10/8(水) 駿府・晴

 今週は月曜日から台風18号のあおりで急な休講日となり,どうも調子が狂っている。来週にはさらに強力な19号が来襲するというし,どうなっちゃうのかしらん? 富士~興津のJR東海道線が崖崩れでストップしているため,新富士~静岡の新幹線に振り替えており,朝方のラッシュはえらいことになっている。まぁワシはどっと静岡で降りた後に乗り込むので大した影響は受けていないのだが,大量に降りてくる乗客を待たねばならないのでちょろっとイラつくのであった。

 今週イマイチ調子が出ないのはもう一つ,論文掲載が決まって気が抜けたということもある。あっさり注文もなく通過したってのが初めてなので,「さぁどんな修正でもかかってこいっ!」と身構えていたこちらとしてはしおしお~になるのである。ありがたいのではあるが。
 それはいいとして,どうも掲載は数か月先になるよーな感じなので,かねてよりお約束の件をいつ履行していいのか困っているのだ。つまり,「この論文が載ったら髭を剃る」と宣言していた件である。
 つーことで,家庭内会議を開いた結果,結婚前の交際時以来,髭なしのワシを見たことのない(写真ではある)神さんとしてはイマイチ賛成しきれないようで,しかし怖いもの見たさでしぶしぶOKといったところ。まぁ年末~年度末あたりでバッサリスッキリいたしましょうぞ。しかしこの論文,いつ載るんでしょうね? 今年最初のaccept論文が今頃ようやっと載るって感じだと,年度内業績にはならない可能性大かしらん?

 あ,そうそう,「情報数学の基礎」第3刷決定しました。つーても900部だから,ボチボチ絶版が近いかなぁ? ご愛用頂いている大学の方々,お世話になっております。ゆとり教育が終わったとはいえ,高校数学の内容を把握していない学生は大勢居りますんで,一つごひいきに~。

 さてもう一つ書いておかねばならない話題があるのだが,これは別稿に回そう。掲載予定論文の内容にも絡む件なので少し長くなりそうだし。

 つーことでボチボチ寝ます。

9/19(金) 京都->大阪->駿府(予定)・?

 ふ~,久々の日記更新。毎年,8月下旬から9月中旬は出張と帰省が入り乱れるシーズンなのだが,今年は更に風邪まで入り込む始末。9/6~8の札幌(+旭川+富良野小旅行)往復後に発熱を伴う達の悪い夏風邪に罹患し,今週はフラフラしながら大学見学のお付き合いと京都出張をこなしてきたのであった。ま,それも今日の大阪セミナー受講で終了するので一安心なのであるが,戻ったらホッとしてバタンキューとなりそうである。このさ中に研究室管理のファイルサーバが音信不通となるトラブルまで起こっているのであるが,どうしようもないので開き直るだけである。ま,何とかなるであろう。

 つーことで,昨日は訳のわからん英語講演を終えて,熱心な中国の院生さんのご質問にお答えして(伝わったかは微妙),ちみっと京都市内を散策して風邪を悪化させてホテルに戻ってきたのであった。Social activityは御所見学だったのだが,何だか恐れ多いので遠慮した(訳ではない)。しかしまぁ,このまだ暑いさなかでも結構修学旅行生が来ているのね。あちこちで学生服の集団がいるのはいつもの風景なのだが,この季節に来ることはなかったのでちょっと新鮮。来月からは更にハイシーズンとなるわけだが,今年はそれどころではないスケジュールになりそうなので,数理解析研の研究集会は遠慮する予定。銭もないし,今年の研究公演旅行は今回で終了かしらね。ま,例年並みといったところか。

 懸案のもう一つの論文投稿,もう少し詰めないとしんどいなぁと思い直し,12月までちみちみ弄ることにする。いろいろトライしてみたいので,もう少しコードも改良しないとなぁ。

 さて,ボチボチ荷造りして三泊分の散乱ぶりを整理しなくては。

「まえがき」候補(1)

現代の様々な高性能コンピューター上で高速な密行列・ベクトル計算が実行できる,そういうソフトウェアが実現できないものだろうか? できるとすれば,どうやればいいのか? その疑問に答える,つまり,実際にその理想を実現するソフトウェアを提供すること,それがLAPACKプロジェクトの目的なのである。(P.54, LAPACK User’s Guide Ver.3.0)

 本書はLAPACK(Linear Algebra PACKage)とそれを下支えするBLAS(Basic Linear Algebra Subprograms),そしてそれらから派生して登場した疎行列ライブラリであるSparseBLAS,GPU用のcuBLAS, cuSPARSE,そしてMAGMA(Matrix Algebra on Gpu and Multicore Architectures)の基本的な使い方をざっくりと解説した概説本です。各ライブラリの詳細についてはリンク先にある文書群をご覧頂きたい,という開き直った態度で執筆されており,「そういうWeb上の情報があれば事足りる」というエキスパートな方々には無用の長物であります。なんでも検索すれば見つかるというわけじゃありませんが,こと本書にのべられている事項は大体見つかるものばかりです。LAPACKやMAGMAについて,まず手っ取り早く知りたければ下記の二つの文書を読むことをお勧めします。

 読んだ上で「あ,大体わかった」という人はお呼びではありません。「よく分からないなぁ」と感じた方,それが本書が対象とする読者です。そして著者である私も,これらの文書類を読み,プログラムを片手間に弄っても「よく分からない・・・」と感じておりました。これらの文書類が悪いのではなく,原因は後述するように,それ以外のところにある訳で,それ故に本書を執筆することになったのです。本書は私のそうした知的(?)欲求不満から生まれたものなのです。

 私の抱いた欲求不満を分析してみると,次の点にあるようでした。

  • LAPACK/BLAS(とその派生ライブラリ)の歴史的背景が分からない
  • LAPACK/BLASの提供する関数の名付け方(naming scheme)が古いFortran由来で分かりづらい
  • そもそもFortranベースのライブラリをC/C++から使おうとすると細かい齟齬が生じてイライラする
  • 何でそんなにみんなLAPACK/BLASを使うのかよく分からない→自分の仕事にどう役立つのか分からない
  • 大学カリキュラムの「線型代数」の知識とLAPACK/BLASが提供する機能の関連が分からない

 歴史的背景については,端的にまとまった(私レベルが理解できる)文献がないという事情がありました。LAPACK/BLASが生まれてきた時代的・コンピューター的な歴史を俯瞰したかったという欲求がここで生まれ,簡単な年表を作り,それに基づいて私が理解できた範囲の解説を付記しました。人間,中年を超えると歴史に興味が自然と湧くといいますが,実際,年表づくりは楽しい作業でした。

 LAPACK/BLASの関数名のつけ方は,もともと古い時代のFortranにあった,関数とサブルーチン名の8文字制限というものに起因しています。現在でもLAPACK本体はFortran77ベースの記述がされており,C/C++や種々のオブジェクト指向言語に慣れ親しんだ世代には呪文のようなものに見えてきます。もちろんマニュアルにはちゃんと名付け方の解説はあるのですが,「関数名」と「(特に行列の)データ構造」をリンクして覚えておかないと,使いたい関数を索引から調べても,「えーっと行列はどういう風に格納するんだっけ?」となってしまいます。今でもFortranを愛用する方にとっては便利でも,C/C++的言語で書きたい多数派にとっては取っつきづらい「歴史的背景」を持ったLAPACK/BLAS。それを「最初からC/C++でプログラミングする!」と宣言した解説書を私は念願しておりました。

 加えて,行列のデータ構造も分かりづらさの原因の一つです。それは行列のデータ構造が,線型代数で習った「対称行列」・「エルミート行列」・「直交行列」・「ユニタリ行列」・・・といった数学的性質に基づくものに由来して決まるものもあれば,「密行列」vs. 「疎行列」(「帯行列」・「三重対角行列」等)というメモリ・計算効率的な理由によって決まるものが混在していることにあります。この両者をきちんと整理して把握する解説文書を私は強く欲しておりました。

 そして,LAPACK/BLASが持て囃される理由も,ちゃんと自分の手でプログラミングした応用ソフトウェアを実装したうえで理解したい訳です。もちろん人によって興味の対象は千差万別ですが,本書では,上記の解説を行うことで,各人の興味の対象物へのアプローチを用意できたのではないでしょうか。

 Python/PHP/Rubyといった使いやすいライブラリを備えたコンピュータ言語,Matlab/Scilab/Octaveといった統合型数値計算ソフトウェア,Mathematica/Maple/Maximaといった記号処理を得意とする数式処理ソフトウェアが誰でも手に入れられる時代に,ハードウェアに密着したコンパイラ言語からしこしこプログラムするというニーズは現代では量的には減っていると感じます。しかし,一部の高速性を追求するマニアや組み込み機器開発用,そしてマシンごとのアーキテクチャに最適化して大規模計算を行うニーズは確実に残っています。本書ではその一端をざっくりと解説しただけの荒っぽい本ですが,私が抱いた欲求不満を共有する方々の知識導入時にはこそこ役に立つものになっているハズ。そして皆様の知的好奇心を満足させた暁には,本書の様々な欠点や間違いを指摘できるようになっているハズであります。もし本書についての苦情やお問い合わせをしたければ,サポートページを通じて私にお知らせ頂くか,SNS,Web上でその勉強の成果を開陳して頂きたいと念願しております。最終的には,その成果をソフトウェアや文書等,「形」なったものを通じて世に発信して頂ければ,望外の幸せであります。

2014年9月11日(木)
遠州茶畑のど真ん中にて
静岡理工科大学 幸谷智紀

緑のルーペ「こいのことば」太田出版

[ Amazon ] ISBN 978-4-7783-2235-9, \1000+TAX

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 本書は太田出版のWebマンガサイト「ぽこぽこ」で連載されていた作品で,ワシは毎回更新されるたびに読んでいたのである。理由は表紙絵を見れば一目瞭然,エロいからである。で,そのエロさに騙されて読み進むにつれて次第に「これは一筋縄にはいかない作品だな」ということが分かってきたのである。後にこの著者の作品群のAmazonレビューで読んでわかったのだが,この「緑のルーペ」という著者,元々そういう「純粋なエロを目指してきた読者に衝撃を与える」タイプのようで,本作も連載途中から感じた疑問を解決することなく,一応の大団円を迎えたように思わせておいて,単行本のために書き下ろされたおまけマンガにおいて「ああやっぱり」という・・・まことに底意地の悪い「オチ」を用意しているのである。まぁこちとらも一応年季の入ったマンガ読みだからして,大方そんなところかと納得はしているが・・・それにしてもまたレビューの難しい漫画にしたもんだよなぁとワシはつくづく感心しているのである。

 難しい漫画が増えた,というのはワシの歳のせいだけではなく,日本の漫画表現が格段に進化していることが一番の理由だろう。漫画に限らず,全世界的にThe Internetを通じて伝播しやすい五感に訴えるメディア表現が恐ろしい勢いで拡散し共有され昇華されたものを更に目の肥えた読者が評価して優れたものをまた拡散する・・・という動きが全世界的に定着している。そのような流れはもはや止めようがなく,どんな独裁政権ですら抗えないものになっている。
 日本の漫画に限ってみても,コンピュータの導入によって作画過程がデジタル化されてカラー表現が進化するとともに,漫画作品の,少なくとも広告媒体としての流通の主流がPIXIVのような作品投稿サイトや,出版各社が展開しているWebマンガサイトに移りつつある。マネタイズ方法としては今だ単行本が主であるとはいえ,物理的な場所を取る書籍の出版点数が増える一方の昨今,読者の持つ物理スペースに限りがある以上,Kindleをはじめとする電子書籍に移行していかざるを得ないであろう。
 そのような時代状況にあって,ただ長いだけの作品の単行本の巻数を増やすだけで読者がどの程度ついてくるのか,かなり疑問だ。少なくとも長編の実績が皆無の新人作家に関しては,まず短編集,そして単行本1冊で収まる物語をコツコツ積み重ねて自身の作品世界を豊潤にしていくことが不可欠ではないか。そしてそれはベテランになっても変わらず,いずれは今の小説界のように物語としての完成度がまず真っ先に求められるようになるとワシは確信しているのである。
 その意味で,本書のようにWeb連載をしつつ,単行本一冊で収まる分量の重層的な漫画作品をコツコツと生み出している作家・緑のルーペの次回作にワシは大いに期待しているのである。

 で,本作なのだが,未読の読者にはとりあえず「エロ漫画」というのが一番分かりやすい端的な説明となる。しかし「読後感は,人によるが,良くない,かも」という奥歯にものの挟まった言い方をせざるを得ないところに本作の一番の特徴があるのだ。

 主人公は三十路少し手前のエロ漫画描き「藤之助」と,出会った時には中学三年生の巨乳美少女「悠里」。二人のエロ睦まじい性生活と,悠里の複雑な家庭環境・友人関係が織り込まれた豊潤な物語だ。それ故に,読む人によっては単なるエロとしても「使える」であろうし,切ない青春の恋物語としても読めるし,寂しい学生生活と寂しい漫画家の「幻想的な」恋物語としても読むことができる。ワシのように卓抜な「エロ表現」にWebから導かれた愚かな読者は,これらの重層的な構造に取り込まれて落ち着いて読めなくなってくるのだ。これは特に「幻想的」な部分が強調されてくる,二人のひなびた温泉街への逃避行において顕著になる。いやそもそも本書の導入部からして,「これはひょっとして藤之助の物語世界か?」というニュアンスもあり,途中からは「寂しい悠里が紡いだ幻想?」という感じもあり,最後の最後では「やっぱり藤之助の・・・?」で「オチ」をつけてしまっている。まぁ乱暴に言うと,筒井康隆の「脱走と追跡のサンバ」のようであり,押井守の「ビューティフル・ドリーマー」のようでもあるのだ。

 考えすぎ?・・・そうかもしれない。今年はシギサワカヤ「バーチャルレッド」全3巻を読んで頭が混乱した影響もあり,「卓抜なエロ表現で編まれた幻想譚」に敏感になっている影響もあるだろう。しかしそれは表現者の描く物語世界が重層化し,それを支えるだけの表現技法が定着しているという証でもある。その高度な技法を育んだワシらを取り巻く電脳社会が,もはや通り一遍の単純なストーリーでは飽き足らない読者を育て,そのような読者を満足させるさらに高度な物語を展開する作家を育成し,高度すぎる表現を更に進化させるループを形成した結果,ワシらを取り巻くこの現実社会に奇妙な浮遊感覚をもたらしたと言える。電脳空間を飛び交う情報にどっぷりつかった生活になればなるほど地から足が浮く,そんな感覚を持つに至る。そう,性欲ですら,今や現実世界との接点とはならず,電脳世界からの情報を消費するだけで解消できてしまうのが現代なのだ。

 エロですら現実へとワシらを繋ぎ止める事ができなくなっているという現代の浮遊感覚。それ故に,「繋ぎ止めてくれ!」と「乞い」願う物語。これを今流に的確に表現した本作は,真に今の時代を象徴する豊潤な物語世界を的確に表現した傑作なのである。

8/28(木) 駿府・雨後曇

 今年の夏,静岡に関してはさほど暑くならず,35度を超える猛暑日は殆どなかったんじゃないのかな。本日はまことに涼しく,東京では夏日にもならなかったようだが,こちらも真夏日に届かず,終日過ごしやすい気温で推移した。良きかな。

 昨日は3月の研究集会論文集とCDが完成したので送付作業で一日潰れる。

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 レターパックライトよりも普通郵便で送った方が60円安いということだったが,CDが入るので梱包材を入れる手間を考えると厚紙で守られている前者の方がいいと判断,24通分送付したのであった。
 本日,小生御大から到着のご報告を頂いたところを見ると,京阪神~関東あたりは翌日到着するみたいだな。速達のつもりは全然なかったのだが,もしかして到着も普通郵便より早いのかしらん?
 三島親父のところにも到着しているはずであるが,はてさてどういうご感想を持ったやら。人間,何がどうなるかは分からんもんだなぁと思った次第。Y博士の件も思い出して,ちょっと感傷的になる。

 本日は初めて投稿する電子媒体に悪戦苦闘。無事submitできたと思いきや,タイトル・キーワード・参考文献の大文字小文字書式についてチェックされて返送されてしまった。本日中に意地でも完了させるべく,さっさと修正して先ほど再度submit,さてどーなりますやら。結果が出たところでarxivに出すかどうか考えることにしよう。何はともあれ,本年1月ぐらいから拘っていたテーマにケリがついたので一安心。やることはやったしね。

 今年の夏休みは全くもってサボりっぱなしで,お盆前後の1週間は自宅に引き籠ってうだうだしっぱなし。本日投稿した論文も8月上旬には完了していたはずのものだったから,半月は遊んでしまったことになる。いくら自宅の環境が快適とはいえ,いかんいかん。この夏はもう一本論文書いてここ2年ほど取り組んでいた件にケリをつけるはずだったのだが,さて9月下旬の講義開始までに書けるかなぁ。まぁチャレンジだけはしてみることにしよう。日本語で研究集会報告集に載っけただけではお話にならんしねぇ。

 さて,来週水曜日は応用数理年会,完全××分類セッションなので自分のノルマが終わったらさっさと引き上げてから,大師匠のところに研究集会論文集を届けて日帰り予定。週末は札幌に帰省,旭山動物園も行きたいのだが無理かしらん? 一週空いたらもう京都行である。ま,朝一講演だから,偉い方々は誰も聞きに来ないだろうが,せいぜい頑張ろうっと。

 ボチボチ神さんが帰ってきそうなのでこの辺で。サボっていたぷちめれも多少は書いておかないとなぁ。