始めてるってのに寒いなー。いつものように,飯を食いつつ洗濯しつつ,風呂掃除して掃除機かけて便所掃除してスーパーに買い物に行ってポイント5倍ゲットしてクリーニング屋に行って散髪予約して自治会役員引き継ぎして土曜日の予定はすべて終了。はい問題です。この中で「いつものように」ではない行動はどれでしょう?
広島電鉄,全契約社員の正社員化の真相(J-CAST)。城繁幸さんが若者が3年で会社を辞めちゃう理由として,ベテラン社員の高コスト化(ヤな言葉だけどさ)が原因と言っていたが,まさにそれを地でいくような状況だったわけだ。まあ広電に限らず日本全国どこの組織も団塊世代が一番コスト高になっているわけで,成長が見込めない状況ではそのしわ寄せをすべて若い奴が受ける羽目になる,と。従って,ベテランのコストを若いモンに回せば正社員化も可能ってことになる。とはいえ,簡単なことじゃないよな。ワーキングプア問題や派遣切りが騒がれるようになって,その尻馬に乗って給料を減らされたくない正社員層がタッグを組む(ふりをする)・・・と。ああややこしいやや子でございます。
さて,溜まりに溜まった精うぉっほぉおん本を放出すべく,次週はぷちめれ祭りといきますか。まずは若者が実社会に打って出る時の痛みを描いたマンガ3作から~。
3/27(金) 掛川・曇後雨後晴
うっばぁ~・・・まーたやっちまったよ,完徹。といっても9:30に歯医者に行かねばならんかったんで,午前6時過ぎには切り上げて家に戻って3時間ほど寝ましたがね。あ~・・・とにかく疲れた。もーイヤ,論文書き。今月に入って3本目だぜ。しかも査読論文だぜ。ワシがガチャガチャ計算した結果をバリバリ貼り付けただけの(いや,計算そのものがイイって内容だからそれでいいんだけど)論文をこれから皆さん(つーてもせいぜい二人か三人)で読むんですぜ。今月末が投稿締切だから,もうちっと余裕があるんだけど,先月末に思いついて今月上旬に閃いて追加計算して2回しゃべった中身をもう原稿に起こすなんて~,人生2度目だな。一度目は三日で上げた論文を投稿して載せちゃった27歳の冬ぅ~。あーもーあれから12年が過ぎまして,相変わらず能ナシの生活を食っておりますよええ。もーイヤ,さっさと投稿して査読されてrejectくらって首括って死んでしまいたいっ! ・・・あいや,こちとらまじめに書きましたぜ。何せここ一週間ほどずぅうううううう(1KB削除)うううっとうまく筆が(キーボードだがな)進まなかったのにケリをつけて,全面的に構成からやり直したんだから,まー一晩で済んでラッキーってやつですかね。ああこんなこと書いたら載りそなものも載んなくなっちゃうじゃないのよーん・・・って,いったいどーなるんでしょーかーねーだ。わーははははは。いーんだよ書いちまったもんは,もーどーにでもなれーだ。・・・酔ってるな,ワシ。三浦しをんの影響か?
寝ぼけてボシャボシャした頭でサーモンサンドを食いつつ,カーネルおじさんの後ろドタマを眺めていたら,道頓堀川に放り込んだ奴に共感しそうになった。いかんいかん。
あー,現実逃避がてらスケジュールを整理してたら頭痛くなってきた・・・なんでこんなに予定を入れるんだ>ワシ 息つく暇がないじゃんよー。惰弱で自堕落な人間にはこんなモンでも大変なんです,ええ。
あ,風呂湧いた。花王のバブを放り込んだ湯船に浸かって人心地ついたら寝ます。・・・あああ,背中がバリっ…バリだ。いてて・・・。これが三十路最後の肉体でござんす。来週には四十歳! もう日本の老廃物でございますよ,ええ。
若松孝二・制作・監督「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」DVD
[ Amazon ] \4935(初回特別版), \3665(通常版)
若松孝二という人の映画を,このDVDを見る前に触れたことはない。Wikipediaとか公式サイトのフィルモグラフィーをつらつら眺めていたら,何本かタイトルのみ知っているものがあった程度で,本作を除いて積極的に見てやろうという気になるものは,今のところ皆無である。ロマンポルノ時代の作品が多いようだがかなり芸術性が高そうで,ワシみたいに,男の幻想丸出しのぬるいAVが好みの奴にはちと「実用」になりそうもない。連合赤軍事件を,犯人側から描いた本作がなければ,ワシにとっては一生縁のない映画監督だったろう。本作だって,監督本人がかなり赤軍派の思想に入れ込んでいたと知ってからは,「きっと青臭くて赤軍のプロパガンダみたいなもんなんだろう」という先入観を持ってしまったので,現実逃避がてらに鑑賞するときも「左翼の洗脳には負けないぞ!」と気合いを入れてから再生ボタンを押したものである。
しかし,それは完全な杞憂であった。クソ真面目な左翼青年達から成る連合赤軍が警察によって追いつめられ,幹部が逮捕された後,残党があさま山荘に逃げ込み,絶望的な立て籠りの末に逮捕されるまでの,あまりに痛々しい青年たちの有り様をユーモア抜きにストレートに描いており,右翼・左翼のプロパガンダ映像としては全く使い物にならない。しかもエンターテインメントとしても優れており,ワシは坂井真紀演じる遠山美枝子の死に様や,最年少のメンバー・加藤元久を演じるタモト清嵐の叫びに内蔵を鷲づかみにされてしまったのだ。
現実の連合赤軍事件は全く青臭さの極みのようなものだったが,それを若松孝二のキャリアと「反省」の念をフィルターにして濾過した本作は,上質な映画に仕上がっていた。ワシは自分の先入観の不確かさを恥じると共に,「日本のいちばん長い日」が描いたものと同じ,思想の純粋さが招く非合理的行動をどうやったら防げるのか,考え込んでしまったのである。
ちょっと気になったのは,「死へのイデオロギー」において,永山洋子を裁いた裁判長の指摘する「嫉妬心」の存在を,若松自身は本作において否定していないところである。これについてはこの文庫本に解説を書いている鶴見俊輔は徹底的に批判しているのだが,ワシは疑問を持っていた。押井守の言を借りるまでもなく,革命だの愛国心だのという「正義」を振りかざしてものを言う人間がトンでもない行動に出ることは歴史が証明している。しかし純粋な精神的理由だけでそうした行動がとられたのかどうかは,かなり怪しいのではないかとワシは疑っている。どっちかってぇと,正義の名のついでに指導者自身の欲求を満足させる行為をやらかしていることが多いのではないか・・・と,純粋な精神を持たない一般ピーポーなワシは考えてしまうのである。
故に,この映画における永山洋子の描き方は,ワシにとっては腑に落ちるものであった。もちろん,エンターテナー映画を多数撮ってきた若松は,あえて一般ピーポーに分かりやすい解釈を取っただけとも言えるが,若松の心情を左翼的に養護するのは徒労であろう。
本作は,方向性の定まらない現代の行く末ににとまどう我々一般ピーポーの胃の腑に落ちる映画である・・・確かなことはそれだけであり,それで本作の存在意義は十分満たされていると言えるのである。
3/20(祝・金) 両国->佐倉->両国・曇時々雨
ふわ~,久々に東京でゆったりとした休日を迎えることができた。本日は東京をブラブラする予定。昨日,大師匠とくっちゃべっていたら岡本太郎の壁画の話が出たので,それを一瞥すべく渋谷へ行き,明治神宮か神田明神を参拝してから神保町を流すかなぁ,という感じ。佐倉へは研究打ち合わせという名目の飲み会である。
昨日は午前中,構造保存法(でいいの?)のワークショップに参加。こじんまりした集まりだったし,三日間のうちワシは最終日のみ参加したのでよーわからんけど,結構活発な議論が交わされていた。平均年齢が高いっつーとこが,IT系とは違うところである。ま,IT系も年寄りが増えたけどね。
午後からは大師匠のとこで世間話。ついでにWindows95マシンでUSBメモリを使えるように作業しようとしたのだが,初代95だったのでせっかく探し出したドライバも認識してくれなかった。む~,USBポートはあるし,メモリを挿したらちゃんと「不明なデバイス」としては表示されるっつーのに。無理やりドライブとして設定してもダメ。む~・・・ちょっと悔しい。
あ,そうそう,ダイヤ改正があったので,早速N700系こだまに乗ってきました。
おお! ホントにこだまの癖にN700系ですよ!
電源も常備しているのですよ!仕事進まんかったけど←ダメじゃん
ではブラブラしてきま~す。
三井斌友・小藤俊幸「常微分方程式の解法」共立出版
[ Amazon ] ISBN 4-320-01608-4, \2600(現在は\2835)
久々にこーゆーまともな常微分方程式の教科書を通読した。卒研テーマのネタとして本書がちょうど良さそうだったので,解説用にと一気にまとめのメモを作ったのだが,さーて,ワシが学部生だったときの本書があれば良かった・・・のかどうか,ふと考え込んでしまった。そのあたりのことも思い出しながら,つらつらと長めのぷちめれを書いてみることにする。
本書は未だに完結の目処が立たない工系数学講座シリーズの一冊として,当初の締め切り予定を大幅に超過した上に著者が一人増殖して出版されたものである。なぜそんなに締め切りにこだわるかというと,ワシはこのシリーズを能登半島に左遷中,行きつけの本屋に予約を入れていたのである。1990年代後半に結構華々しくシリーズ刊行をぶちあげ,編集委員はさることながら,その著者のラインナップを見てワシは薄給を叩いてでも全部揃えてみせると意気込んで予約を入れたものである。・・・でまぁ,学術書にはよくあることだが,最初の何冊かは順調に出たものの,あれから十年以上経つというのに未だ出版されていないものがあったりするのである。そりゃあねぇ,いくら執筆者が学界の重鎮揃いとはいえ,身銭切っている読者としてはイヤミの一つも言う権利があろうというものである。いい機会だがら一度言っておくが,ワシは一冊残らず刊行されるまで,執念深く待つ。だからもっと著者をせっつけよっ!>共立出版
まあしかし遅れるのも無理はないのである。何せ指名された方々は皆,過労死しそうなほど忙しい人ばかりである上に,完璧主義者が多いんじゃないかと想像する。いい加減な内容を書くとすぐさま編集委員のH先生のつっこみが入ってしまう(妄想です)ことを恐れてのことではなく,せっかく書くなら新機軸も少し入れてわかりやすい解説を付けて・・・などとやっていると,完成が長引いてしまうのであろう。その証拠に刊行されたものは,時間をかけただけのことはあるよな,と思えるものが多い。本書みたいに,ずぅううっとワシの座右においてあるものもある(「工学における特殊関数」とか)。もっとも偏微分方程式関係のあの本は肩すかしにあったとかってものもないではないが,この辺は好みが分かれるところであるから,著者の両K先生におかれましては決して気分を害されることがないようにお願いしたいものである。
さて本書である。一昔前までは,教養系の微分方程式の教科書と言えばヤノケン(矢野健太郎)のアレであろうが,記号処理的計算に満ちていて,コンピュータシミュレーション全盛の今日向きではない。大体,原始関数が代数的有限表現で完結するってのは限られるのだから,その手の計算は程々にして,とっとと「力学系」つまり,常微分方程式全体が形作る「場」,局所的な振る舞いと大域的な振る舞いを知る理論を勉強した方が得策である。何せ計算ならコンピュータがやっちまうんだし,それほど複雑ではない方程式なら3次元までのベクトル場ぐらい,フリーなソフトウェア(Scilabとか)ですぐに描けてしまう。数式からだけでは難しい幾何学的イメージ作りがコンピュータの手助けでできるのだから,今は本当に力学系の勉強にはいい時代になったものである。本書はポントリャーギン以来(でいいのか?)の伝統である,線型常微分方程式の解析解を導出する手順を丁寧に解説し(第2章~第4章),それを元に一般の常微分方程式の安定性の解説を行う(第5章)。著者らの専門性が生かされるのは第6章以下で,数値解法としてはポピュラーな一段法であるRunge-Kutta法の解説と,数値解法の安定性(A安定性という奴)の解説が初学者向けになされている。もっともこの辺をきっちり勉強したければ,同じ著者らによる「微分方程式による計算科学入門」の第1章(陰的解法については第2章も)だけ読んだ方がいいかも。百科事典みたいな訳本もあるけど,ちょっと厚すぎるし,肝心なところは前書にコンパクトにまとまっているから,とっかかりとしてはこれで十分だと思う。
今ワシの手元には本書の他に2冊の力学系の教科書,スメール・ハーシュ「力学系入門」(岩波書店)と大橋常道「微分方程式・差分方程式入門」(コロナ社)があるので,これらと比較しながら本書の特徴をもう少し詳細に述べてみたい。
常微分方程式とはどんな現象を記述するものでどんな種類があるのかといった概論を語っている第1章と数値解法の解説にあたる第6章以降を除き,無駄な解説が一切ないなぁ,というのが第2章~第5章まで流して読んだ感想である。しかも説明が簡潔でHartman・Grobmanの定理等の大物を除き,証明が一切省略されていない上に,必ず手計算できる例題が付いている。他の2冊にもこれらの特徴が当てはまるが,本書はそれが完璧すぎるきらいがある。隙がないので手を抜けない,抜いた途端に次の例題で躓く(前の例題を解いていないとその結果が使えない)のである。
これはワシみたいな怠け者学生(だった奴)にはつらい。まあ元々数学ってのはサポったら置いてきぼりを食らう非情な学問なのであるけど,普通の教科書はもう少し「この辺は勘弁しておいてやらぁ」という手抜きポイント(著者が説明をめんどくさがっているだけか?)があったりするんだが,本書には一切ない。少なくとも2章から4章までには見あたらなかった。反面,それなりに知識が身に付いて(いた)人間が読むとまことに分かりやすい,スムーズに知識の整理が付く感じで,線型常微分方程式の解析解を得る2種類の手続きをまとめるメモはすんなり出来上がった。従って,手計算部分の習得に足を取られそうなバカ初学者には根性が必要で,きっちり2章から5章まではまとめノートをとりつつ計算しながら順序通りに進むしかない。「まえがき」に記してある各章の関係図を真に受けて3章をとばして読み進んだりすると後で少し困ったりしそうである。ま,著者も「詰め込み」であることは承知の上で書いているから,そーゆー本だと諦めてつき合うのが吉でありましょう。それ故に,読み通したときには結構な高みに登っているということは保証付きである。
そう断言できる理由は,本書の例題の解説がねっちり書いてあるためでもある。手計算で無理なく進められるよう2ないし3次の例題でとどめてあり,計算過程もしっかりこれでもかというぐらい丁寧に書いてある。他の2冊に比べて一番特徴的なのはこの点で,純粋な数学屋さんなら計算そのものは手を抜くものである。現に,これだけ執拗に行列の固有値と固有ベクトルを求めさせている「常微分方程式の」教科書は他にないんではないか。それ故に,それなりの計算力があれば躓くことは少ないと思われる。
・・・という貶しどころのない本書なのであるが,ワシにとっては理想的な本とは呼べないところが幾つかはあるのだ。以降はワシの好みとはこの辺がズレている,というポイントを列挙してみたい。
一つ目は,先に書いた「例題の解説がねっちり書いてある」点である。講義の演習を思えば当然の措置ではあるが,これをやりすぎると妙な誤解を初学者に与えてしまう可能性がある。ワシが受けてきた線型代数の講義では,固有値と固有ベクトルの計算は3次以上の例題で,それも程々に打ち切って,さっさと固有空間の話に切り替えていた。固有値の計算は,手計算レベルだと固有多項式の係数を陽的に導出して(本書ではLeverrier-Faddeev法を紹介している)代数的に求めるが,これは一般には標準的な解法とは呼べない。5次以上の行列の時にも使える「一般理論」に繋げるにはこの「ねっちり」さが仇とならないのかなぁ・・・という不安がある。現に,行列式は3次までしか計算できない輩が結構な率でいたりするし。・・・ということで,著者にとっては言いがかりに近い文句ではあろうけど,も少し一般理論に触れさせ得る,手計算は無理だけどこういう大次元でも形式的な行列(Frankとか)では固有値と固有ベクトルがこんな形で与えられていて,この場合の一般解はこうなる・・・というようなものがほしかったなー,と思っているのである。
二つ目は,線型数値計算に対しての解説が少ない(ほぼ皆無)こと。「そこまで書いていられるかいっ!」と言われそうだし,無理もないんだけど,著者が数値解析の専門家であることを思うと,うーん・・・少なくとも前述したように固有多項式をモロに作ることを標準として扱うのは勘弁してほしいよなぁと思うのである。モロに出すにしても,計算量の点ではDanilevski法の方が少ないし,もう少し吟味して出してほしかったなぁ(計算手順はLeverrier法の方が分かりやすいけどね)・・・ってやっぱ贅沢ですかね?
三つ目だが,これは著者には責任のない話である。本書は現在でも版を重ねている良書であるにも関わらず,印刷品質が劣化しているのである。どの刷からかは不明だが,ワシが昨年(2008年)入手したものは印刷会社が変わっており,明らかに版の質が悪くなっていた。文章が読み取れなくなるというほどひどいものではないけれど,図版のスクリーントーンの模様は潰れて汚くなっていたし,初刷をコピー機で読み取ったような代物だった。まあ出版不況と言われて久しい時代状況ではあるし,ましてや読者が限られる理工系のテキストだから,出版社がコスト削減に走る理由も分からないではない。しかし,間欠的とはいえ増刷するような商品を,一目で分かるレベルにまで劣化させるのは営業的に得策とは思えない。多少質を落としたところで売り上げと関係がないと高をくくっているのであれば,出版元&印刷会社に猛省を促したい。
ということで,線型常微分方程式ばかりか,数値解法の安定性解析にまで踏み込んだ,ネッチリ解説の本書は,印刷の質を除けば,きっちり勉強したい&シミュレーションもしたい向きには大いにお奨めしたいのである(ホントだよ)。
なお,先に挙げた内容に関する2点の「言いがかり」についてはワシ自身も気にかかっていて,それを自分なりに解決すべく,次年度の卒研テーマを設定したという経緯がある。そのために卒研生用にもう一冊本書を買って三つ目の文句が追加されてしまったのはともかくとして,ワシに新たな(でもないか)研究テーマを提供してくれたという点についてはここで感謝の意を表しておきたいのである。