3/24(日) 駿府・曇

 この冬は暖冬という予想通り,なんとなく生ぬるい日が多かったように感じているものの,時折は「これこそ冬!」という寒気団がシベリアから降りてくる。3月半ば過ぎだというのに,最後の冬将軍が先週末から来襲してきたようで,北国は雪模様,温暖な駿府の地もUltra Warmなヒートテックが必要なほどの寒さとなったが,それも本日までらしい。月曜日からはソメイヨシノの固いつぼみが緩んでくる陽気になる模様。もう少しで春爛漫の気分が味わえようというものである。

 とゆーことで,1月末からこの方,計算してはデータ化してグラフ化して文章化してまとめて投稿,みたいな日々が続いていたが,本日最後の一本が何とか形になった。これから推敲して火曜日に提出(三日遅れ)すれば,あとは新学期の準備に取り掛かりつつ,ようやく次の研究テーマ(実装)に取り組めようというものである。いやぁ長かった長かった。とゆーことで今更ながら,望洋Python本などをつらつら眺めつつ,いつもの山下達郎サンデーソングブックを自室のHomePod miniから流れる良いサウンドを慈しみつつ,マル二月ぶりぐらいのBlog更新記事を書いているという次第なのである。

 2か月ぶりとなれば,アレも書こう,コレも書いておかなきゃとなる筈なのであるが,いざログインしてキーボードから昨今の時候を書き出して本題となると,不思議なことに,途端に霧散霧消してしまうのである。「アレ?何だっけ?」状態になるのである。痴呆かという程なのである。・・・ま,6秒待てば怒りは静まるというし,忘れるぐらいなら大したことではなかったということで一つよろしいのではないか。我ながら老成したモンである。

 とゆーことで,またボツボツ更新したいモンであります。

 

川村稲造「新・大学序列」中公新書ラクレ

[ Amazon ] ISBN 978-4-12-150734-1, \840 + TAX

 色々と大学業界のことを語る書籍,YouTube,ネット記事を読んできたが,どれもこれも「一理ある」のは当然としても,客観的に情勢を分析した上で今後への現実的な処方箋を示したものは相当限られる,ということがようやっと会得できた昨今である。一時期流行った「潰れる(淘汰される)大学リストアップ」を得々と語るジャーナリストが一番信用ならず,そもそも学校法人や大学の内実を殆ど知らない門外漢であることが,昨今の予言大外れで露呈した。ワシが見てきた限り,物言わぬ大学関係者が一番状況を理解しており,あとはせいぜい長年この業界を見聞きし,今も丹念な取材を重ねている二人のジャーナリストぐらいだろう。一口に「Fラン私立大学」と言ってもその内情は千差万別,バタバタと店じまいするわけでもなく,案外,割と盤石と思われるところが火の車,ということもある。規模の大きいところが有利なのは確かだけど,小規模女子大だったところが共学化して急拡大,ということも随所で起こっており,結局のところ,予測不能な未来のことを軽率に決めつけるモンじゃないなと思う今日この頃である。

 とはいえ,本書の第1章でも示されている通り,この日の本の18歳人口は急速に細っており,若年者の入学者に頼る大学業界が構造不況であることは間違いない。だから各大学が生き残りをかけて必死に改革を進めている・・・と言いたいところだが,第2章で示されている通り,一番必死なのは2番手中規模大学。トップクラスの大学は常時変革し続ける体制を整えており,行政から縛りをかけられるほど定員を拡大し続けており,2番手集団はトップから振り落とされないように必死こいて最大のステークホルダーたる高校生の人気を確保しようと超拡大路線を取り続けている。逆に小規模大学は精一杯やっても現状維持が関の山,学部再編にしても,文科省大学設置・学校法人審議会から「既存学部の定員充足に努めるべし」=「人気のないところを削らんと再編認可しないからね」と釘を刺されてしまうのだ。つまりは学生募集状況が上々のところほど追加の学部・学科新設に有利,定員拡大も容易に認可されてしまうわけである。
 んじゃぁ,小さいところは何やっても無駄かと諦めて良い訳はなく,退学率を減らしつつ,学生の実力を上げてより良いキャリア形成に繋げるための教育力の向上に努めねばならず,そのためにも第4章に述べられている通り,教員の研究力を上げる必要がある。「え?大学のセンセーって自分の研究するために勤めているんじゃないの?」と思ったあなた,それはそうなのだけれどそーでもないという事情もあるのである。フツーの会社なら人事評価で働きの悪い社員はケツを叩かれるが,大学の場合,評価項目が多岐に渡って難しいこと,屁理屈こねることにかけては人生賭けている人種が多いこともあって教員の個人評価が進んでいないということも本書では述べられている。まぁ評価される方からすればたまったモンじゃないというのは理解できるんだけど,組織としては「これこれはキチンとやってくんないと困る」という項目については評価の上で人事や給与に反映させないと,マジメにやっている教員のやる気を削いでしまって存続が危うくなる訳で,マトモなところはちゃんと個人評価をやっているハズ。少数の例外はあれど,研究力が上がれば教育力も上がり,パワフルな教員が増えて,意欲ある職員とのタッグがうまくいっているところほど将来の展望も明るくなろうというものである。
 ・・・ということをしっかり認識している経営者が長期視点を持って舵を取っているなら大学も安心なんだけど,第5章に示されている通り,肝心の経営者の年齢層が高すぎて,アクティブな40〜50代の理事が少ないという事情を見ると,その場しのぎで任期を全うするだけの経営になってやしないかと不安になってくる。
 結局のところ,教職員と経営層が,高校生と大学生のニーズを最大限汲み取り,日々の教育と研究活動をうまくリンクさせながら活性化させつつ,数年単位での組織改革と設備更新を怠らず,SNSも最大限活用した対外宣伝活動を積極的に行っていくしかない。これが口で言うほど簡単でないことは本書で随所に示されている統計資料で裏付けられており,それを罵って開き直るような無責任な非当事者「ではない」著者によって,説得力のある現状分析と明るい未来のための処方箋が示されているのが本書なのである。

 とかく大学教員の書いたものは文科省批判が多く,首肯するところは多いんだけど,文科省や財務省がそういう締上げ政策を行わざるを得ない社会情勢・政治状況生じている根本原因に照らしての自己反省が皆無なところ,全く世間的な支持が得られないだろうと嘆息せざるを得ない。本書の著者は,社会人,大学教員,大学経営全て経験しており,客観的な社会情勢を見失わない視座を崩さないから,社会にも学生にも教員にも経営層にも是々非々の論を張ることができている。惜しむらくは出版されたのが2021年と古く,期待された文科省による全国大学生アンケートが大コケしてしまったというハズレもあるけど,今のところ,本書は申し分のない大学業界の啓蒙的指南書となっていること間違い無いのである。

1/2(火) 駿府・雨後曇時々晴

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

 予報では晴れるということだったが,直前になると予報が変更されて曇り,実際には雨。昼過ぎから雨が止み,時々晴れ間が覗くようになる。ハッキリせん気候である。暖冬傾向が強まれば冬型の気圧配置が長続きせず,太平洋側の晴れ間も続かんようになるということか。

眠る獅子@日本平

 新年早々,能登半島で震度7の大地震。大津波警報をNHKアナウンサーが絶叫する状況にビビる。一夜開けてみれば,輪島市朝市通り周辺が丸焼け,珠洲市も倒壊した家屋が多く,津波に津波に洗われた地区もあり,死傷者数がどんどん増えていく。のと里山海道も能越自動車道も地割れ・陥没・土砂崩れが多発して山通りが全滅の様子で,人道援助もままならん様子。滑走路がビビ割れた能登空港が使えず,小松空港や新潟空港に臨時便を飛ばすと決まるや羽田空港で援助物資を積んだ海上保安庁の航空機が新千歳空港から到着したJAL機にC滑走路上で衝突炎上。JAL便の乗客・スタッフは全員脱出できたとのことだが,海上保安庁機の方は脱出した1人を除く5名死亡。非常時にドガチャカの事故を起こすあたり,この先どうなるのかと不安になるばかりだ。
 穴水に6年暮らしたワシとしては,見知った地域が悲惨な状況になっているのは人事でない。卒業生は殆ど加賀・越中に出ているから大丈夫だろうが,ワシが散々世話になったM本石油の若旦那は御無事だろうか。

 こちとら,いつ何時南海トラフ地震に見舞われるやしれず,無事に過ごせているうちにやるべきことをするしかない。ということで毎年恒例の久能山東照宮と浅間神社を参拝。御神籤は吉と大吉。今年はチャレンジ年になりそうなので,せいぜい頑張りましょう。

 とゆーことで年明けの挨拶は終了。明日からは本気出すだけ・・・頑張りましょう。

12/31(日) 駿府・雨後晴

 この年末は暖かくなるという予報であったが,朝晩は例年並みに寒く,日中は太陽が出てそこそこ暖かい。当たらずと言えども遠からず,まぁ概ね暖冬であるという長期予報通りではある。良き歳末である。

 とはいえ,書類訂正のお仕事があり,新規科目の予言問題・定期試験問題・最終レポート問題を作るという大仕事もあり,論文投稿を目指しての計算プログラム作成ありで,年をこすタスクが多すぎる。9月から12月に入るまでは完全に抜け殻状態でここの更新もできない有様であったため,やるべきことがまるでできていない。これでは「あがってしまった研究者」そのものであり,脱却をせねばならずとクリスマスイブには岡山日帰り往復を敢行,何とか刺激を貰って黍団子共々帰還したという次第。

昔見た時にはもっとどでかい坐像だったような気がするがリニューアルした?

 戻ってからもうちっと高速化の余地があったなぁと後悔先に立たず。また頑張りましょう。

 はてさて,本年は調書作成を行なっての過去の振り返りを盛大に行い,我ながら結構な仕事をしてきたことを思い出すことができた。役職が上がるにつれてあれこれやらなきゃいかんことが増えて,いつまでも反権力気取ってられんと権力側に回って怒鳴る方から怒鳴られる方へ。まぁ50過ぎて人様を罵るだけの愚かな年寄りにはならずに済んだのは良かったかなとは思うが,割に合わんなと思うことも昔の因果に応報を受けていると感じることも多し。来年はもうちっと飛躍の年にしたいモンである。

 とゆーことで毎年恒例のうま煮もギリ間に合ったし,ぷちめれもやっつけながらフン詰まり状態だったコンテンツ出せたし,あとは年越しそば作って啜って紅白横目にmacOSをSonomaにアップデートしつつWindowsマシンで固有値計算せねばならぬ。とかやっているうちに神さんが戻ってきてそそくさと寝て明日を迎えるのである。

 本年もありがとうございました。来年も出来うる範囲で更新しますんで,
よろしくお願い致します。

夏目にーに「夏目にーに短編集5 底辺画家はどう生きるか: コロナ禍画家が2年間もがいた記録漫画」Amazon Kindle,あららぎ菜名「東京藝大ものがたり」飛鳥新社,原作・二宮敦人,漫画・土岐蔦子「最後の秘境 東京藝大 全4巻」新潮社

夏目にーに「夏目にーに短編集5 底辺画家はどう生きるか: コロナ禍画家が2年間もがいた記録漫画」Amazon Kindle,\0
あららぎ菜名「東京藝大ものがたり」飛鳥新社,\1200,Kindle版
原作・二宮敦人,漫画・土岐蔦子「最後の秘境 東京藝大 全4巻」新潮社, Kindle版

 年の瀬に何か一冊ぐらいはレビューをしたいなと思っていながらとうとう年の瀬,どん詰まりの大つごもり。ということで,今までやろうやろうと思ってできなかったアーティスト実録漫画を一気に紹介することとしたい。

 きっかけは夏目にーにのエッセイ漫画である。最近すっかりひ弱になって,Xのおすすめポストを抵抗することなくぼーっと眺めていたら出てきたエッセイ漫画,さすが現役画家だけあって,しりあがり寿クラスのセンスの良い,白い画面をすさまじく疾走する筆者が主人公のエッセイ漫画である。本書の内容を一言でいえば,ステータスを上げるべく,高校の美術教員として日々忙しく過ごしながらも空き時間を芸術活動に捧げつつ,成果が出たり出なかったりに一喜一憂する日常を描いている。最近はXでちょいと社会的地位の高そうな方々にかみつく愚かで暇な中高老年らしきアカウントが跋扈しているが,あの手の叫びは自己充足できず世間からの承認を得られない不満が転じたジェラ心が駆動しているだけであるからして,ミュートするなりブロックするなり,場合によっては自分のアカウントを一定時間鍵かけておくなりして無視してやり過ごしておくに限る。要は,オタク的成熟を経ていないだけの話であるからして,自分が愚かな中高老年バカッターになりたくなければ,自分が楽しいと思える,それでいて少しはごく近い人間関係を円満にする活動に身を置いて活躍すればよろしいのである。この点,夏目にーにがタダでAmazonより提供しているこの巻は,みっともない中高老年にならないよう,良き見本として大いに役立つものである。年寄りはかくありたい。

 それにしても,芸術活動というものも残酷なものである。世間的評価によって成果ははっきり出る。一定の成功を収めるにはもちろん,本人の営業的努力は必要であろうけれど,それ以前にアート的な価値というものの理解がアーティスト自身に存在していないと話にならんのだろう。問題はその「アート的な価値」というものがワシみたいな門外漢には分かったようでいて分からん代物であることだ。専門家に聞く限りは,ある程度は教育で「アートな価値観」とテクニックを収められるものらしいが,それにしても土台となるその価値を理解できるセンスがなければ,学んだテクニックをもってしてもアートに昇華する作品を作ることは不可能であろう。そういう残酷なチャレンジを,日本国における最高のアーティストを輩出する東京藝術大学(東京藝大)では,入試という最初の関門で20前後の若者に課しているわけである。ということで,今時地方私大なら名前を書けば誰でも入ることができる時代に,あららぎ菜名は3浪(1回目×,2回目×,3回目で合格)して最高芸術学府に入学できたという次第である。そのつまびらかな過程は本書を読んで頂くとして,要はアーティストの基礎教養=センスを磨きながらのテクニック向上(デッサン,デザインなど)をみっちりと入学前に叩き込んでおく必要がある,ということはワシでも理解できた。高校在学中からの3年間の葛藤,なかなか読んでいて胃が痛くなるが,易化する大学入試においては年内合格が当たり前のこのご時世に,この恐ろしく過酷な受験というものが持つ意味を考えるには良いエッセイ漫画である。

 とはいえ,じゃぁ入学してからのアーティスト修養生活はいかなるものか?という疑問は残ったままだ。この点,本来ならあららぎに描いてほしいところ,今のところ続刊はないようなので,二宮敦人の夫人(東京藝大・彫刻科・1浪)を媒介としたエッセイをもとに漫画化した本書を読むことをお勧めする。もちろん原作を読んでおけばいいんだろうが,やっぱり芸術であるからして,漫画で説明してもらった方がビビットにその生態が伝わってこようというものである。で,全4巻読んだ感想としては,センスのある生物的タフネスさが,アーティストとして一番の成功ポイントなんだろうなという,当たり前の結論である。なーんだ,結局,「性懲りもなく悩みながらも継続すること」これ以外に充実する人生ってあり得ないんだなと。営業サラリーマンであろうと,プログラミングで四苦八苦するSEであろうと,研究に日常思考を捧げちゃった学者先生であろうと,「やたらめったら動き回るしかない」(水木しげる「新選組」から)のである。

 以上,アートにまつわる3つの作品を読み返して年の瀬に思うことは,来年もまた頑張ろう,それだけであり,毎年同じことを繰り返して日が暮れていくのをしみじみ嚙み締めつつ,後半戦に突入した我が人生を堪能していきたいものである。