岡田斗司夫「「世界征服」は可能か?」ちくまプリマー新書

[ BK1 | Amazon ] ISBN 978-4-480-68762-3, \760

「世界征服」は可能か?
岡田 斗司夫著
筑摩書房 (2007.6)
通常24時間以内に発送します。

 仕事の一環で,サーチエンジンを作っている。いわゆるランキング機能つきのものなので,極小サイズのGoogleもどきみたいなもんである。
 作っているとは言っても,主要部分は全て外注,つまりワシの研究室のOBに作ってもらったもので,ワシ自身は「こんなの作ってくれない?」という言いだしっぺ役と,ランキング機能を付加したに過ぎない。まあたくさんの共著者を連ねた論文に「名前だけ」載る偉い先生よりは働いたと思うのだが,昔に比べて馬力も時間もなくなってしまったワシとしては,自分一人でこれを作り上げられなかったことを素直に反省する次第である。力不足でごめんなさい。
 それはともかく,このランキング機能と言う奴,作るのがとーーーっても楽しかったのである。内容は馬場さんの解説ページにある奴を素直に実装しただけだが(疎行列向けの最適化はがりがりと行ったが),それに基づいて10段階にランク付け,つまりURIに「成績」をつけるのだが,これがすーーーっごく楽しいのである。もちろんプログラムを作るのも楽しかったのだが,それ以上に,このワシが,普段は静岡西部で孤独にシコシコと○○な○○を相手にロクでもない日々送っているこのワシ自身が他人のWebページに「成績」をつける,というこの超生意気な作業がワシの脳内に巣食う邪悪な欲望に火をつけてしまったようなのだ。

わーははははははは,貴様らはワシの成績の前にひれ伏すのだ!

と,どっかの安っぽいTVアニメか特撮映画の悪役のような気分になってしまったのである。
 どーも,ワシも含めたオタクという人種の多くに「世界を自分の前にひれ伏させたい」,言い換えると,「自分が一番偉い,偉くなりたい」,という欲望が隠されているのではないか。このゆがんだ自尊心を抱えているために,自分の世界を作って引き籠ってしまうという行動に出るのではないか。本書を読み進むにつれて,ふーんなるほどなぁと感心すると共に,「世界征服」ってのはオタク人種自身に巣食うこの欲望の反映なんだな,とつくづく思い知らされたのである。
 岡田斗司夫の分析力と話術はさすがだなぁと常々思っているのだが,本となるとイマイチ感心できないものもある。フロンやプチクリもちらりと書店店頭で眺めて,こりゃ合わないなと感じて購入しなかった。しかし,本書はちょうどワシがWeb世界の征服者気分を味わっていた時に出たものであったので,唐沢俊一の新刊と共に迷わずgetしたのである。
 そしてその読みは正しかった。本書はワシの高揚した「世界征服」気分をちゃんと代弁してくれる内容であり,エンターテインメント世界に登場する多数の征服者や現実のモンゴル,ローマ帝国,USA等を例示して分析し,「世界征服」の目的,手法,意義を明快に述べている。その内容については高々200ページ程度の本書を読了してくれれば,すぐにご理解いただける筈である。
 「街場の中国論」において,内田樹は日本は中国に対してもUSAに対しても小国,つまり属国的な対応しか取れない国であることを主張している。してみれば,この「世界征服」という奴,特に日本のエンターテインメント作品に登場してそれを目指す輩は,ワシ同様,卑小な自我を支える欲望の象徴なのかもしれない。

6/15(金) 掛川・晴時々曇

 昨日,関東甲信越地方以南が梅雨入りしたと気象庁が宣言。ふー,やっと宣言してくれたか,やれやれ,という感じ。どーもワシは典型的な付和雷同日本人であるらしく,お上があれこれ指示してくれないと安心できないようなのだ。ま,これで安眠できそうで何よりです・・・不思議。
 唐沢俊一さんの新刊について,盗作疑惑が持ち上がっている・・・らしいが,本人は素直に認めているし,まあこの一件だけなら単なる引用ミスということなんだろうと思っていたが,他にもあるという指摘が出てきた。まあこの二つだけなら引用ミスということなんだろうと思っていたが,三つ目もあるという指摘が・・・出ないことを祈る。
 ついでに。阪大医学部の某(記事には名前も出ていますが,一応ね)教授の論文を取り下げろと教授会が要請とのこと。信用ならない内容である,ということらしい。
 以前,NHKで東大で起こった論文ねつ造問題の当事者達のやりとりを流していたが,淡々としたやりとりでありながら異常な緊迫感が出ていて,見ていて冷や汗たらたらモンでしたな。
 どうも唐沢さんの件も含めて,これらの事件ってのは,自分の地位保全,社会的ステータスを維持しようとするあまり,一時的な悪評を引き受けることを恐れすぎて,合理的な判断ができずに誤った方向に走ってしまったという共通項があるように思える。大体,ちゃんとした本と書くとか,レベルの高い雑誌向けに査読論文を書くとかという仕事が,そうそう短期間で乱造できれば苦労しない訳で,それができる一握りの人を一流と呼ぶのだ。大多数の二流レベルの人間にはそれをするだけの体力も知力も,どこかしら欠けているから,それなりのまとまった仕事をしようとすれば,どうしたって準備期間がいる。その期間は,「あいつは怠けている」「給料を下げてしまえ」「昔は良い仕事していたのに,今はおとなしくなったねぇ」などと言われる。ことに,生意気な態度で世の中を渡ってきた人間はことにそう言われてしまうので(例・ワシ),それはまさしく「自己責任」として引き受けるしかないものなのである。そこを無理して不正に走ると,まあタチドコロに転落する人生が待っている,と,こうなる訳だ。・・・これは自戒を込めて言っている。ま,ワシもそうなるとも限らないので,まあ転落したら笑って下さいませ。
 唐沢さんのケースはそんなに無茶しなくても良かったのでは,と思うし(忙しすぎた?),阪大や東大のケースも,たぶん研究業績へのプレッシャーがかなりあったのかなぁ(もちろん責任者の資質も大きいのだろうが)と思うが,そうはいっても多少サボったところですぐにクビになるような立場ではないだろうから(転籍は求められるかもしらんが),多少の悪評があったところで恬淡とやり過ごすことはできたはずである。なんで不正してまで論文稼ぎをする必要があったのかなぁ,とそーゆーエリートな仕事場を知らない三流研究者のワシとしては不思議で仕方がない。ワシが知る限り,不正してまで論文を稼げ,などという標語を掲げている大学・研究所は,少なくとも日本の公的な所ではないはずだ(あったらお知らせ下さいませ)。
 うろ覚えだが,確か慶応の富田先生の所だったと思うのだが(違ったらすいません),研究分野を変更した初期の頃,ある研究会のポスターセッションで,別の研究者からボロカスに研究内容を批判され,説明役の院生さんが泣いてしまったという。
 これは辛い。そういう研究の指導を行った教師としては立つ瀬がない。院生は教師の指導通りに一生懸命プログラムを作りきれいなポスターを作り,おそらくは事前に説明の練習もして臨んだはずだ(そうでなければ泣くほど悔しい思いをするもんか)。プレゼンテーションではなく,内容に関しての批判は,院生より教師が責任を負わなくてはならず,まー富田先生とすれば胃が痛いどころではなかったと思う。
 しかしそれで撤退することなく現在の業績を作ってきたのだから,やはりこれは批判を受けることに対して逃げてはいけない,ということに他ならない。受けた時には腹も立つし言った奴をぶっ殺してやろうかとも思うが,しかしそこに自分の過失が全くないということは案外少ないのではないか。一瞬ムカツイタとしても,時間をおいて冷静になった後は真面目に反省する態度,これは世間に対してお役に立とうという立場の人間にとっては絶対に必要なものなのだ。・・・ま,それがワシにできているかと言われれば,内心忸怩たるものがありますが,そーゆー態度を身につけるべく精進中です,ということにさせて頂きたい(あっ,逃げた)。
 でまあよく言われることですが,こーゆー事件を見るたびに,自分は大丈夫か?と振り返る姿勢は大事ですな。いやホント。ネットだから何でも書けるけど,安全な批判者の立場に「逃げ込んで」,やいのやいのと多勢に回るのは,たまーにやりたくなるけど(実際やっているけど),なるべく控えるべきですなぁ。そう思う今日この頃であります。

6/13(水) 掛川・晴時々曇

 今週末から来週にかけて,いよいよ入梅らしい。気分的にはもう梅雨を迎えているのだが,時期を明示しがたい現象を宣言せよといわれる方は大変だ。
 外付けMobile HDD(120GB)を購入したので早速VMware PlayerにCentOS5をインストールするも,トランザクションエラーが出てダメ。同じ症状はみな悩まされていて,結局,インストール可能な組み合わせを次々に試みるしかないようだ。
 うちの環境ではServerだけがインストールできた。Desktopは全部ダメ。とりあえずインストールはできたものの,Text consoleのみ。Xの設定をしなきゃダメ。あーめんどくさ。
 とゆーことで,どーせデモ用なので,Fedora 7をダウンロードして試そうと考え中。あと1時間ぐらいでDVD imageは落とせそうである。
 では行ってきます。
 ただいま。
 どーもVMware Playerは信用ならない,つーか,適当にググってQemu-imgで作った仮想ディスクが悪いのか,vmxファイルがいい加減なのか,ともかく現在の環境ではどーもうまくVMが作れていないようなので,VMware ServerをインストールしてCentOSの環境を作ってみると・・・あら,あっさりO.K. Desktop-GNOMEもすんなり構築できた。最初からこれでやってりゃ無駄な時間を費やさずに済んだのにぃ~。
 インストールしながらNHKを見ていたら,すっかり様子のいいオジサンになった佐野元春が出ていた。いいなあ,50過ぎたらああなりたいものだ。
 どっしようかなぁ,Leopardを待った方が良いのかしらん? 今進行中のお仕事がうまくいくようなら,自分向けのご褒美にさっさと買ってしまおうかとも考えているのだが・・・う~ん,もう少し悩むことにしよう。 
 寝ます。

内田樹「街場の中国論」ミシマ社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 978-4-903908-00-7, \1600

街場の中国論
街場の中国論

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内田 樹著
ミシマ社 (2007.6)
通常24時間以内に発送します。

 日曜日の午前中,AM7:30~AM11:00頃まで,フジテレビ,NHK,TV朝日の番組リレーを眺めることが,政治経済に関心のある日本のサラリーマンのデファクトスタンダードになって久しい。ワシも時間に余裕ある時は(ない時でも現実逃避行動の一環として),ぼーっと眺めることにしている。ここ10年ばかり,そーゆー日曜日の午前中を過ごしてきたが,年とともにワシの脳内の視聴態度が変わってきたのである。
 以前は野党や攻め立てる司会者に共感して見ることが多かったが,今は与党代表者や攻め立てられる側に日ごろの自らの言動を重ねて見ることが多くなっている。そして,つくづく「言い立てるだけ,批判するだけってのは楽だな」と思うようになった。逆に言えば,自分が批判される側になってきた,ということでもある。言い訳をする,自己弁護をする,そーゆー「情けない」立場になってきた,ということである。客観的に見て,ワシ自身に責任がある失敗を重ねてきた,という訳である。・・・書いてきて気分が暗くなってきたが,まあ,ワシが子供の頃,オトナが遠い目をしながら「・・・いろいろあるんだよなぁ・・・」と誰に語るでもなく呟くのを何度か聞いたが,それを同じ態度をワシが取るようになった,ということなのである。その意味で,ワシはオトナになったのである。
 で,今のワシは選択的にリスクをとるかどうか,考えるようになっている。卑怯な態度だなぁ,と我ながら思うが,リスクを引き受けるからには責任が付きまとう訳で,できもしないことをやすやすと引き受けることはかえって相手に失礼になる,と考えてのことである・・・おっと,もう言い訳を始めてしまった。それでも我ながらバカだなぁ,と後で思ってしまうリスクを抱えてしまうことは,今でも多いと感じる。その意味でワシはやっぱり本質的にバカなんだろう,きっと。
 そんなワシとは真逆の人間がいる,ということを知ったときは新鮮な驚きを感じた。自分の社会的地位を維持するための必要最小限のことはするが,それ以上のことはひとかけらもやろうとしない,そーゆー人間のあっけらかんとした態度表明を聞いたときは少し感動した。同時に,こりゃ困ったことになったなぁ,と大いに戸惑ったのである。でまあ,実際,そーゆー人間の尻拭い,しかもリスクつきの仕事も引き受けさせられて,ウンザリさせられているのである。
 ワシら人間は,国,地方,市町村,町内会,会社,学校,各種団体・・・いずれかの組織に属し,そこで一定の社会的役割,つまり,内田樹いうところの「雪かき仕事」を大なり小なりこなしている。その自分とは直接関係のない「雪かき仕事」は,個人としては避けることは可能だが,「誰かがやらなければならない」重要な仕事なのであって,みんなが避けてしまうと組織全体が困ったことになる,つまり,個人個人が基本的人権を維持できない事態に陥ることになる。内田はこのような「雪かき仕事」を徹底して避ける人種,個人の「目先の」利益しか見ずに行動する人種を「小利口」と,皮肉を込めて命名した。

「集団の一定数だけがそれを行う場合には利益が多いが、閾値を超えると不利益の方が多い行動」というものが存在する。

 これを読んで,そっか,ワシが感動したリスク忌避人間は「小利口」だったのか,とポンとひざを打ったのである。そして考え込んでしまったのだ。小利口にならず,バカからある程度は脱却するための個人の道を探りつつ,社会全体として機能不全に陥らない方策はないものか,と。
 本書は「中国論」と銘打ってはいるが,内田も述べているように,一定の客観的事実を踏まえてはいるものの,詳細を極めた提言や研究を述べ立てる現代中国論ではない。太古からの存在しつつけてきた最も近い大国について,「小利口」ではない態度で内田が真摯に考えたcleverな論考,それが本書である。
 だからといって,「ウチダのいつものエッセイの寄せ集めだろ?」と軽んじるのは間違いである。この現実的な「おじさん的思想」をどう捕らえるのか?,と質問することで,その回答者の現実的思考能力を測ることができる,そーゆーリトマス試験紙(最近は使わないかな?)として役に立つ思想書なのである。

6/9(土) 掛川・雨後曇

 朝から大雨。昨晩に引き続き,雷も落ちる。気温が低いせいか,大したことはなかった。
 ちょこっと飾りを作ろうとしてこんなものを午前中にシコシコいじってみた。
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 で,組み込んでみた。
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 少しはましになったかな?
 ボチボチやって寝ます。