北道正幸「プ~ねこ」アフタヌーンKC

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-06-314373-2, \524

プーねこ
プーねこ

posted with 簡単リンクくん at 2006. 3. 1
北道 正幸
講談社 (2005.1)
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 北道正幸は困った漫画家だ。興味のない付録のフィギュアを溜め込みつつ,あの重たい月刊漫画雑誌アフタヌーンをワシが毎月欠かさず購読しているのは何のためだと思っているのか。もちろん,「もっけ」「るくるく」「神戸在住」「G組のG」「そんな奴ァいねぇ!!」「ああっ女神さまっ」「ヨコハマ買い出し紀行」「ラブやん」のためでもあるが,北道が途中で投げ出してしまった長編連載「ぽちょむきん」のためでもあるのである。つまりワシは少なくとも購読目的の1/9を北道の連載放棄によって失ってしまったのである。どうしてくれよう・・・そんな思いを持つ購読目的1/9欠落読者はかなりの数,存在しているものと思われる。何故なら,「ぽちょむきん」連載当時から連載放棄の現在に至るまでちみっとずつ掲載されてきた4コマ猫漫画を収録した本書が,2005年1月の発売以来,9回も増刷されまくっているからである。これは,「キタミチのハイブロウ過ぎるカルト4コマならこの程度じゃねーかぁ」という,購読目的1/9欠落読者を舐め腐った編集者の部数判断ミスという範疇を超えたキタミチの連載再開への期待が,「きゃぁこのねこかわいー」というミーハーパンピーに上積みされた結果といえよう。まったく証拠はないが。
 とゆーことで,キタミチの今後の労働意欲を高めてもらうべく,発売から一年も経っておせーぞバカヤロー的非難を覚悟しつつも,リストラパパの如く打たれ強いワシは札幌の紀伊国屋書店で本書を購入したのである。せめて\524中の印税分ぐらいは性根を入れ変えて働いてもらいたいものである。

北海道新聞取材班「実録・老舗百貨店凋落」講談社文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-06-275330-8, \619

実録・老舗百貨店凋落
北海道新聞取材班〔編〕
講談社 (2006.2)
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 本書は北海道民なら知らぬものはないデパート「丸井今井」が,東京の大手デパート「伊勢丹」の系列に組み込まれていく,その現在進行形のドキュメントを活写した文庫オリジナルの読み物である・・・と思って手に取ったあなた,間違ってはいないが,それはちょっと違う。違うぞ。
 中心市街地の一等地にドンと構えたデパートという業態が苦戦を強いられている現状はワシも日々のニュースから知っていた。実際,ワシの現在の職場から程近い50万都市・浜松市でも,地元に古くから根付いてきた「松菱」が倒産したし,その近くに市の肝いりで建設された「ザザシティ」も苦戦を強いられているようである。浜松に限らず,全国レベルでさほど大きくない地方都市ではどこでもデパート店の苦戦が伝えられている。これは,郊外に広大な駐車場を擁する大規模なショッピングセンターが台頭してきたことと,人口減少社会になって消費自体にさほどの伸びが今後望めないことによること,この二つが大きな要因と言える。つまり,地方都市のような限られた人口の地域においては,流通業は限られたパイを囲い込むチキンレースを生き抜かねばならない状況なのだ。ま,流通業に限らない現象なんだがね。
 札幌市民から「丸井さん」とさん付けで呼ばれ親しまれてきた老舗デパートが直面した危機は二回あった。一度目は創業者一族出身社長が自身の投資失敗による膨大な借金を会社に背負わせたことによる人的なものである。しかし,その後訪れた二度目の危機は前述したような流通業とそれを取り囲む社会的変化によるものである。これは現在進行形であり,今も丸井さんを苦しめ,伊勢丹のような大手資本に頼る割合を増やしつつあるのだ。 本書の記述のうち,この「二度目の危機」における社会的状況の解説の比率がかなり大きい。執筆者が経済部所属の記者だということもあろう。しかし,逆に考えれば丸井さんの現状を正確に伝えるにはそのような記述が不可欠であった,ということでもあるのだ。
 とゆーことで,「血沸き肉踊る迫真のドキュメント」を期待する向きに,本書はあまりお勧めではない。それよりは丸井さんと同じ社会的状況で日々悩んでいるワシみたいな現役中堅労働者の方が,読み進むにつれ自分の首を絞めるようなマゾ的快感が得られるであろう。実際ワシは読了後,身に迫る出口のない状況にいることを痛感させられ,他の誰かにも同じストレスを感じさせてやろうと,本書を持ってお勧めして回りたい思いに駆られているのである。
 あなたも,丸井さんと一緒に苦しみませんか?

筒井康隆「銀齢の果て」新潮社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-10-314528-5, \1500

銀齢の果て
銀齢の果て

posted with 簡単リンクくん at 2006. 2. 6
筒井 康隆著
新潮社 (2006.1)
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 仕事集中期間なので,ロクに本も読まずに頑張っていたのだが,昨日は気の緩みかとうとうダウンしてしまい,布団の中で一日中ゴロゴロしていた。そんな時,枕頭に本書が積まれていたのであるからして,読まずにおられるはずもなく,つい一ページ目,二ページ目・・・と進んでいくうちに,全239ページを全て読了してしまったのであった。あああ,ダメだぁ,高校時代に筒井康隆全集を全て読破した結果,その計算されつくした破滅的文章の虜になってしまい,以来,より過激なものを求めて早20年,その本家本元が久々に著したドタバタ悲喜劇長編小説が出たからには買わずには,読まずにはおられようかってんだいっ。爽快じゃぁ爽快じゃぁわはははははははははは・・・仕事の進展は神棚に上げて拝んでおくことにする。
 止められなかった理由はもう一つあって,章も節も,つまり区切りというものが一切ないのである。発端に和菓子屋のご隠居・九一郎が,友達の老人の家にワルサー(ワシにとっては,るぱーんさんせいのシンボルなのだが)を懐中に忍ばせて訪ねていく場面から最後のクライマックスまで,一行空きや楽譜(作詞は作者,作曲はツツイストにはお馴染みの山下洋輔)を除けば全く休憩なし,緊迫した状況が時間の連続性と同等の濃度で延々と書き連ねられていく。
 多分,本書については,「老人版バトル・ロワイヤル」というまとめ方をされることが殆どであろう。実際その通りではあるのだが,「人間狩り」から「」にたどり着いた,文字通り銀齢を経た天才作家の書く作品であるからして,単純に面白いというだけではなく,一種の「枯れ」を感じさせるまでに昇華している。結末に関しては「甘い」という評もあろうが,老いるということは,つまりこーゆーことが骨身に染みて理解できるとゆーことなのだろう。
 ああ結末を,粗筋を書けないのがじれったいっ。言ってしまいたいっ,我慢できそうにないっ。こんなに沢山の老人が登場するのに,迂闊に紹介すればネタばれになってしまうではないかっ。だれか本書を読了して満足しているツツイストがいたら,是非とも「誰が理想の老人か?」座談会を開きましょうぞ。ちなみにワシはやっぱり津幡教授・・・になりたいけど,多分,三矢掃部のような浅ましい醜態を晒すに違いないのである。

小林信彦「テレビの黄金時代」文春文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-16-725617-7, \638

テレビの黄金時代
小林 信彦著
文芸春秋 (2005.11)
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 今では古典になってしまったが,成長のモデルとしてロジスティック曲線というものがある。グラフにするとこんな感じである。
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 特徴は,成長の速度が三パターンに分類できるところにある。
 勃興期(ネーミングは自己流です為念)の立ち上がりが遅く,急成長期に一気に駆け上り,飽和期には成長がほぼストップする。
 本書で述べられているのは,著者が覗き見た急成長期のテレビ業界である。特に「放送作家」が大量に必要となるバラエティのはしり番組について,日本テレビの立役者であった井原高志を中心に描いている。それが本当に急成長期=黄金時代であったかどうか,ということについては異論もあろうが,TV番組制作のシステムが確立し,「イグアノドンの卵」→「シャボン玉ホリデー」→「11PM」→「ゲバゲバ90分」という,今でも人口に膾炙する名番組の多くが生まれていった時代であり,その後はオリジナリティが払底していったところから見て,概ね著者の見方は正しいと思われる。
 小林信彦の偏見はつとに有名だが,客観データと他書からの引用も豊富な本書の記述自体には見るべきものが多い。飽和しまくって,これから先は現状維持が精一杯という時代を生きねばならないワシらとしては,単に急成長期の立役者達の活動を羨ましがるのではなく,そこからせめて現状維持のための知恵を授かりたいものである。

夢路行「ねこあきない 1巻」秋田書店

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-253-10537-8, \590

ねこあきない 1
夢路 行著
秋田書店 (2006.1)
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 昨年に引き続き,今年も最後は夢路行の,それも採録ではない最新刊で締めくくることが出来,ワシは大変うれしい。
 居職である漫画家,特に女性漫画家は必ず仕事場,もしくは自宅にペットを飼っているという。ことに猫が多いようでだ。で,そーゆー境遇だと,つい猫をわが子のように愛しんでしまうらしい。故に,親バカ化した漫画家は,エッセイのネタに「わが子」を描いてしまいたくなるようで,その結果,女性漫画には「親バカ漫画」なる分野が確固として存在するようになったのである。そーいやコミケにも「ペット」というジャンルが出来て久しいよな。
 親バカ漫画の内容は大概似たり寄ったりであるが,数が多いと傑作も出るもので,古くは大島弓子のサバや,大雪師走のハムスターのように名作を生んでしまったりする。夢路にとっての猫は不可欠の友,というよりは,適度に付き合っている知り合いという感じであるから,擬人化するまでに感情移入されたサバにはなり得ず,故に,本書はハムスター観察日記猫バージョン,という淡々とした日常エッセイになっている。ま,夢路らしくていいやね。暫くは連載が続くようであるから,是非とも傑作にのし上がって行ってほしいものである。
 大晦日までみのもんたとお付き合いしたくない向きには,除夜の鐘を遠くに聞きつつ,まったりと本書を読むのがよろしかろう。
 あ,一度はカバーを取るのをお忘れなく,ね。