石村園子「やさしく学べる離散数学」共立出版

[ Amazon ] ISBN 978-4-320-01846-4, \2000
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 今の職場で離散数学の入門クラスを教えていることを共立出版の営業さんにお伝えしたところ,毎年のようにこのテキストを送って頂いている。実際,本書を使って講義を行っている教員も本学にはいるし,掛け値なしにいい本であることはワシも認めるし,実際よく使われているようだし(2007年出版,2009年で5刷になっている),共立さんがプッシュする理由はよく分かるのだが,正直,今のワシとワシの講義の受講生にとって,本書がふさわしい,とは言えないのである。毎年律儀に本書を贈呈してくれている共立さんに申し訳ないので,ここで何故本書をテキストとして採用しないのか,ということを縷々説明しておきたい。
 理由は大きく3つある。最初にそれを提示しておくと
1. ワシの講義の受講生の多くは本書の導入部分以前のところで躓いている。
2. ワシが狙いとする,受講生に学んでほしい「数学的概念」の習得には説明が冷たすぎる
3. ワシにとっては「離散数学」はコンピュータというものを理解し使いこなすための道具にすぎず,目的ではない。本書の記述はコンピュータとの接点が少なすぎる。
となる。
 まず1について。本書に限らず「離散数学(discrete mathematics)」の定義は曖昧模糊としている。微分積分に代表される解析学ではない数学的概念全部じゃねーかというぐらい,対象が曖昧模糊としているのだ。だもんで,ちみっと大規模書店(じゃないと数学書なんて扱ってないのよ昨今は)の数学書コーナーで「離散数学」という単語を含んだ入門書をパラパラめくってみれば,集合・写像・関係ぐらいはほぼ共通,グラフ理論・命題論理・ブール代数や述語論理・代数系・デジタル論理回路まで来ると,だいぶ選択肢が広がって,扱っているものもあれば扱っていないものもある。それ以外となると,もう著者の好き好きで決定されるとしか言えないほどバラエティに富んでいて,画像処理に繋げるものもあれば,Prologなどの言語系に繋げるものもあれば,高度なグラフ理論とそ応用(サーチエンジンとか)に繋げるものもある。まぁそれだけ便利にいろいろな分野で使われている概念であることは分かるのだが,正直,高校数学をしっかり学んできたとは言い難い学生には,ことに高校数学との接点が薄いこの分野の学習は相当の「飛躍」を要求することになる。
 現状,ワシが教えている1年生前期の「情報数学基礎」の内容は,本書の第1章「集合と論理」,第2章「関係と写像」を薄くして半期の2/3以上を費やしている。学生のレベルが低い,と言うのは簡単だが(いいよな定年まで数年を切った年寄り連中は無責任でよぉ!),どうも聞いてみると,高校以前の教育に手抜きが横行しているせいではないかという感もある。できない学生にはできないなりに手をかける(内田樹流にいうなら「おせっかい」する)必要があるのだが,お前さんは簡単な「計算操作」だけやっていればいい,と,早期に仕分けられてしまったような感じがするのだ。だもんで,まず本書に入る前段階の,本来の意味での数学とは理論体系であって,計算操作はその一端にすぎない,というパライムシフトの必要性から解説し,その思考のシフトに必要不可欠だが高校以前の数学で欠落している知識を必要最小限フォローアップして教え込む必要がある。本書はその要素が決定的に欠落していて,いいよなぁ~,千葉工業大学の学生さんはレベルが高くってさ~・・・と嫌みの一つも言いたくなろうというものである(いやお前ん所が低すぎるんだと逆襲されそうだな)。
 これだけ言えば2の指摘はご理解頂けるだろう。ちゃんと読めば本書の解説はとても親切で親しみやすいことがは分かる。このようにきっちり初学者向けの解説書がワシの大学生の頃にあればなぁ~・・・と嘆息しちゃうぐらいなのだが,しかしそれは上記のような学生にとってはまだまだ敷居が高く,こういう「語り口」ではダメだと,少なくともワシはそう思っているのだ。もっと泥臭く,数学的思考というものがアカデミックな土壌に必要な理由を具体例から掘り起こさないと,救い上げは困難を極める。大体,今まで「数学はいいから(やさしいレベルの)計算操作だけやってなさい」と放置されてきた人間に,「理論体系」なんてものの存在を認識させなきゃならないんだぜ? たくさんの知識があるからこそ体系化の必要性が理解できるのであって,いきなり「体系がこれだから覚えろ」って言われても,それは単純作業としてしか認識されてこなかった,狭い意味での数学だけを扱っているのと大差ないじゃないの? ましてや,計算操作より先に敷居の高い「概念理解」を要求する離散数学とあっては,ちと厳しいと言わざるを得ないのである。
 だもんで,ワシが望むとすれば,とぉおっても現実的で身近な事象から語り始めて,その中から「概念」を引っ張り出し,その概念を意味づけする定義とか定理は一番後にくる,いわば高校数学以前の教科書と同じ形態のものなのである(これは某出版社長の入れ知恵なんだけどね)。
 ・・・ってことを現実化するために,現在鋭意自分なりに工夫した(しすぎたかも)「情報数学基礎」のテキストを共著で執筆中なのである。敷居は思いっきり下げて,中学レベルの数学をこなしてきた,漢字かな交じりの日本語が読める我慢強い人間なら少なくとも解説部分は理解できるよう,咀嚼して咀嚼して咀嚼しすぎてゲロになっちゃたような記述がてんこ盛りなので,読者はともかく(ともかくなのかよ),書いた本人はすっきりしちゃっているのだ。気分としては飲み屋でトイレに駆け込んだ後に「さぁ吐いた分飲み直してやるっ!」という感じ。・・・いやまぁ,石村先輩(学部違うけどな)の端正で的を射た解説とは逆方向のねちっこい関西風味のテキストを書いてしまったのであるが,それは本書みたいな「ちゃんとした入門書」があってこその余芸なのである。
 ワシ(ら)のテキストではついでに,どーせねちっこく解説するなら,コンピュータとの絡みを解説したコラムを書いてしまえと,離散数学の知識をコンピュータと絡めて覚えられるような解説も加えた。この辺も,純粋に数学的知識を解説した本書とは別のベクトルを持っている。3で述べたような不満を覚えたことに対する,自分なりの回答のつもりなのである。「何の役に立つの?」という絶対に出てくる疑問にはちゃんと答えておかないのいけない。離散数学の場合は「コンピュータ」という代物の理解には不可欠だから,まだ分かりやすくていいけど,この機会に自分の言葉で書いておきたかった,ということもある。
 だから,本書のように,集合と命題論理から語り起こして代数系からグラフ理論まできちんと(一定以上のスキルのある学生にとっては)分かりやすい解説書が存在することで,ワシ自身は存分に遊ばせてもらい,自分が今対面している学生向けにどう離散数学の基盤的知識を教え込めるかを追求できたとも言える。今の日本の大学の現状から言うと,地方国公立大以上,私大ならMARCH以上のレベルの学生なら,本書はいい入門書と言えるのではないか? 線形代数とか微分積分なら石村先輩のこのシリーズはうちでも結構使えるものなのだが,どーもこの離散数学だけは敷居が高く感じられる。それは学生のレベルもさることながら,最初に述べたように,「離散数学」そのものがとても広い漠然とした数学領域を示す言葉であることも影響しているのかもしれない。

11/20(土) 掛川・?

 ありゃりゃ,もたもたしているうちに日をまたいでしまった。大分寒くなってきて,茶畑には小さな白い花がちらほらする季節になった。町はすっかりクリスマス装飾で彩られつつあり,風物詩となったド派手な一戸建ても増えて・・・くるのかな? 電気代,結構バカにならないから,万年不況の昨今では結構きつい出費だと思うんだが。
 さて,大学院の講義もワシの分は終了し,残すは特別プログラムのみ。それも来週で〆。本日の最後には全員に出来上がり状況を聞いて回っているのだが,今年は特別プログラムOBであらせられるTAのお二人が頑張って質問に答えて回ってくれているので,大分出来が良い。ワシも楽・・・ってPBLだから本来なら「てめぇ一人でがんばれ」と突き放すべきなんだろうが。まー,いいか。
 講義終了後は,IS03の実機が展示されているというららぽーと磐田のノジマ電気へコンドルは飛んでいく。で,初めてワシは動作しているホワイトモデルと対面できたのである。
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 結構見やすいし,フルブラウザだけあって,ワシのページもしっかり読める。フォントがちょっと縦長っぽい以外はPCと同じ感覚で使える。スクロールもスムーズで,これでバッテリーの持ちさえよければ言うことないんだがな。
 しかし,ワシが来週末にこいつをゲットできるかというと微妙な情勢。いの一番に予約を入れた掛川のauショップに電話を入れると,直前まで入手できるかどうか微妙で,入荷数も確定していないから現時点では何とも言えないというお答え。2ちゃんではIS03のスレッドがすげぇ勢いで増殖していて,もうPart87まで行ってしまっている。予約状況報告板では田舎ほど入荷の状況が直前まで不明という現状がまざまざと報告されており・・・う~ん,一応土曜日11/27には入手できるとは思うのだが,どーなるやら。何にしろ,購入できるようになったらその前日には連絡をくれるとのことなので,それを待つしかないなぁ。しかしこの盛り上がり,iPhone以上のような気が。よっぽどハゲオヤジの会社は信用されてないないのだな。結局日本の通信は,NTTとKDDIのインフラの上で勝負する以外になく,ソフトバンクが営業攻勢をかけて引っ掻き回して自由競争を維持しているという構図が続くのであるな。
 さて,明日はHDDがすっ飛んじゃったMacBook(Airじゃない方)をクロネコに渡して,3週間ぶりに掃除機をかけて洗濯して食品買い出しの後は静岡に買い物に行くのである。体重は65kg台をキープしております。この調子で腹筋に磨きをかけつつ,年末まで頑張る所存であります。
 予告通り,久々のぷちめれ,本日午前3時丑三つ時にアップいたします~。ふ~,この調子で年末の満州祭りまでにいろいろ消化しなくっちゃ。あ,某誌用に書いた書評原稿,どうなったかしらん? 冬コミには間に合わせるということだから,ボチボチゲラが上がってきそうな・・・首尾よく言ったらまたここでご報告予定。
 ぷちめれアップしたら寝ます。

11/16(火) 掛川・?

 ん~,暑くなったり寒くなったり,全体的には寒い冬に漸近収束していきそうな気候だが,やっぱり例年よりは暖かいような。お茶の花がちらほら咲きだしているけど,例年よりも早いのは,この気温のせいなのか,今年の猛暑の影響か。
 某原稿,難航しまくって3回ほど書き直し。が,直せば直すほど出来が悪くなるような感じがして,結局,全部頭から書き出して何とかおさめた。ダメな原稿に手を入れてもダメになるだけ。全面的にリニューアルしないとね~。
 で,安心して先方にメールを送ったら,肝心の原稿ファイルを添付し忘れ。ご指摘を受けてあわてて再送して今度こそ安心・・・って,次はゲラチェックなんだけど,それ以前に載らなかったりして(w。ま,最善を尽くしたからいいや。
 Twtterにかまけてしばらくここの更新サボってたので,書くべき話題がだいぶ抜けている。先週分からフォローすると・・・
1.某学会編集委員として初仕事!・・・担当する投稿論文が就任以来半年近く一本もない状態だったのだが,先週初めて担当が付いた。この内容ならあの編集委員の方に回したら?・・・と思ってステータスチェックしたら,あらまぁ,今あちらはブッキング中なのねん。それでこっちに来たんだ~。ま,いいか。何はともあれ,これで大手を振って編集委員会に出られます。仕事ないのに出ててもねぇ。
2.某投稿原稿,あえなくReject・・・こりゃダメかなぁ,でも通ったらいいなぁ,と不安半分,期待半分で投稿したのだが,新規性がないということで却下。評価ポイントがないわけではない,ということは書いてあったが,どこをどうすれば新規性が出てくるのか,参照文献とか明示してくれればいいものを,査読者もサボって全く教唆なし。これじゃこれ以上この学会誌に投稿しても無意味だということで,本年度限りの大会を申し出る。論文原稿は英語に打ち直してどっかに出す予定。
3.Jさん豪さんボーイズトーク@豊橋に参加・・・したのはいいんだけど
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午後3時から始まって,終了したのが午後7時15分過ぎ。途中,休憩が入ったけど,ほぼ4時間,USTに流れた冒頭30分以降は,観客が事前に提出してあったアンケートに書いてある「人生相談」に杉作J太郎先生が答えまくるという,観客にとって過酷なイベントであった。ケツが痛くなったが,あのテンションの持続力はすごい。どんな質問があってどんな回答をしたのかは恐ろしくて書けないけど(それほどじゃないか?),いや,豊橋に集った「ボンクラども」100名近くの人生相談のレベルの高さ(wにも魅了されたイベントであった。
 つーことで,原稿も終わったし,ボツボツ計算しながら復活します。明日,じゃない今日はぷちめれを久々に書こうっと。

11/6(土) 掛川・晴

 いい天気。朝晩は寒いが,日中は結構暖かく,室内だと30℃近くまで上昇。
 土曜日だけど出勤日。講義とかはないので,のんびり仕事させて頂く。MacBook Air,最後まで残っていたe-mobileのセッティングを終了させて,設定は全部終了。つーことで,VMware Player上のCentOS x86_64でチマチマとプログラミングしつつ,昼飯はコメダ珈琲店でカフェオレと共にホットドック。
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 土曜日ということもあるんだろうけど,結構中高年のグループが集まってくっちゃべっているのだなぁ。落ち着いて長居できる喫茶店が少ないってことか?
 ついでい,MacBook AirのExperience Indexを計測してみる。
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 ん~,結構バランスのいい結果が出るのね~。今まで枕頭&モバイル環境だったNetBookより格段にマシ。IONだったらもう少しパフォーマンスは良くなるんだが,逆にCPUのショボさが浮き彫りになる。やっぱりCore 2 Duo以上じゃないとワシ,辛抱できないみたい。
 ボツボツ計算を初めておりまするが,まだ本調子ではない。来月研究会があるんだが,さてどーしよーかなー・・・というところ。来週の結果を見てから判断しようっと。
 つーことで,このBlogは枕頭マシンと化したMacBook Airから書いてます。やっぱ,HDDがない環境っていいよなぁ~。ちょっと気張ってメモリ4GBにした13インチモデルを買っておいて良かった~・・・と感動しっぱなしである。もう最強のWindows 7マシンである。あ,Boot CampでSSDの空き領域を確保する際にも,以前ならMacOS Xと折半するのが精一杯だったのに,今回はWindows 7に100GB近く確保できるし,なによりTouch Padでタッピング操作がMacOS Xと同じようにできるってのが感動。もうAppleはPC用のMacOS Xを重要視していないんだなぁ~。
 当分,Air,Airと騒ぎまくるワシなのであった。少なくとも今年中はあっちこっちに持ち歩いて自慢しまくろう。
 寝ます。

11/3(水・祝) 掛川->神田神保町->秋葉原->掛川

 も~辛抱たまらんっ!!
 とゆーことで,何年かぶりに神田神保町の古本まつりに出かけてきた。肝心の古本は全くgetできなかったが(あ,3冊だけ例外),新刊本をたっぷり仕入れてきたのでよしとする。
 朝は8:31発のこだまで東京へ。ちょうど新幹線の回数券が余ってたし,11/20までの期限付きだったので,ここでいっちょ使ってやれということになったのである。
 富士山,頭のてっぺんがちみっと冠雪しててかわいい。
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・・・などと感動していたら,滑落しちゃった外国人さんがいたんだねぇ。世の中何が起こるかわからん。
 神保町到着は10:30頃。この頃はまだ人出も少なくのんびりしていたのだが・・・。
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 いつものように,書泉ブックマートから順に新刊書店を見て回ってから,救世軍のバザーを眺めて,信山社脇の露店に到着したらもう人だかりがすごい。早めの昼飯を中華バイキングで取ってから,さて本格始動・・・と思ったら,もっと人だかりが増殖していた。無理もない。今日は最終日だし,祝日だ。いつもの神保町なら土日祝日休みの古本屋さんが多いから,ここぞとばかりに客が詰めかける。それに輪をかけるように,最終日投げ売り(かどうかは怪しいが)を決断した所が5割引だのなんだのとお得感を演出するもんだから,なおさら客は白熱ハーバード大講義のように熱狂するのである。年寄りばっかりなのに,本となると目の色変わるんだからなぁ。ワシが20年後にああいう図太くて体力も暇も財力も有り余った年寄りになれればいいのだが。
 つーことで教訓。「古本まつりは期間中の平日午前中に見て回るのがベスト」・・・昔はベスト状態で回るほど暇があったんだけどなぁ。あと20年経たないと無理そうだな。
 その代り,年末の満州祭りに使う予定の資料本もばっちり買えたし,買いそびれていた新刊本も入手できたし,予定外に福沢さん2名行方知れずとなったけど,楽しかった~。やっぱり数か月ごとに思う存分本屋めぐりをしないと,ワシ,息切れするみたいだ。ふ~。
 午後3時ごろに神保町を離脱し,秋葉原へ運動を兼ねて徒歩で移動。ここもごった返すアキバヨドバシを上から下まで眺めて歩く。MacコーナーでiPadの重さにびっくりし,明日届く予定のMacBook Airの重量と使い勝手も確認。やっぱ軽いし,13inchモデルにしておいてよかったと再確認。auコーナーではIS03のモックアップで重量と大きさを確認し,ずしっと重いのにちょっと驚く。まぁ所詮はモックアップだから・・・と思うけど,機能を詰め込んだツケかなぁ・・・胸ポケットに入れた歩くと破けるかも,と今から心配になる。各auショップではIS03の予約を受け付けていたが,そろそろ発売日を確定しても良さそうなモン。大丈夫なんだろうなぁ?
 17:26東京駅発のこだまで帰宅。車中,殿山泰司の生きのいい文章に魅了されっぱなしであった。
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 つーことでこれからベッドにもぐりこんで続きを読みます。あ,課題図書もちゃんと読み進んだよ。思いのほか目からウロコなのね~。メモ取りながらじゃないと忘れそう。