平川克美「移行期的混乱 経済成長神話の終わり」筑摩書房

[ Amazon ] iSBN 978-4-480-86404-8, \1600
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 一気通貫・・・にはとても読めなかった。読了までにひと月以上かかっている。読書の時間が取れなかったという事情もあるけど,それはいつものこと。読み始めて「これは面白い!」と思えば,全ての用事をほったらかしても読み終わるまでは本に噛り付くのだが,本書はそーゆー読み方ができなかった。面白いことは面白いのだが,読み進むにつれてこちらの気分が重くなってくるのだ。陰鬱な時代の空気を反映していることは確かだが,本書の書きぶりはそれ以上に厳しい「自省」を強いるのである。以前読んだ釈徹宗の著作もそうだし,江弘毅にもその気があるのだが,どうも内田樹系列の書き手は自己批判を織り込んだ物言いをするので,まことに信頼がおけると同時に,読者にも自然と自省を強いることになる。プロパガンダとは正反対の抑制的な物言いは,高揚感とは逆のベクトルの重苦しい自省をもたらす。本書は,それゆえに現在の日の本の過去・現在・未来を荒っぽくも的確に表現したデッサンであると言える。
 以前にも述べたが,評論家の物言いの癖として,「悲観論テンプレート」なるものがある。未来予測を楽観的に述べると外れた時の批判がきつくなるので,ついつい悲観的な予測を言ってしまうというアレである。本書がその中の一冊かどうかというと,そうとも言えるし,そうでないとも言える。しかし今の日本の置かれた経済的・国際的・国内的状況を鑑みて,高度成長期のような高揚感を伴った楽観論を語れる人間は皆無だ。客観的に見て,積みあがった膨大な国債を前に大丈夫何ともないと一言で切って捨てられるのは亀井静香か小林よしりんぐらいだろうし,人口抑制策が効いているとはいえ,経済力の成長に伴って国家主義も膨れ上がってパンクしそうな中国と隣国として付き合っていかねばらないのも,やりきれない気分にさせられる(あちらもそう思っているかもしれないが)。高齢化は進む一方で労働力は減る一方,ゆとり教育の影響で若い奴らの学習意欲は下がる一方だと喧伝されれば,まぁ明るい未来を思い描く方がバカ扱いされても仕方がない。著者もそのような日本の状況を次のように述べている。

 高度経済成長から相対安定成長期までの戦後の半世紀とは,下層中流の人々が一生懸命働いていればそれなりの恒産ができるようになるまでの時間であった。

 (略)
 90年以降の日本は,都市化,民主化,消費化の頂点に向けてひた走っていたつもりが,前世代の築いてきたものを文明の進展と同じスピードで蕩尽してきたかのようにさえ思えるのである。(P.259)

 荒っぽいけど,正確な現状の「デッサン」であると認めざるを得ない。
 本書で著者が言いたいことはただ一つ,現在の日本の状況はどの文明であれどの国であれ普遍的に起こる不可避な「移行期的混乱」であり,過去の成功経験を繰り返すだけで乗り切れるような代物ではない,ということである。基本的にはエマニュエル・トッドの著述から得た見解をベースに,日本の状況に当てはめてごく控えめに,そして内省的に応用展開を図っている。根拠となる客観データは第1章にまとめられていて,ワシもどこかで見たことがあるようなものばかりだ。重要なのは図表1の日本の経済成長率の推移,そして図表4の日本の人口予測カーブである。これらに基づいて,日本のこれまでの状況とこれからとるべき「態度」を,内省的な書きぶりで,著者の生い立ちとビジネスの経験を踏まえてつづっているのが本書なのである。 だから,読み進むにつれて陰鬱な気分に陥るのも当然なのだ。
 かてて加えて,平川の書きぶりの根本には「原理的な問題」を探索しようというぶれない軸が存在する。これが更に「重苦しさ」を増しているのである。何故ならば・・・

 原理的な問題には,答えというものがない。ただ,永遠に繰り返される問いの変奏があるだけである。それでも,自分たちの生きてきた時間の証として,新たな問いの変奏を付け加えることには意味があると思って作業を続けてきたのである。(P.8)

・・・いやぁ,まことにスカッとしない物言いである。しかし正しい,としか言いようがない。現代の論理を支える哲学の根本原理がトートロジー,すなわち同語反復だけに依存している,ということを文学的表現に「変奏」するとこういう文章になるのだろう。故に,本書は原理的な問題への追及を止めないのだ。追求し続けること自体が「意味を持つ」と言うが如くに。
 本書の主張は,聡明な経済学者や社会学者,評論家が述べていることに共通するもので,それ自体に新味があるというものではないし,それは平川が目指したものではない。原理的な問題を掘り進めていけば,それはそんなに沢山あるものではないし,自然,他の論者と論点の共通要素が多くなるのも当然である。「問題山積国家・日本」という主題に興味を持つ読者なら,本書の主張はすんなり受け取れるだろう。
 しかし本書がたくさんの読者に支持されているのは(既に3刷だそーで,めでたい),主張そのもの以上に,その主張を述べるこの平川の「態度」こそが,共感を得ているからに他ならない。「こういう物言いをする人の言うことなら信用しよう」という読者も多いだろうし,そこから「こういう物言いをする人になりたい」という新たな市井の論者も誕生することだろう。そうなれば,あけすけな物言いの中にブラックユーモアを織り交ぜたりして社会のトランキライザーとして機能する人々が増える筈だ。適切に自己の感情をコントロールして,社会システムのスタビライザーとなる人々がこの日の本に点在することになるのだ。
 「原理的な問題」をどう考えるか,どうしてそれを考えることが大事なのか・・・そんな当たり前のことを訥々と語る「大人の態度」というものを再認識させてくれる本書は,年末の慌ただしい時間を過ごした後に,ヒートアップした頭と体をクールダウンさせるにはぴったりの漢方薬として機能することだろう。

12/11(土) 掛川・?

 ん~,まだ調子が戻らないな~。年末が近づいてあれこれとこまごました用事が入ってくるが,別段それで当方がやらなきゃならないことが滞るほどの量ではない。結局,こちらの調子がぜんぜんよろしくないということなんだが・・・ん~,もちっと週末に余裕があればうれしいなぁ,というのが偽らざる本音。ま,次週水曜日から日曜まで帰省も兼ねて札幌滞在となるので,その間でどーにか予定していたものが進められることを期待しよう。
 しかしすっかり寒くなった。こんだけ平年並みに冷え込んでしまうと,今年の夏の猛暑の記憶も薄れそうなモンだが,よっぽど骨身に染みた人が多かったと見えて,今年の漢字は「暑」だそうな。来年の夏は普通に過ごせればいいなぁ~,と願うばかり。
 注文していたBrent & Zimmermannの本,届いた。
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 GMPのマニュアルには詳細なアルゴリズムの記載があるけど,こっちの方が説明がわかりやすく,アルゴリズムもコンパクトにまとめてあるのでお勧め。ちゃんと目を通したらまたぷちめる予定。待ち行列が溜まっているので,しばしお待ちを。
 SHARPからガラパゴスが出たので,ワシは反抗してKindleをIS03とPCにインストール。Windows 7 x64に入れたらアプリケーションエラーで立ち上がらない症状が現れる(Core 2 Quadでは大丈夫だが,Phenom II X6だとエラーが出た)。どうやらOffice IMEの問題らしいので,一時的にMS IMEに切り替えて凌ぐ。
 なかなかいい・・・と言いたい所だが,図が拡大できないという致命的な欠点があり,漫画のようなものはダメダメ。特にAndroid環境だと小さくて読めない。でも文字は可変サイズ対応なので,ばっちり読める。当分,O’Reillyの本はKIndleで読むことにしよう。
 青少年育成条例改正の件,何だか話が大きくなってきたな・・・どうする民主党?
 明日にでもぷちめれを再開することを決意して,今日はもう寝ます。

12/5(日) 春日井->掛川・晴

 日中は小春日和かと思うほど暖かいが,朝晩は急激に冷え込み,冬になったことを実感させる。掛川の毎冬恒例イルミネーションも,寒くなるほどきれいに見えるから不思議。
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 ・・・IS03の写真,夜は特にあまりきれいに写らないなぁ。
 昨日は職場の忘年会の帰宅後,春日井のワークショップに参加。
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公共の宿ってことらしいが,市が経営している第三セクターかな? 結構きれいな飾り付けがあるし,
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ご飯も値段の割にはまあまあ。お世話役のH先生,ありがとうございました~。ワシの講演はいつものごとく質問と議論の嵐の中で沈没して時間切れのためにおしまいとなった。ま,目的は果たせたからいいや。
 往復はマガリ太郎を駆って東名を往復。土日1000円定額もあとわずかのようだから,今のうちに恩恵を得ておくのである。その余波で,豊川~岡崎近辺の渋滞に行きは巻き込まれて約130kmの道のりなのに2.5時間もかかった。帰りはそれほどではなく,1.5時間で到着したが,やはりこの区間で断続的に小渋滞に巻き込まれて危うく時間ロスするところであった。ま,仕方のないことではある。
 さて,これ書いているうちに日が変わっちゃったので今週も頑張りま~す。

12/3(金) 掛川 -> 舘山寺・曇り時々雨

 生ぬるい日。時々季節外れのスコールのような雨が降ってくる。寒くないのはありがたいが,ようやく季節感が出始めた頃に気温の揺れが激しいのは好ましいことではない・・・っつーても相手は自然現象だしな。文句言っても始まらないが。
 今週は忙しいスケジュール。まず12/1は化学会館で情報処理学会編集委員会と○○な会議(秘密じゃないと思うが一応ね)。たまぁに出た時に限って議論の題材が少なかったりする。まぁそうそうこちらの思うようになるってモンじゃないが。
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 ノーベル賞のお祝いボードがド派手~。さすが化学会館,間借りしているどっかの処理学会とは予算のレベルが違うのであるな。
 で,本日は職場の忘年会・・・の前に,親知らず近辺がひどく傷むので,出発前に行きつけの歯医者に駆け込む。で・・・一本抜歯されたのであった。イテェの何の~・・・。でも根本治療ができたので,忘年会の豪華な飯はおいしく食べられたのであった。良かった良かった。
 明日は春日井で研究会。準備は終わっているのであとは喋るだけだが,取材も兼ねているので結構忙しくなりそう。でも頑張りま~す。

IS03 First Impression

 つーことで,IS03を11/26(金)に掛川のauショップで購入したのである。
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 金曜日はインストールされているデフォルトアプリ(Twitter,Gmail,ブラウザ(Mobile Safari))でいろいろ遊び,土曜日にあれこれアプリケーションをインストールしたり,デスクトップをカスタマイズしていたのだが,まるっきりPCの使い勝手と変わらない(つか,Linux on PCだもんな,Androidって)ので拍子抜けしてしまった。未知のインターフェースだったので期待が大きすぎたってのが正直なところ。ま,既存の技術の上に成立している昨今のICT,例外はないってことだな。
 で,現時点で気が付いたことを書きつけておく。
1.ブラウザがGoogle Chromeではなく”Mobile Safari”となっていること
 3G回線経由でアクセスしたときのログを以下に張り付けておく。

kd111237147254.au-net.ne.jp – – [28/Nov/2010:23:17:48 +0900] “GET / HTTP/1.1” 200 8038 “-” “Mozilla/5.0 (Linux; U; Android 2.1-update1; ja-jp; IS03 Build/SB060) AppleWebKit/530.17 (KHTML, like Gecko) Version/4.0 Mobile Safari/530.17”
kd111237147254.au-net.ne.jp – – [28/Nov/2010:23:18:09 +0900] “GET /weblog/ HTTP/1.1” 200 83341 “http://na-inet.jp/” “Mozilla/5.0 (Linux; U; Android 2.1-update1; ja-jp; IS03 Build/SB060) AppleWebKit/530.17 (KHTML, like Gecko) Version/4.0 Mobile Safari/530.17”

 まぁ,ChromeだってAppleWebkitを使っているから同じっちゃ同じなんだけど,ネーミングでライバルのiPhoneを作っているAppleのブラウザ名を使うとは思わなんだ。コの業界,いろいろ複雑だよねぇ。
2.3G回線でもWiFiでもあまり体感速度が変わらない
 まぁ,Speedtestとかで厳密に速度チェックすると違いが明確になるかもしれないが,フツーにブラウザを使っている限りは動画でも静止画でも表示速度に変化があるようには思えない。回線速度より,本体のCPUの速度がボトルネックになっている感じ。
3.小さい画面でも文字が読みやすい
 モリサワフォントがデフォルトなのだが,思いのほか明瞭に文字が読める。フルブラウザしか対応していないデカ目のページでも少し拡大すれば,この小さい画面でも問題なく文章が読み取れる。ディスプレイの性能が良い(さすがシャープ!)ことも手伝っているのだろう。ともかく,ガラケー捨ててよかったと思えるほどである。
4.Googleの音声入力機能を人前で使うのは恥ずかしい
 電話するより,キーワード入力のために単語を喋ることがこんなに恥ずかしいとは・・・。風の強い日とか,州がざわついている環境だと誤入力が頻発するのが難点だが,そこそこ使える。でも,本体を横にすればQWERTYキーボードが現れるので,こっちで入力した方が早かったりするんだけどね。でも結構ちゃんと単語に変換してくれるのはさすが。
5.Note PC代わりに使える機能が豊富
 頑張れば,CPUやマシンリソースを大量に使わない仕事はIS03でこなせそうである。ワシの場合,少なくともQWERTYキーボードが使えるなら,Twitterは言うに及ばず,少し長めのメールやこのBlog更新ぐらいは難なくできそうだ。・・・もっとも,長時間やっていると肩こりしそうになるが。
6.電車移動中もフル機能が使える(ことが多い)
 e-mobileだと結構切れまくってしまうのだが,IS03だとトンネル以外では大概大丈夫そうだ。しばらくは本も持たずに長距離移動しても,気が向いたら青空文庫眺めたり,クリック猿と化して時間を過ごすことも可能だろう。面白いガジェットである。
 ・・・っつーことで,当分は遊べそうなこのIS03,バッテリ消費も,連続使用しなければ,そんなにすぐなくなることはない。この筐体の大きさでバッテリもガラケー並みの面積なので,まぁ,結構健闘しているんでないかい?

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