内田樹「態度が悪くてすみません」角川書店

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-04-710032-3, \724

態度が悪くてすみません
内田 樹〔著〕
角川書店 (2006.4)
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 全く,読者をなめるにも程がある。本書は角川Oneテーマ21(このシリーズ名もフザけている)新書の一冊であるにも関わらず,首尾一貫したテーマがない。一応,無理やり「知ること」というテーマは付いているけれど,そんなモン,学者の書いたものならみんな「知ること」について何らかの考察を行っているに決まっているのである。
 ここに収められている文章は,マスメディアに発表されたものが多く,内田ファンでありかつ遅ればせながらのナイアガラーの一員であるワシは,「あ,これ読んだ」というものも結構あった。つまり一言で言えば本書は「内田のエッセイ集」であり,例えば「先生はえらい」のような首尾一貫した書き下ろし作品ではない。内田が書く以上はコミュニケーション論に関する何らかの哲学論考が含まれているのは当然であるが,常識的に言って「Oneテーマ」と言えるかどうか,はなはだ怪しいのである。「知ること」という取ってつけたような説得力のないテーゼを掲げた角川書店の編集者が本書を刊行した本意は,やはり売れ筋の内田本をラインアップに取り込んでおきたい,というものであり,それ以上のものではないと断言せざるを得ないのである。
 でも内田ファンだから買っちゃうし,新幹線車中で完読してしまうのである。まんまと角川の優秀なる編集者の術中に嵌った哀れな一読者としては,私怨をここにぶちまけて憂さを晴らすほかないのであった。哀号。

4/21(金) 掛川->東京->掛川・晴

 鬱,少し晴れる。学生さん相手に怒鳴り散らすと治るらしい。因果な性格である。
 本日は人間ドックを受診。死刑宣告となるか(大げさな)。今朝方,伊豆半島当方沖で少し大きな地震があったようで,東海道新幹線はその近辺で徐行運転するらしい。無事辿り着けるのか?
 では逝って来ます。
 ただいま。Dr.から,検便・尿検査・血液検査の結果を聞いてきた。一言で言うと
 「お前はデブだ。運動しろ。」
という,身も蓋もないものである。うーん,他に問題がないのが救いだが,思いのほか長生きしそうだから,運動だけは続けねばならないようだ。やっぱスポーツクラブ通いかなぁ。でも先立つものがなぁ。
 逝けなかったので寝ます。

4/18(火) 掛川・?

 鬱,続く。八方塞り,という感じ。いや,借金とかじゃなくて,精神的な話。突き詰めれば,寂しい,ということに尽きるのであるが。この話はそのうち,萌えるひとりものにお任せすることになるだろう。
 動画ソフト,何がいいのか良く分からず,試しにとCanopusのUltra Edit2お試し版を使ってみる。これが中々いい。Hardware Encoderなしでもそれなりの速度で,必要最低限の仕事をこなしてくれる。さすがに出力時はかなり待たされるが,これはまぁ仕方がない。
 買っても一万数千円ということなので,早速,販売店で予約。一応,アカデミック版の方をお願いしておいたが,大して価格が違うわけではなし,まあどっちでもよろしい。これで今年のA君の卒研が少しでもはかどって,ワシの講義録のe-Learning化が進めば御の字である。
 某消費者金融会社が強引な取立てと営業を行っていたとかで,金融庁から全支店営業停止の処分を受けた。報道を聞いている限り,非道なことをしでかしていたようだが,さりとて,被害者のうち,どれほどの割合で真に同情すべき人達がいたのか,とも思うのである。認知症のお年寄りが無理やり借金させられたとか,親類や知人の借金の連帯保証人になって,その肩代わりさせられているとか,せいぜいそんなところが本当の被害者と言える人達だろう。単に生活費が足りないとか遊興費につぎ込んでしまったという人間は,やっぱり我慢や知恵が足りないと言わざるを得ない。大体,銀行預金の利率が0.0x%というオーダーなのに,10%以上の利息を簡単に払える訳がないのだ。限度はあるとはいえ,怒鳴られるのも当然じゃないの?
 そーゆー自分の稼ぎの範囲内で人生楽しめない人間の行く末が地獄なのは当然であるが,文学・芸術している人達の多くは地獄行きな人生になっちゃっているんだよなぁ。自己破産しても悟れず,周囲に迷惑を撒き散らしつつ,最期はどぶ川に頭を突っ込んで死んでたりするってのは,傍から見ていると面白いが,本人はどうなんだろう。いや,他人を面白がらせて死ぬのが本望ってんだったら,止めないけどね。
 面白味のない田吾作な人生を歩むために寝ます。

4/17(月) 掛川・鬱

 前期講義開始。なのに鬱。鬱。鬱。字を見ただけで鬱になる鬱。鬱鬱鬱。間違っても鬱々などと略してはならない。鬱が50%バーゲンされてしまう。鬱鬱。こうでなくちゃ。何か書いているうちに楽しくなってきたが,やっぱり鬱。
 鬱なので講義時以外は,ぼーっと過ごす。なのに,SWoPPの申し込みをしてしまったのは何故。職業意識?
 何の因果か,以前ここで取り上げたTrefethenのエッセイが,ワシのページにミラーされてたりする。小生御大の陰謀である。
 陰謀といえば,某翻訳プロジェクトの第一推敲が小生御大から戻される。もう,原型を留めないほどの改変。まだコンパイルもしていないが,うーん,このチェックの方が大変そう。GWまわし,ということでひとつ。
 鬱なので早く寝ます。

竹宮惠子「時を往く馬」フラワーコミックスペシャル

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-09-130396-X, \743

時を往く馬
時を往く馬

posted with 簡単リンクくん at 2006. 4.15
竹宮 恵子
小学館 (2006.3)
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 マンガ読み歴30年を超えるワシだが,純然たるコミックスを買ったつもりで,実は教科書だった,という経験は初めてである。いや,べっくらこいた。
 もちろん竹宮が京都精華大学の教授に就任した,ということは,本書に収められているエッセイマンガ「K子ちゃんの教授生活!?」を掲載誌(フラワーズ)で読み知っていたが,表題作のオムニバス作品「時を往く馬」までが,「教材」であったとは思いもしなかった。うーむさすがベテラン,作品解説できっちり「構成」について語りながらも,ちゃんと自己表現とエンターテインメント性を両立させている。特にこの4話のうち,第1話を最初に掲載誌で読んだ時には,ちゃんと現代の内戦状態を描いており,絵に土俗性が出てきたことを最大限効果的に見せているところに感心させられたのを覚えている。うーむ,それが教材・・・生徒さんはさぞかし自分とのレベル差に愕然とさせられるのではないか。ま,厳しいけど,いい加減,成人した男女を相手にするのであるから,現実って奴を見据えてもらうためには,いい薬になることであろう。
 日本のマンガのレベルを維持するには,大学のような機関で一定数の学生をきっちり教育し輩出する必要があることは教師としてのワシは首肯するしかない。だが,一読者としては,早いとこ教授職なんぞという雑用(それが本業の一部なんだが)はさっさと引退して,面白いけどこんな短い欲求不満が溜まりそうな短い作品集ではなく,もっとまとまった作品を読ませてもらえないだろうか,と切実に思うのである。