March 27, 2005

好きなBlog

 さて,これから私的Blog論を展開する訳だが,その論がどのような所から影響を受けているのかを明らかにするため,ワシが良くチェックする(ほぼ毎日)サイトを列挙することにする。これを書くためにFireFoxのTab機能を使ってこれらのサイトを並べてみたが,何とまぁ綺麗に自分の好みが反映されていることかと,改めて感動してしまった。なお,使用CGIのVersion Numberは2005年3月26日現在のものを記している。

内田樹の研究室(Movable Type 3.15A利用)
 
 「ためらいの倫理学」「寝ながら学べる構造主義」「先生はえらい」の著者である神戸女学院大学教授のBlog。ちなみに「ためらいの倫理学」は,Blog形式に衣替えする前の著者のWebサイトに掲載した文章が土台となっている。
 門外漢には小難しい文学的タームが多用されるし,ワシとは考えが異なる点も見受けられるが,文章が面白く,何より人生を楽しんでいる様子が伺えるところが良い。50を越えたら人生もBlogもかくありたいものである。

奥村晴彦のWiki(PukiWiki 1.4.4使用)

 「LaTeX2e美文書作成入門」「Javaによるアルゴリズム事典」の著者である三重大学教授の日記。以前は「いろいろ」と題した静的HTMLメモだったが,三重大に移る前にPukiWikiに魅せられたようで,更新を続けていた主要なディレクトリの多くがWikiによるものとなった。
 実は,著者とはPC-VAN時代に一度お会いしたことがある。その時は神奈川で高校の教員をされていたのだが,その後,三重の私大の教員となり,つい最近,また三重大に移られている。昔から温厚かつ冷静な対応を掲示板やWebでもされていて,ワシみたいな瞬間湯沸し器人間からすれば,その人柄は尊敬の一言に尽きる。初期のPC(8bit時代)に親しまれてアルゴリズム(特に圧縮)やTeXに関する優れた著作をモノにしてきており,どちらも版を重ねてロングセラーになっている。現在に至るキャリアアップの主たる土台はこれらの著作の実績にあると思われる。
 自分の専門分野とは被るところが多いので,内田先生よりは奥村先生を手本とすべきなんだろうが,こんなにマメにWebや著作を書く生真面目さはないので,真似しようとしても無理である。まあ,ワシにとっては見果てぬ神様レベルの到達点なので,毎日拝見するだけが関の山である。

武田徹のオンライン日記(teacup AUTO BBS Lv3)

 「「核」論」「「隔離」という病」という,単なる報道に留まらない思想を伝えてくれる重厚な著作を刊行し続けているフリーのジャーナリストによる,掲示板を利用した日記。以前は書き込み自由,但しメールアドレスの明示を求める,というスタンスで運営をしていた。その際に,浅い考えを掲示板で述べたら,真面目で深いコメントを頂き,「へー,見ず知らずのワシにもこんなにちゃんと答えてくれるんだ」と感動した覚えがある。そーゆー対応はワシには無理である。
 専門書のように,門外漢には分からない専門語を書き連ねるのではなく,ねっちりと自分が調べた内容を伝え,それでいて文章は明快に,しかし論旨はそう単純ではない,というスタイルが,ワシにとっては理想である。あれもこれもこーんな事実があって,でもまだまだこのあたりもこのあたりも未知のことなんだよ,という「一言でまとめられない」,それでいてそんなに分厚くない,ワシの専門分野について書いたものができればいいなぁ,と,武田の著作を前に,ぼんやり考えているのである。

いしかわじゅんHome Page(HTML, Topページに直書き)

 近年では「うぇぽん」「薔薇の木に薔薇の花咲く」といったギャグ漫画家としてより,BSマンガ夜話での辛口(「正直」なだけなんだけどな)レギュラーコメンテーターや,「いしかわ式」「漫画の時間」といったエッセイや評論を書いている文筆家としての方が認知度が高いと思われるいしかわじゅんのWebページ。トップページに文章をセンタリングして書き込んでいく,というスタイルは古いと言えば古いが,慣れてしまうと読む方も書く方も楽である。
 自分の気持ちに「正直」で,直裁的な言葉を使って相手の神経に触ってしまうことが多いため,あちこちで感情的な悪口を言われてしまうようだが,第三者としては信頼できる「印象批評の達人」と言える。自分の言ったことに対しては逃げずに腰を据えて対処している所は,常に逃げ腰の体制を取って日々ビクビクしながら過ごしているワシにとっては見習いたい。実践はできそうもないが。
 しかし,著作を出すスピードは物凄く遅い。連載終了後に恐ろしいほどの加筆訂正を行い,本の装丁に関してもあれこれこだわってしまうためらしい。「漫画の時間2」がいつ出るのか,殆どナイアガラ―並みの忍耐力を試されるつつ,Webサイトをチェックしつつ待ち続ける今日この頃である。

唐沢俊一の裏モノ日記(HTML, mixi.jpに書いたものを適宜整理して掲示)

 今ではオタク的なディープネタを得意とするライターとしてより,どっかに買収されかかっているフジテレビの番組「とリビアの泉」のネタ提供者としての方が名高い唐沢俊一氏の日記サイト。現在は,と学会会員が集うmixiの方でやり取りをすることが多いようで,日記の方は気が向いたときにそれをまとめて掲示する,という体裁を取っているようだ。
 氏は現在の地位を得るまではアルバイトしたり,芸能プロを経営したりと,結構苦労人である。今の日記を読むと,ご夫婦+ご母堂揃っての美食(といっても夕方だけだが)の毎日が続いているようであるが,どっちかってぇと,うまいものを食う,というよりは皆で集まってワイワイやる,という方が好きでやっている,という感じがする。一人地道にコツコツとネタ集めを図書館と古本屋を回ってやる,という作業も好きだが,と学会みたいなグループを作って喋り倒すのも同じくらい楽しむ,社会性のあるオタク(ワシの友人にもう一人似たタイプがいる)の走りみたいな人である。
 ワシは唐沢俊一名義の近作よりも,唐沢商会名義の,弟なをき氏との合作漫画が好きで本人の日記を読むようになった。これらの作品は時代が早すぎたようであまり部数が出ずに終わっているようだ。それ故にネタだけが今になって「トリビアの泉」に噴出した,とも言える。苦労人らしく,世間に物申す,というよりは申し上げる姿勢がその思想にも現れているところが,小うるさいけどいざという時には頼りになる先輩と,ワシには思えるのである。

Takachiho Notes(HTML, Topページに直書き)

 ダーティーペアシリーズ,クラッシャージョーシリーズで著名なSF作家高千穂遙氏のWebサイト。ここもトップページに日記を書いているが,いしかわじゅん氏とは違って,きっちり枠に囲んで二日分ずつ掲載している。几帳面で後輩には小うるさい氏の性格がよく出ているページである。産経新聞を盛んにお勧めしているが,連載四コマがライバルA新聞のいしいひさいちと対抗できるレベルになったら考えてもよろしい。
 思想的にはワシとは全然違っているのだが,自転車ダイエットに精を出して地道に健康を維持する姿勢は見習いたい。

 こうして見ると,全てのサイトは本人が執筆した作品を読み,それを通じてチェックするようになったものばかりである。こちとら一応三十路過ぎの中年であるから,曲がりなりにも思想は固まってきており,どれ一つとして全面的に賛成するような意見のあるサイトはないが,どこかに参考にしたいと思わせる主張があることが分かる。ま,当たり前であるが。

 内容もさることながら,字体の大きさも結構重要な要素となっている。Movable Typeの場合,標準のCSSでは日本語環境には小さすぎるFontサイズになってしまう。気にならない人が多いのか,そのまま使っているケースが多く見受けられるのだが,とにかく読みづらくって仕方がない。そーゆーページは段々読まなくなって,残ったのがこれらのサイト,ということになる。案外HTML直編集のサイトが多いのは,ISPお仕着せのBlogシステムを使ってデザインを主どおりに変更する手間を避けるための知恵なのかな,とも感じる。流行は一通りチェックしつつも是々非々で望み,役に立たないと思えばそのまま,役に立つと思えば取り入れることに躊躇しない姿勢も共通している。これは本人の思想の持ち方とも関係しているように思える。

Posted by tkouya at March 27, 2005 7:51 PM