12月のクリスマス前に研究集会の会場責任者と相成ったので,個人的なメモ書きとしてこれを記す。Web上にはいくつかこの手のマニュアルの記載があるが,
- 責任者の個人的趣味嗜好
- 研究分野の文化的背景
- その他(参加者との人間関係,地理的問題等)
によってやり方が全然異なってくるので,ご自分が担当される時にはこれらの記事を丸パクリして実行するのではなく,あくまで参考程度にし,上記1~3の事情を踏まえて試行錯誤することをお勧めしたい。
何故ワシは会場責任者となったか?
まず,この研究集会にはここ数年立て続けに参加しており,恩義を感じているからという事情が大きい。その上で,ワシが「専任」教員であり,そこそこ稼ぎがあって経済的余裕があるから引き受けることが「可能」な状態であったことも重要である(この理由は後述)。
過去,数値解析シンポジウムの幹事団の一人として2回手伝ったことがあり,常微分方程式の数値解法関連の研究集会主催を2回引き受けているので,何が必要となるかということは大体理解しており,まぁ年齢的にもこの辺でやっておかないと,この先体力的にも無理になりそうな感があった。
そんな時に,ワシが立地的に最高の場所にあるデカい大学に異動したことで,「やってよ」という研究会主査からの要望があり,「ハイ」と引き受けることに同意したという次第である。
以上をまとめると
- ボランティアワークを厭わない程度に,その研究集会に恩義を感じていること。
- 経済的余裕があること(精神的余裕があることは当たり前の前提)
- 責任者としてなすべきタスクをある程度熟知していること(経験がなくても想像できる程度の参加経験は最低限欲しい)
- 会場立地が研究集会開催に適していること(無理するとロクなことがない)
となる。
タスク一覧
今回はワシはあくまで「会場責任者」であって,研究集会主査ではないので,主査との相談の上で会場確保と懇親会の世話役だけやればいい立場である。従って,集会参加者募集とか予稿集発行のための原稿あつめとかプログラム作成・座長指名は主査のお仕事であり,ワシがやらねばならんのは
- 会場確保と運営に必要な作業諸々
- 懇親会の場所探しと会費回収
- 研究集会当日の会場運営
である。今回は懇親会参加者募りまで主査にやって頂いたが,これはなるべく自分でやった方が良い(後述)。
以下,この2点について詳細を述べる。
会場確保と運営に必要な作業諸々
12月の研究集会だし,大体5月ぐらいに相談して9月ぐらいまでには決まっていればいいやというのが毎年のスケジュールらしいが,楽しみにしている方もいらっしゃるようで,主査には日時の問い合わせが4月段階で来ていたらしく,日時を確定すべく,ワシは着任早々会場押さえに掛かることになる。
今回着任したデカい大学は,デカいだけのことはあって,キャンパスが同一市内に二つある。一つはワシの研究室のある発祥の地,もう一つは新規に土地を確保して設置したメインキャンパスである。前者は古い建物が多く,会場としてふさわしい教室も多数あるが,交通の便がすこぶる悪い。特に今回のように土日開催となると,普段は1時間2~3本あるスクールバスが激減し,土曜日は1時間に1本,日曜日はゼロとなる。路線バスも1時間1本程度あるから,それすらないド田舎よりはよほどマシだが,それよりは新しくてきれいなメインキャンパスの方が,主要幹線のJR駅から徒歩圏であり,会場としては相応しい。
とゆーことで考えるまでもなく,メインキャンパスで会場確保に動いたのだが,せいぜい30名程度の参加者なので,小さめの教室で十分な所,土日はデカい教室とごく小さいゼミ教室しかない建物を使って欲しいという事務側からの要請があり,まぁ狭いよりは閑散としていても広い教室でいいかと200名教室を確保したという次第である。結果として,京都からも大阪からもほど近い主要幹線沿い+阪急路線からも近いということ,主査の人脈的に近畿圏に知己が多いということも手伝って,40名近い参加者に恵まれた。学生募集だけでなく,研究集会開催にも立地の重要性を認識させられた。また,デカいかと思っていた教室も,詰め詰めよりはだいぶマシで,広めの会場を用意しておいて良かったというのが正直な感想である。
とまぁ会場はいいとして,事務的にはせいぜい3か月前からの正式受理ということになるとのことで,会場の抑えはしてもらうとして,それ以外の手続き,特に荷物運びのための駐車スペース使用許可は早めにやっておくことととなった。従って,会場の正式予約前に,駐車許可証だけは発行されてしまうというちぐはぐな事態が展開されることとなった。これも,研究室のあるキャンパスとは別のところで開催することになったことによる余計な手数の一つである。
懇親会の場所探しと会費回収
さて,会場はJR駅からほど近い(つっても徒歩20分は要する)所にあるとはいえ,最大20名程度の客が入れる居酒屋があるような繁華街は駅前にはない。従って,JRか阪急での移動ができるほど近い盛り場を探すことになるが,会場責任者の利便性も考慮させて頂き,チェーン居酒屋の雄である「〇〇の舞」でよろしかろうと神さんに報告したところ,「止めなさい私が探す」との御託が下り,ぐるなびを探しまくってワシの利便性が良く,料理も良さげで飲み放題付き(必須)の小さい店を教唆された。
なんせワシは下戸であり,外食もしない手弁当派であって,店の良し悪しは全く分からない。神のご教授により,予約は直接店に出向いて行い,何ならそこで一食食ってから決めてはどいう有難い指導もあったのだが,飲まない奴が一人で出かけて何を食えというのか,ましてや飲食代は自腹である。ここは一つ,失敗したら神の御宣託のせいであるとの言い訳を用意してファイト一発いきなり本番で使ってやれと開き直って最大25名の可能性もあるかもという,いい加減な予約をしにその店に出向いたのである。雰囲気は悪くないし,常連さんが一人飲みしているところも目撃したので,まぁ大丈夫だろういう感触は得た。
さて問題は参加人数の確定である。予約日三日前には確定人数を教えて欲しいという店からの要望があり,さて主査から伝えられた人数はなんと14名。ありゃま少ないなぁ,仕方ない,実は14名しかいなかったんですすいません~と店に3日前に電話連絡したところ,実は1名多かったという連絡が後から入り,2日前に平謝りで15名お願いしますと詫びを入れて安心して名簿を見たところ16名分ではないか。これはマズいとやっぱり16名ですぅと再度連絡して「ホントに16名ですね最終ですね」と念押されて確約したところ,16名のうち1名がダブって入力されており,ホントは15名だったとの由。もう最終確定と言っちゃったし,うわぁこれはワシが被るしかないと覚悟したのだが,開催当日に同僚の若手の人に参加をお願いして16名分確保できたのは不幸中の幸いであった。
懇親会の責任者が自分でフォーム作って参加者の確認ができるようにしておく必要がある,という教訓を得たのである。
ということで領収書の一部をここに張り付けておく次第である。ところで「災谷」って誰や。確かに「さいわいに谷と書きます」とは言うたけどなぁ。うるさくて聞き取れん状況じゃなかったと思うねんけど,よりによってこういう間違いしてくれるとはこれこそ災難じゃ。

あと,領収書の準備もしておいた方がいい。小規模研究集会では必要のないこともあろうけど,組織によっては経費扱いにできたりするので,こんな感じの簡単なフォームで準備しておくとbetterである。印鑑は不要というのが昨今の流れだが,シャチハタでもいいので,氏名の横に押しておくと説得力が違う。上下両方に押印しておき,どちらか片方を相手側に渡し,もう片方はこちらで保存しておくこと。

研究集会当日の会場運営
卒研生も院生もいないので,一人で無理のない範囲で飲食コーナーのセッティングと,プレゼン設備の準備を行った。前者については,お菓子の持ち寄りが毎回付きものなので,湯沸かしポット二つと,3種のお茶(玄米茶,ほうじ茶,紅茶)のティーバッグ,インスタントコーヒー+ミルク+砂糖+マドラー,ペットボトル2本はセッティングした,結果としてこんな感じになった。

湯沸かしポットのうち一つは研究室で使っているもの,もう一つはワシの自宅の持ち出しである。こういう時のために,卒研室・院生室にポットを常備しておくと流用できてよい。あとこれは好みの問題であるが,最近多いドリップ式のコーヒーは避けたい。ゴミが増えるし,何よりドリップ時間がもったいない。あれは暇な個人が楽しめばいいものであって,ここは「研究」集会であり,喫茶室ではないのである。インスタントが不満なら自分で買ってきて貰えば済む話。以前の集会で,エスプレッソマシンを持ち込んだ迷惑なオヤジがいたが,完全な自己満足で若手が迷惑するのでやめて頂きたい。コーヒーメーカーも業務用でない限りすぐになくなるかドリップ後に長時間の沸かし状態になるだけで,何にしろ邪魔くさいので避けるべし。今なら自販機のない会場の方が珍しいぐらいだし,無理して喫茶コーナーを作らなくてもいいかもしれんが,まぁ年寄り趣味として,温かいコーヒーは飲みたいなぁとは思うのでこうなった次第である。
経費は?との疑問が湧いた向きに声を大にして言いたいのだが,この程度のサーブが自腹でできないようなら研究集会の会場責任者を引き受けるべきではない。菓子類はなるべく参加者に持って帰ってもらうようにしたうえで,余ったティーバッグやコーヒー類は自分のものとして後々まで使い続けるのである。下手に他人からの援助を受けると私服肥やすようで気分が悪い。ティーバッグやコーヒー類は自分への先行投資として,なるべく自腹切って揃えた方が良い。従って薄給の若手の方が責任者の時には,当然しかるべく上司が全額支払ってくれるはずである。ま,ワシが講師・准教授だった時には一銭も支払わずにのうのうと参加だけした高給取り上司がいましたがねぇ,と積年の恨みが噴出するのを抑えきれない昨今なのである。
プレゼン用の準備だが,アナログ的な指し棒の準備がなかったので,同僚の若手の先生にご提供頂いた。ワシはレーザーポインタを提供したが,昨今は大体PowerPointのポインタか,iPadのペンを使うことが多いので,アナログ指し棒は前職場に置いて来てしまったのである。結果的に,何割かの方はアナログ指し棒を使っていたので,やっぱりあったほうがいいかなと思い直すこととなった。
どういうことか,教壇の真ん中にあるデカい教卓には,電源プラグはあってもHDMIの差込口がなく,HDMI以下AV昨日は向かって左側の机に集約されている。演者としては,2枚のスクリーンの真ん中で喋るのがやりやすいので,研究室で使っている無線HDMIを持ち込んで事なきを得た。こういう微妙な使い勝手の悪さをフォローできると誠に気持ちが良い。
そういや,教室の出入り口が引き戸になっていて,ドアストッパーがないつくりになっていた。プレゼン中はいいとしても,インターミッション時に開けっ放しにしたいときには不自由感があったな。椅子を置いて代わりにしたが,出入り口をふさいでしまうので,ドアストッパーを探しておかないといかんと反省した。
おっと,会場案内の看板設置を忘れていた。会場入り口までの道順に会場への案内矢印を,雨にぬれても大丈夫なようにファイリングして貼り付けておき,会場の入り口にも看板とプログラムを張り付けておくと良い。

会場責任者を引き受けることのメリットとデメリット
最後に,こういう研究集会の会場責任者を引き受けることのメリットとデメリットを書いておく。つーか,デメリットは既に書いてきた諸々も手続きのメンドクサさだけであって,それ以上に,メリットの方が大きいような気がする。参加者のメンタリティも分かってくるし,会場責任者の大変さが理解できるようになると,今度は参加者になった時に,責任者の方への感謝の気持ちが湧いてくる。まぁ世話になった分の恩返しのつもりで,一度ぐらいは会場責任者をやった方がいいし,やるべきである。