9/24(水) 掛川・曇時々雨

 風が強い上に,昼からは雨までぱらついてくる,いやんな天気。明日はちっとはマシになるようである。
 12月まで研究集会もなし,などと書いたら,本日,Linux Conference 2003採用通知が届く。11月1日(土)講演とのこと。前日から泊まり込んで,大阪でもぶらついてきますかねぇ。
 つーことで,10月3日までに原稿を出せとのこと。あーもーまた仕事が増えた~・・・と自分から申し込んでおいて,贅沢なことをぬかす私。
 e-Learning学会に入会すべく,書類を書く。これでえーと・・・日本応用数理学会,日本数学会,情報処理学会,SIAM,日本Linux協会,e-learning学会・・・6学会か。銭ばっかりかかるわい。仕事上の投資みたいなモンだから,いいんだけどさ。

桂米朝×筒井康隆「対談 笑いの世界」朝日選書

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-02-259835-2 \1200
 人間国宝&文化功労者の噺家と,シュバリエ賞&紫綬褒章作家との対談をまとめたもの。筒井によれば,新聞に掲載されたのはこれのダイジェスト版で,「限られた紙面」であったために「面白い部分は大きく割愛」されたものだったそうである。4時間に渡る長丁場の対談にしては「朝日の謝礼というのは失礼ながら恐るべき低額」なので,本にすべきと筒井は主張し,もう一度対談を重ねて本書が出版されるに至った。
 米朝という人は,私がものごころついた時には既に上方落語のの大御所で,オーソドックスな噺家というイメージがあった。が,噺を聞いてみると,マクラでは時事ネタを織り込んで観客を引きつけるだけの現代性を持っており,伝統芸能としての落語をタダ語るだけの人ではない,ということが段々と分かってきた。「大物」というのはこーゆー人のことなのであるな。小松左京と親交があるだけあって,SFを含めて本をよく読んでいるよなあ,と感心する。本職の落語に至っては,ちくま文庫から自身の解説付きの選集が発行されているが,まあ底知れない知識があって,弟子のざこばに言わせると「広うて深うてむちゃくちゃやしね」となる。
 といっても,それだけ深いと自らその知識を披露するにも限界があり,引っ張り出すだけの力量を持った相手が必要である。本書の対談は,勿論,大御所同士のタッグを見せる目的で設定されたものであろうが,さすがに筒井は一歩引いて,米朝の底知れぬ知識を読者に開陳するべく,楽しみつつも奮闘しているように感じた。
 んで,読んでいる方と言えば,古典芸能には全くもって暗い上,大阪の知識が皆無であるから,脚注は充実しているとはいえ,よく分からない部分が多い。それでも,語られるエピソードの多くに感心したりにやりとしたりさせられ,一気読みしてしまった。「分からない部分もあるけど,そこも含めて面白い」という楽しみ方が出来れば,なおよし,という本である。

9/23(火) 掛川・晴

 ふと気が付けば,夜の草むらからはコオロギ(かな?)の声が聞こえてくる。先週までの残暑が嘘のような肌寒い,風の強い一日であった。
 2週間に渡る学会ラッシュが終了してみれば,12月まで東京に出る用事も,研究集会に出席する予定もなく,ひたすら仕事に邁進する(ホントか?)秋となりそうである。全く,昨年までは毎週非常勤で横浜に出かけていたことを思えば,随分と時間に余裕が出てきたものだ。それを埋め合わせるように,あれこれとまとめたいネタが湧いてきたのだろうな。学者冥利に尽きるわい。ふっふっふ。
 しかし,こうデカイ本屋に出かけられない日々が続くと禁断症状が出そうである。いわゆる,「Amazon症候群」という奴で,ちょっと時間が出来るとブラウザを起動し,新刊をチェックしたりするのである。今ちょうど岩波書店から,応用数理シリーズをまとめなおした単行本がワサっと刊行されているから,来月あたりに耐えきれなくなって全巻購入しかねない。今日もSIAMの新刊を購入してしまったが,これはきっと禁断症状の前触れであろう。なまじっか小金があるのも考えものである。
 一昔前ならきっとPC用パーツをチマチマと購入していたであろうが,もうPCには大して興味がなくなっており,特に欲しいソフトウェアもないため,研究用のPC Clusterの価格チェックをする以外は通販ページを見ることもなくなってしまった。次年度は一年ぶりに海外に出かけることになりそうだし,旅費にふりむけることにしようっと。
 GMPのVisual C++.net ネイティブ環境対応バージョン。他にも,MinGWで作ったものがある(但し,import libraryは自分で作る必要がある)。Assemblerルーチンも対応させたのはこれが始めてではないか? リタイアした技術者の方が作られたようで,敬服する。
 C++のクラスライブラリを使って,Visual Basic環境で気軽に多倍長計算が可能になると嬉しいのだが,誰かやらないかな? ・・・わしはやらんぞ。当分。
 某学会で一度リジェクトした論文が復活して採録されたようだ。Editorとすったもんだしたのでこちらも気分が悪かったが,ま,一安心。どんな内容になっているか,楽しみである。最も,新規性については今でも疑問なのだけれど。
 JSIAMから回ってきた査読論文,滅茶苦茶めんどくさい。原書の補題のミスを指摘した論文が以前掲載され,その論文における間違いを指摘する論文なのだ。つまり間違いがRecursiveになっている。その上,翻訳の方では修正がなされていることになっているが,今回の論文の指摘を見る限り,それは修正になっていないようなのである。この時点で頭がクラクラしてくる。で,更にややこしいことに,一見したところでは以前の論文のどこが間違っているのか,さっぱりわからないのである。
 つまり,これを査読しようとすると,以前の論文,今回の論文,原書,翻訳書と4つの文献を相互参照しながら,もつれた論旨を紐解くところから始めねばならないのだ。うがーっ,引き受けるんじゃなかったっ。

内田樹「ためらいの倫理学」角川文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-04-370701-0, \629
 学者さんの書いた本は文章が晦渋で分かりづらいものが多い,と巷間よく言われる。ま,ね,一昔前,研究室でふんぞり返っていられた時代なら,それは権威の象徴を高める小道具になったかもしれないが,今は全く逆である。いかに分かりやすく,しかも内容のレベルを落とさずに語れるか,その能力が学者先生の評価を定める基準となっているのである。
 問題は,そーゆー,分かりやすく人に伝える文章を書く訓練を,大学とゆーところは全く教えてはくれなかった,とゆーことにある。せいぜい「ゆー」ではなく「いう」と書け,という「てにおは」チェックレベルが,卒論指導で行われる程度であった。故に,分かりやすい文章を書く能力は,分かりやすい文章をたくさん読んで自学自習で習得せねばならなかったのである。
 そこで本書の著者,ウチダは「小田嶋隆」を学習し,その結果,分かりやすい文章を身につけるに至ったのである。よって,随所にオダジマ風文章が出現することになった。
 オダジマ風文章の特徴に,吐き捨てるような短いセンテンスで改行し,ハードボイルドのパロディ的な雰囲気を出す,というものがあり,本書でも至る所で出現する。例えばP.236の
 これではブランショ的な無限後退だ。
 「おれは自分の背中を見られるぜ」
 「そういうおまえの背中を俺は見ているよ」
 「というおまえの背中を俺は・・・」
 うんざりだ。
 やめよう。
なんてのは正にそれである。論理的な文章の最後の締めがこれぐらいピッタリ填ってしまうと,お見事としか言いようがない。
 解説の高橋源一郎曰く,「極端ではない思想」が詰まった,コヤノが言うところの「中庸」が徹底しているオダジマ風思想書は大変に面白い評論集であった。んが,それは「極端」を知っていなければ面白がれない代物ではないかという気もする。商業的にはやっぱり薬より毒を持っている方が重宝がられるから,たくさん読むと「ああやっぱりどっちつかずの結論ね」と飽きられてしまいかねない。保守と革新(というくくりももはや有効ではないような気がするが)のどちらにもなじめず,「ああ,俺はどっちつかずの人間なんだ」と気が付いた時に本書を読めば,「それもありなのね」と気が楽になる。が,たくさん読んでは飽きてしまう。適度に服用してこそ役に立つ思想の常備薬,というのが,私にとって一番ピッタリ来る表現である。

9/22(月) 掛川・晴

 さわやかな風がそよ吹く秋の空。おお俳句になった。気持ちの良い一日。が,朝晩はぐっと寒くなってしまったので,慌てて長袖のパジャマを引っ張り出した。
 先日オープンしたばかりの掛川花鳥園の招待券が郵便ボックスに投函されていた。しかも2枚。入場料が\1050だそうで,地元民がrepeaterになる率は低そうである。11月に家族が押しかけてくる予定なので,その時まで取っておくことにする。
 明後日から講義開始。ああ短い夏休みだった。充実していたか,と言えば・・・難しいところである。あんだけ論文論文と騒いでいて,まだ出来上がっていないのである。ただ,ここに来てネタが一本増えたので,ちっと嬉しい。掲載されるかどうかは不明だが,投稿できる準備が整ったことはめでたい。
 静岡に来てから早5年目。ようやく研究と教育のサイクルがかみ合ってきたようだ。この勢いで○○できるよう,もっと精進しよう。
 あ,19Inchの液晶ディスプレイ,しかもTV Tuner付き(PC Watch)。職場ではNANAOの19inch CRTを使っているのだが,これがでかくて邪魔になっている。6万円台になったら購入しようかしらん。