何故代数学は難しいのか?—「代数系」とは?

 今書いているテキストの一部抜粋。ん~,今週中に上がるかしら?

 前書きにも書いた通り,「代数系」を土台とする現代の代数学は,初学者には取っつきづらい学問である。数学自体,忌避する人達が多い学問であるが,高校までは理系(国際的には認知されていない不思議な学問分類)に在籍し,数学大好きを公言していた学生が,大学入学後に学ぶ代数学となると,途端に戸惑ってしまう,という光景はそこかしこで見られる。
 それは多分,「ルール」が大学以前の高校数学,とりわけ微分積分に代表される解析学のそれと全然異なっている(と感じられる)からであろう。トランプを使って7並べしかやったことのない人が,突然「トランプを使っていろんなゲームができるよ」と言われ,無理矢理ブリッジやポーカーやブラックジャックを教えられるようなものであろう。
 トランプの例えで言うと,代数系を扱う「代数学」とは,トランプのゲームのルールの多様さを知り,その中に共通の法則を学ぶ学問,ということになる。その延長上で,実はトランプを使わなくても,麻雀牌や花札でもゲームはできる,という「メタ(meta)」な視点を得ることができるようになるのである。具体的な計算方法のルールを覚えて積み重ねていく解析学が水平的な視点の学問であるとすれば,代数学は水平視点の知識をベースに,より抽象的な「上から目線」,すなわちメタな方向へと進んでいく学問,ということになる。
 この講義では代数学のベースとなる「代数系」というものだけを抜き出して,その中から親しみやすい題材のみを扱う。トランプというゲームの素材に,ゲームのルールを適用することで新たなゲームが誕生するように,代数系は「集合」という素材をベースに,集合の要素を組み合わせて新たな要素を生成する「演算」というルールを組み合わせて出来上がった「体系(system)」なのである。