夢路行「夢路行全集19 柔らかな冬」一迅社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-7580-5145-3, \552

夢路行全集 19
一迅社 (2005.5)
通常24時間以内に発送します。

 以前にも書いたように,ワシは律儀に全集を買い続けている。完結するまでコメントはしないようにしていたのだが,本書に収録されている一本の短編が妙に気になったので,それについてのみ,うだうだと書いてみたい。
 それは3本目の短編「海の花」である。
 こんなストーリーである。
 主人公は,地方都市に住む女性で,あまり売れていないモデルとして生計を立てている。現在進行形で付き合っている男性がいて,物語は彼からプロポーズされるところから始まっている。が,同時に主人公の悩みも始まってしまうのである。「仕事を取るか,結婚を取るか」。
 こういう説明をすると,ごくありふれたストーリーとも言えるのだが,問題はこの主人公の「悩み方」にある。
 実は彼女には双子の妹がいるのである。その妹は,主人公よりモデルとしては素質があり,将来を嘱望される存在であったのだが,普通のサラリーマンと結婚してさっさと引退してしまい,今は二人の子持ちのお母さんとして幸せに過ごしている。二人は今も昔も仲が良く,夜中に携帯で語り合ったりしている。が,主人公にとっては,この妹の存在が引っかかっているのだ。
 モデルとしては二流いや三流どころの存在である自分。でも仕事は楽しく,引退はしたくない。彼と一緒にいたい気持ちは強く,結婚はしたい。
 片や,自分より素質がありながらも,結婚してすっぱり引退してしまった妹。モデル業への未練など全く持っておらず,家庭の切り盛りに幸せを感じている。
 さて,自分はどうすべきか・・・身近に気になる比較対象物がある主人公の悩みが伝わってくるモノローグをいくつか引用してみる。
 「でもあたしは自分がどの程度か知っている」
 「自分の実力も知らずに夢見ていられるころはすぎちゃった」
 「どっちかな・・・どっちだろう 香織(妹)は幸せみたいだけど」
 「(仕事だって)いっそ全然ダメならきっぱりやめられるのにな・・・」
 「ハンパな才能なんてないほうがいい」
 淡々とした日常の風景描写の中に,ポツポツとこのような悩み節が刻み込まれてくると,かえって「ハンパな才能」で日々悶々としているワシに突き刺さってくるのである。いや,もちろん自分なりに生きていくための結論は出てはいるのだが,改めて,フィクションとはいえ日頃意識の片隅にあるヒリヒリ部を刺激されると,もうどうにも気になってしまうのである。
 夢路行,恐るべし。

6/16(木) 掛川・?

 一昨日は,冷蔵庫に入れっぱなしになっていた漬物と味噌汁の影響でちょっと下痢っ腹となる。こんな軟弱な胃腸では吾妻ひでおにはなれそうもない。将来に備えて精進せねば(何を?)。
 Pentium D 820マシンを発注。まずは一台のみ,学内研究費とは別予算で購入し,出たばっかりのFC4Win XPでインストールとPthread性能をチェックしてみる予定。どーもベンチマーク結果を見る限り,並列性能ではAthlon 64 X2には負ける感じ。さてどーなりますことやら。
 SWoPPとFITの原稿が上がって,それなりに環境整備とベンチが出来て問題ないようなら(あったって後戻りは出来ないんだけどさ),残りのマシンも7月中には発注してしまおう。
 ついでにいい機会なので,Intel C++ Compiler 9.0も発注する。ドンくらいGCCよりマシになるものなのか,試してみよう。・・・ああ,またベンチマーク項目を増やしてどうする>ヲレ。
[メモ] Pen D Clusterでやらねばならぬこと
 1. Partitionを4つに分割して
FC4 for i386
FC4 for x86_64
WinXP
WinXP64
を起動できる環境を作る。それぞれでMPI cluster環境を整備。
2. (@1 node)それぞれの環境で次のベンチマークを行って比較
GMP/MPFR basebench
BNCpack Linear bench
Linpack bench(時間があれば)
3. (@1 node)自作行列積ベンチでPthread性能を比較
4. 1 node内,2 node間(with GbE)のMemcpy(前者のみ), TCP, MPI通信性能をNetPIPEでベンチ。MPIは, 1 proc/nodeでセッティングした場合と, 2 procs/nodeでセッティングした場合でもベンチを取る。Xeon Dual マシンとの比較も行う
5. 1 proc/node, 2 procs/nodeでのMPIBNCpackのベンチを取り,Pentium 4 Clusterとの性能向上比を計測
6. (@1 node)Pthreaded BNCpackのベンチ
7. 1 proc/nodeでのみ,Pthreaded BNCpack + MPIBNCpackのベンチを取り, 5と比較
 ・・・あ,めまいがしてきた。有言不実行になりそうなので寝ます。

6/13(月) 掛川・曇

 多分,学生さんたちからの風邪を頂いてここ二日間は寝込んでいた。熱があるわけじゃないが,なんかすっきりしない。どよどよ。オマケに蒸し暑いし。梅雨入りしたんだから,ちょっとは雨を降らせろよ>天
 某研究会参加締め切り。昨年よりやや参加者数低調。ワシのCGIセッティングのせいではないと固く信じているが,へーへーどーせどーせ,富士山測候所が無人化されたのも黒潮が蛇行しているのもみんなワシのせいさ。
 先月の一週間ぶっ続けの某国際研究会の余波で,休講を重ねられない上に,重要な会議を多数抱えている××な方々が欠席されているのが一因のようである。それ未満の方々は軒並み出席されているというのがアレである。まあ,偉くなるっつ―のはそーゆーことだわな。
 学内研究費,当たったようなので早速書類を提出。ほほほ,これでDual Core Clusterが組めますことよ。Pentium D 820でってのがちと悲しいが,高々HTごときに数万円も追加投資するぐらいなら,その分,メモリや光ドライブやHDDやGraphics Cardに回した方が得策ってものよ。
 で,申請書にはこんなことが書いてあったりする。
「・・・(中略)・・・更に,前述したように,我々の研究は常にコスト意識を持ち,その制約の中で最高の性能を引き出すソフトウェア技術を探求するという姿勢を一貫して保っており,その点でも他の研究とは一線を画するものと言える。大規模並列計算のための技術開発は,最高級のハードウェア・ソフトウェアを札束で買う,という傾向が今でもあるが,大学のような教育と研究の両立を目指す機関においては教育用途に転用できない特殊な情報機器を購入することはあまり好ましいことではないからである。」
 ・・・自分で書いた文ながら,ルサンチマンを感じるなぁ。
 後藤英一先生,死去(朝日新聞)。合掌。
 寝ます。

「数値計算における誤差について」

 某筋から依頼されていたレポートに前書きと参考文献を追加して公開。
 na_error_diff.pdf
 誤解する人はいないと思うけど,精度保証に対するアンチテーゼとして書いた訳ではない。大体,精度保証グループさんたちが目指している方向と,こーゆー誤差推定術の目的とは全然別物である。数値計算による結果についての「厳密な証明」(=真値を含む区間を保証)をしようというのが前者の方々の目的であるのに対し,後者は合理的(解析的・経験的・統計的)な物差しに基づいた「抜き取り検査」みたいなもんか。数学と工学の考え方の相違って感じもするねぇ。

床井浩平「GLUTによるOpenGL入門」IOmook

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-7775-1134-0, \1900

GLUTによるOpenGL入門
床井 浩平著
工学社 (2005.5)
通常24時間以内に発送します。

 3DCGド素人のワシが,本年度からOpenGLを使った実験を始めるにあたって,資料を渉猟した結果,どうやらこのWebページが高評価を得ていることが分かった。読んでみると,なーるほど,Global変数を必要最小限度にとどめ,codingスタイルもキレイ,説明も簡潔でわかりやすく,最後の演習課題は歯ごたえがあってナイスである。
 で,実験が始まってからも時折眺めていたのだが,今回それがオマケも加えて一冊にまとまったのである。これを買わずにおらりようか。ああ,ワシみたいなオヤジには,やっぱり本が一番読みいいわい,と実感することとなったのである。いい機会である,ひそかに床井先生のページで勉強してた輩は,是非ともご恩返しのつもりで本書を買いなさい。
 ふーん,GLUTにゲームモード切替関数なんてのがあったのか(付録C)。今回はじめて知りました。やっぱどこの世界も,奥が深いんだなぁ,勉強することは多いや。早速,次年度の実験で使わせて頂くことにしようっと。