October 20, 2008

「月刊Comicリュウ」2周年に寄せて

[ 公式サイト ]

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 2006年9月19日,徳間書店が青年漫画月刊誌「Comicリュウ」を創刊した。雑誌不況と言われるようになって久しい時代に,しかも月刊誌では採算が取れている雑誌の方が希有,という状況下でよくもまぁ出したモノだと感心させられた。
 で,これ↓が創刊号の表紙である。

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 この時の主な執筆陣を挙げておく。(連)は連載,(シ)はシリーズ連載(不定期も含む),(読)は読み切りの意味。

 (連)「ドリームバスター」宮部みゆき(原作),中平正彦(絵)
 (連)「ルー=ガルー」京極夏彦(原作),樋口彰彦(絵)
 (連)「ゆるユルにゃー!!」小石川ふに
 (読)「HangII」遠藤浩輝
 (読)「不条理日記2006」吾妻ひでお
 (シ)「ちょいあ!」天蓬元帥
 (連)「子はカスガイの甘納豆」伊藤伸平
 (連)「おもいでエマノン」梶尾真治(原作),鶴田謙二(絵)
 (シ)「麗島夢譚」安彦良和
 (連)「MMリトルモーニング(後に「青空にとおく酒浸り」に改称)安永航一郎
 (シ)「ネムルバカ」石黒正数
 (連)「REVIVE!」五十嵐浩一
 (シ)「木造迷宮」アサミ・マート
 (連)「XENON」神崎将臣

 このうち下線が付いているのは,2008年12月号においてもまだ連載が続いている作品である。創刊して後もまだ雑誌のカラーを決めかねている角川書店の「コミックチャージ」に比べると,創刊時における雑誌の性格付けが殆ど揺らいでいないことが分かる。創刊3号目において連載陣の一人・安永航一郎から「COMICリュウ,ついに3号ですね。いよいよ3号雑誌の本領発揮ですよ。」(最終ページ・著者コメント欄より)などと,激励なのか揶揄なのか判然としない文句を投げつけられたにもかかわらず,SFファンタジー色の強い,少年キャプテンとSFアドベンチャーの遺産を受け継いたこの雑誌は,どの程度の販売部数なのかは不明なれど,創刊一年目において中綴形式から平綴形式に移行し,ページ数も370ページから200ページも増加した。

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 この時点で,いわゆる揶揄的な意味での「3号雑誌」は脱却したと見るべきだろう。雑誌単体で採算が取れているかどうかは疑問だが,連載作品のコミックス化が始まったのがこの時期からなので,ボチボチComicリュウ関係の売り上げから飯が食える程度にはなってきた,とワシは想像している。

 連載陣のラインナップから想像するに,読者の主力は恐らく30~40台のオタク世代,もしくはオタク崩れのオヤジどもであろう。最新号にはちみもりおの短編集が付録として付いてきたが,収録された作品は,初出がないので断定は出来ないけれど,1980年代後半のロリコンブームの影響とおぼしき20年以上前のものばかりであった。ま,他にも付録として押井守の短編映画とか銀英伝とかが付いてくるぐらいだから,読者層については推して知るべしである。
 そのようなオヤジ読者の経済力を背景にして勢いを得たのか,Comicリュウは旧キャプテン時代の作品をコミックスとして出版していくと同時に,新人発掘にも力を注ぐ。大野編集長はなるべく新人には執筆の場を与えるべきだという主義らしく,創作同人誌の古株・コミティアから即戦力として引っ張ってきた作家(アサミ・マート,坂木原レムなど)や,同誌が主催し,安彦良和・吾妻ひでおが審査員となっている龍神賞受賞者(いけ,大野ツトム,横尾公敏,平尾アウリ,山坂健)にもシリーズ連載や連載を持たせている。創刊2年目では更に100ページ以上もふくれているから,ちょうどその増加分を新人らで持たせているということになるようだ。

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 この調子ではまだまだComicリュウの快進撃は続きそうである。個人的には永遠の28歳・魔夜峰央のエッセイ漫画と,あさりよしとおの衣鉢(死んでないけど)を受け継いだかのような作風の大野ツトム「ネム×ダン」シリーズが好みなので,雑誌が潰れるまではお付き合いしたいと思っているのである。崩れ中年オタクどもの癒しとして,更に欲を言えば,次の世代のオタクどもを育成するためにも長く続いて欲しい雑誌,それがComicリュウなのである。

 最後にComicリュウにまつわる謎とお願いを提示してこの記事を締めたい。

 それは先にも名前を挙げた,安永航一郎の連載漫画「青空にとおく酒浸り」についてである。この作品,連載開始以来2年以上になろうというのに,そして一度たりとも連載が休みになったことがないというのに,未だコミックスが刊行されていないのである。人気がないとは思えない。ワシはいつもこの傍若無人な無軌道コメディを楽しみに読んでいるし,2008年10月号に掲載された「瀬戸内海の西の方のちょっと信じられないすごい話」という「フィクション」は,「フィクション」とはいえ身につまされながらも大いに笑ったマンガだった。「日本ふるさと沈没」において没にされたという幻の「竹島沈没マンガ」を彷彿とさせる程の大傑作だったのだ。
 そのような傑作マンガなのに,何故この作品だけがコミックスになっていないのか?・・・ま,理由は100%作者にあるんでしょーけどね。同情しますよ,編集部には。
 しかぁあし!,ワシとしては是非とも,Comicリュウ休刊までに安永先生のコミックスを出して頂きたいのだ。伏して編集部のご尽力と,瀬戸内海の西の方におわすマンガ家先生にお願い申し上げる次第である。

Posted by tkouya at October 20, 2008 3:00 AM