映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」

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 原作は読んでいたし,原作者・末井昭の警察との珍妙かつ熾烈なやり取りを描いた南伸坊「さる業界の人々」も読んでいたので,その辺のリアルな時代的描写を期待して見に行った。その辺は期待通りであったが,映画全体のトーンは,予告編の軽い調子とは真逆,冒頭から不穏な空気を漂わせる。明るいバブルのサブカルブームを描きつつも,その立役者の一人である末井昭の通底にある退廃性を最後の最後まで,セリフではなく映像で描き切っている。ワシにとって,良い意味で期待を半分裏切ってくれた傑作であったが,一緒に見に行った神さんは大分映画にあてられたらしく,狂気に満ちた芸術性が嫌いな常識人には向いていない映画であるらしい。

 原作については,カラッとした文章で衝撃的な母親の爆死について述べており,あまり深刻なものを感じさせないものであるが,どうやら監督はそう考えていなかったようで,末井昭の狂気の情念の根本をこの事件の凄惨さに求めている。そう,お気楽なバブル映画を期待していた向きはのっけから浮ぎられて沈鬱な気分にさせられる。論理的な物言いのできない朴訥な父親の存在が,輪をかけて重く苦しい青年前期を形成しており,後年のエロ・サブカル雑誌の編集長として大ヒットをかっ飛ばす原動力となったというのが本映画で監督が示した回答なのであろう。

 近年は暇で寂しい人間が増えたせいか,やたらに倫理性とか左右イデオロギーに基づく道徳を解く向きが多いようだが,世の面白い活動は訳の分からない狂的人間が発する情念に支えられているものである。本作はそのような狂的人間の面白さを表面的に示しつつ,狂気の根本にあるものを観客に刷り込ませる。その象徴は汚れて曇った眼鏡のレンズであり,そのような見えづらい眼鏡で日々を過ごす警察官,キャバクラの店長,そして父親なのだが,それは他ならぬワシら自身でもあり,昨今の小うるさい道徳主義者もそのような曇ったレンズから世を眺めているに過ぎないのだ。末井昭の生き方は透明でうその混じりけのない純粋無垢の狂気に貫かれており,狂気の情念が輩出した面白いコンテンツの出所を同時に見せる本作は,間違いなくフェリーニ的な傑作であると言えるのである。

そもそも「多倍長」ってどういう意味?

 第1章の最初の記述がまとまらんので,ざっと書き出してみる。こんな感じでどうっすかね?>Fさん
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1.1 そもそも「多倍長」ってどういう意味?
 コンピュータ内部におけるデータは全て2進数(binary number),即ち,0もしくは1の並びで表現される「数値」(numerical value)である。データを格納するメモリ(memory)の大きさは制限されているので,全ての数値の長さは有限でなければならない。標準的に使用される数値の形式(format),即ちデータ型(data type)は規定されており,大別して整数(integer)型と実数型(real number)型に分類される。C/C++の標準的な整数型と実数型の変数,即ち,数値を格納するために確保されるメモリ領域を使用するために宣言するデータ型は

  • 整数型
    • 符号付き整数型(signed integer)
      • int型
      • long int型
    • 符号なし整数型(unsigned integer)
      • unsigned int型
      • unsigned long int型
  • 実数型
    • float型
    • double型

となる。現在主流の64bit CPUではint型,unsigned int型,float型が32bit長,long int型,unsigned long int型, double型が64bit長である。これらの標準的なデータ型はCPU内部のハードウェア演算回路を使用し,1命令(instruction)での高速な演算処理(arithmetic)が可能である。
 本書では,これらの標準的なデータ型を複数組み合わせ,64bitより長い数値を扱う計算全般を広義の多倍長(multiple precision)計算と呼ぶことにする。もっとも主題は多倍長の実数型を使用する数値計算(numerical computation)なので,特に断らない限り,double型より長い実数型を扱う数値計算を多倍長計算と呼ぶ。これらの多倍長計算は標準的なfloat型,double型を使用した数値計算に比べて多大な計算時間を要するのが普通である。

 ところで,本書では「多倍長」をかように定義するが,複数のデータ型を混合して計算する場合もmultiple(複数) precision(精度)と呼称しているケースもある。後述するように,現在の計算環境は標準データ型演算速度の高速化が限界に達しており,計算効率を上げるために,例えば,高速なfloat型と比較的低速なdouble型を混合させる方法も盛んである。本書で取り上げる長い実数型でも,精度は様々なものを利用することが前提となっており,その意味では「より長い精度の実数型取り混ぜで使用する数値計算」という意味合いも「多倍長計算」に込められていると解釈してもらっても構わない。
 しかし,これでは「より長い精度桁数」を利用しているかどうかは判然としないこともあるので,そこを強調したい向きには,可変精度(variable precision)計算,任意精度(arbitrary precision)計算という言葉を使用すると良い。無限精度(infinite precision)計算という言葉を使うケースもあったが,無限の精度をコンピュータで扱うことができない以上,過大表現っぽくて著者個人としては好きになれず,使用したことはない。もし見かけた時には本書で扱う多倍長計算と同一のものと考えてよい。

 以下,標準的なデータ型より長い桁数を扱う「多倍長計算」について,その便利さと困難さの実例を見ていくことにする。

3/21 (水・祝) 駿府・氷雨

 ここのところ春らしい温かさだったのだが,昨日の夜から急に寒気が入り込み,本日はやたらに寒い日。ソメイヨシノが開花し始め,本日あたりが最初の花見クラスタ多数出現日になるハズが,雨は降るわ寒いわで殆ど人出なしロクデナシ。折角のごった返していない春の祝日なので,眼鏡屋で3年ぶりに老眼鏡のレンズを新調。今よりだいぶマシにはなるが,老眼と乱視が進んだ分,無理やり補正すると景色がゆがむ。ネトウヨや極左の世の中はこう見えているのかと思うほどである。来週には到着するとのことなので,それまではJINSの安物遠近両用中途半端な矯正眼鏡で凌がねばならぬ。年寄りのメンテナンスは金がかかるのう。

 先週までにSIAM PP 2018の英語プレゼンと情報処理学会の卒研発表三件の付き添いを完了。前者はともかく,後者は自分がやるより気疲れすることを知る。ま,S君,K君,A君,ご苦労様でした。

 

 その合間に,寄席通い2件と,みうらじゅんフェス来訪を果たす。トリの三遊亭白鳥「はらぺこ奇譚」と桃月庵白酒「幾代餅」を目当てに出かけたのだが,いやまぁ二つとも捧腹絶倒の高座で満腹満腹。やっぱり勢いのある中堅どころは素晴らしい。みうらじゅんフェスはあいにく駐車場が満杯で,だいぶ遠くに車を置いての移動が大変であったが,展示物はこれでもかこれでもかというほどのゴミ(?)からお宝油絵やコレクションまで並んでいて(個人的には「はかせたろう」が宜しかった),見ごたえがあった。

 つーことで,出張が一段落して合間の楽しみも堪能したところで,「多倍長数値計算入門(仮)」の原稿執筆と,新年度の学生実験の準備に勤しみたいなと思っている毎日である。・・・いややってますヨホントに!

 風呂入って寝ます。