11/18(火) 掛川・晴

 今日は,もうすぐcs-pccluster2となる予定のPCの部材を購入して運び入れる作業をして疲れ果てる。さすがにセダンの車体にATXのPC Case8台は無茶であった。それでもトランクにまで詰め込んで無理矢理運んでやった。ざまあみろ(誰に言っている)。
 メーカー名は伏せるが,さすが5800円の廉価ケースだけあって軽い軽い。内部の金属板の薄いこと薄いこと。ベコベコ,ではなく,ペコペコ,なのである。マザーボードを取り付けるための板も取り外しが出来ず,側板を除いて,全ての板がリベットで強引に固定されてしまっている。これは工作がしづらいなあ,と嘆息。
 とはいえ,次年度はPCをばらしてNICを取り付けるなどという乱暴な実験はやらない(させない)ので,これでもいいのである。電源も350Wとまあまあの容量だし,本体ファンも付いており,ケース前部にはUSBポートも出ている。P4マシンに仕立てることを考えれば,ペコペコケースは冷却には向いていると言える。「計算はケースで実行するんじゃない。CPUとGbEで勝負だ!」ってなもんである。
 ぼちぼち価格.comと睨めっこするのも飽きたので,CPU以下の部材一式の相見積もりを取らねば。CPUはMHz単価で最適化して決めることにしようっと。
 そーいや,SciCADE05のWebサイト用サーバが届いたって報告が小生御大から来ていたなあ。Xeon DualのDellのPowerEdgeだそーで,やっぱりお金持ち(違うという声が聞こえてきそうだが無視する)は豪儀である。もっとも,高いメーカマシンはユーザが勝手に手を入れられないという欠点があって,致命的な故障が起きるとどうしようもない。前の職場で今は亡きCompaqのNetwareサーバを大枚はたいて導入したが,ものの数年でおかしくなっちゃったモンな。今なら安いRAID突っ込んで組み立てたマシンの方がよっぽど使い勝手がよい(自分で全てをやるなら,の話)。
 マジメな話,白崎さんがどっかで発言していたけど,サーバにあるファイルのバックアップだけなら,RAIDだけでなく,ネット経由でもミラーすべきであろう。具体的にはrsyncsshかませて自動ミラーをしておけば,「そこそこsecure」にはなる訳である。ロクにメンテ費用も出せないのに,一発買い取りの高いハードに頼るってのは・・・ねぇ。
 現実逃避てがら,つらつらと多倍長計算環境について考えてみる。前の応用数理の年会でT大学のH先生が講演者に「多倍長の初等関数の精度は大丈夫か?」と噛みついていたのと聞いて,やっぱ,まだまだその基盤は危ういよなあと思いを新たにしたのだった。
 で,cygwinに入っているmath.hを見ると,既に
extern double gamma _PARAMS((double));
extern double gamma_r _PARAMS((double, int *));
extern double lgamma _PARAMS((double));
extern double lgamma_r _PARAMS((double, int *));
extern double erf _PARAMS((double));
extern double erfc _PARAMS((double));
extern double y0 _PARAMS((double));
extern double y1 _PARAMS((double));
extern double yn _PARAMS((int, double));
extern double j0 _PARAMS((double));
extern double j1 _PARAMS((double));
extern double jn _PARAMS((int, double));
なんて関数が使えるようになっている。gccは3.2。確か,ANSI C90(だっけか?)で取り入れられたんだっけ。更に
#define M_E 2.7182818284590452354
#define M_LOG2E 1.4426950408889634074
#define M_LOG10E 0.43429448190325182765
#define M_LN2 0.69314718055994530942
#define M_LN10 2.30258509299404568402
#define M_PI 3.14159265358979323846
#define M_TWOPI (M_PI * 2.0)
#define M_PI_2 1.57079632679489661923
#define M_PI_4 0.78539816339744830962
#define M_3PI_4 2.3561944901923448370E0
#define M_SQRTPI 1.77245385090551602792981
#define M_1_PI 0.31830988618379067154
#define M_2_PI 0.63661977236758134308
#define M_2_SQRTPI 1.12837916709551257390
#define M_SQRT2 1.41421356237309504880
#define M_SQRT1_2 0.70710678118654752440
#define M_LN2LO 1.9082149292705877000E-10
#define M_LN2HI 6.9314718036912381649E-1
#define M_SQRT3 1.73205080756887719000
#define M_IVLN10 0.43429448190325182765
/* 1 / log(10) */
#define M_LOG2_E 0.693147180559945309417
#define M_INVLN2 1.4426950408889633870E0
/* 1 / log(2) */
なんて定数も必須だよな。精度が可変になると,Machine epsilonも違ってくるし,NANの範囲も変わってくる。その辺り,きっちり出来ている多倍長ライブラリってそんなにないよな。一応,MPFRはその辺りを少しは意識して作ってあるので,BNCpack/MPIBNCpackはそちらを採用したのだが,まだ足りない。
 もっと現実的なことでは,多倍長の初等(に限らないけど)関数はやたらに遅い。遅いのは無限級数に頼っているせいで,多分,MPPACKでも採用しているように,精度毎に最良近似多項式を導出して使った方がよっぽどマシなのではないか,と思える。わしの大師匠の経験によれば,sin/cos, expあたりは,Maclaurinでもかなり収束が早いので,多倍長ではあまり差が付かないのでは?という意見であったが,桁が増えるとやっぱり最良近似の方がマシになるよーな気がする・・・のだが?
 と,math.hにはこんな所もあった。
#ifdef __FAST_MATH__
#include <machine/fastmath.h>
#endif
 へぇー,と数値計算トリビア。探すとちゃんとmachine/fastmath.hってのがあって,
#define sin(x) fast_sin(x)
#define cos(x) fast_cos(x)
#define tan(x) fast_tan(x)
#define asin(x) fast_asin(x)
なんてのが並んでいる。ここでは特定の(_sysvnecv70_target)マシンだけの設定のようだが,これ,そのまんま多倍長で使えそうじゃん。通常のsinは無限級数に基づくルーチンにしておいて,速い関数が欲しければfast_sinを使う,とかね。ちょっと勉強になりました。
 ということで,寝ます(久々のフレーズ)。

11/17(月) 掛川・?

 朝からずーっと仕事でアセアセしていたせいで,天気全く判らず。出勤時にはちゃんと見ているはずなのだが,今こうして日記を書き出してみると全く覚えていない。マジメに仕事してますってな証拠にはなるが,ちと情けない。
 Producer 2003を使って遠隔講義バックアップ用のストリーミング教材を作ってみた。これがやたらに簡単で,嘘みたい。うーん,さすが天下のM$,伊達に金使って買収しまくっているだけのことはある。
 文章じゃなくてこっちを公開しちゃおうかなあ,とも考えたが,自分の間抜け面を晒すのは公害であると判断し,思いとどまる。そういう意味では情報処理学会論文誌に掲載される著者紹介写真もヒドイものである。大体,学者・研究者ってのは総じてヲタクなんだから,顔なんて見たって仕方がない。沢山のヲタクを見るのは秋葉原とコミケだけで十分である。
 /.を見て気が付いたのだが,今はSC2003の真っ最中なのね。日本からの参加者が帰ってきたら,omni compilerとかがVer.up.されるのかしらん? 楽しみ。

11/15(土) 掛川・雨

 朝方は秋らしく肌寒かったのだが,夜半になるとなま暖かくなってきた。ちと不気味。気温が一定しないせいか風邪も流行っているようである。わしも風邪引いて寝込みたいぞ。いい加減。
 なんだかこのWebサイトを訪れる人が増えているようだ。といっても急激なもんではなく,微増といったところ。でもまあいいことである。今のところ掲示板を設けるつもりはないし,このWeblogのコメント機能も使う予定はない。あくまでわし個人がやりたい放題するのが目的だからな,ここは。それがたまさか他人のお役に立つこともあるなら嬉しいが,あくまでオマケにすぎない。見知らぬ他人とのコミュニケーションは面白いこともあるが,そこに精力を費やすつもりもない。
 つーことでこれからもちまちまとコンテンツは増えていくだろうから,それに比例してアクセス数も増えていくのだろうなあ。どうなることやら。
 高校生向けのDKA法解説文書をしこしこ執筆中。ExcelでDKA法を計算させようという企画なのだが,うまくいくかどーか。コンピュータリテラシが上がったとはいえ,表計算はからきしなんだよなあ。慣れと概念理解が必須のソフトウェアであるから習得に時間がかかるのは止むを得ないが,いったん物にしてしまえばこれほど便利なものはない。書店の理工学書コーナーに「Excelによるなんちゃら」本が氾濫するのも無理からぬことである。うちの大師匠も晩年の森口繁一もはまった口であるが,そーゆーコンピュータに不自由な世代の方々の方が目の色を変えて夢中になるってのは面白い現象である。
 文書が完成しておめもじできるようなったら,これも公開しちゃう予定。大した内容ではないが,枯れ木も山の賑わいになろうて。
 忙中閑ありなので,今年の業績を書き出しておく。むー,ここ数年の落ち込みようから一気に元のペースに戻ってきた。よしよしってなもんであるが,働き盛りとしてはまだまだ物足りない。大体Refereed paperが少なすぎるってばさ。もっとガンガン攻めていかねば。

11/14(金) 掛川->浜松->掛川・晴

 すっきりしない天気なれど,まあ晩秋はこんなもんかいなというところ。寒くなってきたので,この秋初めて灯油を買いにスタンドへ走る。我が家のエアコンであっためようとすると,ブレーカーが落ちてしまうのである。20Aの契約で,Desktop PC2台と炊飯器とエアコンを同時使用は無茶であった。
 先日出かけて喋ってきたLinux Conference 2003の抄録集が発行された。抄録ちゅうても10ページなんだが。何はともあれ,雑誌コードも取ってくれたので,これで晴れてProceeding並に業績登録が出来る。ありがたや。これでまずは論文一本,と。
 ちょっと気になる物件があったので,出かけてみる。親切に応対して貰うものの,先立つものがないので詳細は後日ということになる。なかなか藤田香織さんのように思い切り良くはいかんもんだなあ。こちとら何せ○○がヘタレなモンで,いつ××して△△するやも知れず,という境遇なのである。頑張った分だけ□□に反映される○○ではないところが辛いところ。うーん,どうすべぇ・・・。
 などと悩んでいる暇があったらさっさと査読を済ますべきである>自分 ということで現実逃避はこの辺で。

池田清彦「やぶにらみ科学論」ちくま新書

[ bk1 | Amazon ] ISBN 4-480-06140-1, \700
 敬愛する編集者(教授になっちゃったけど)津野海太郎は,出版社が発行している広報誌を愛読しているそうである。これは薄くて安い,おまけに面白いと三拍子揃った希有な雑誌である。「広報」が目的だから,載っているのは自社の出版物を推薦する短い文章が大半である。幻冬舎のはちと性格が異なっているけどね。
 というわけでわしも広報誌を愛読している(良いと思うことはすぐに真似をする)。といってもわしは津野さんほど勤勉な読者ではないので,購読しているのは筑摩書房と幻冬舎のものだけである。
 本書に収められているエッセイの多くは前者に連載されていたものであるので,わしも途中から気が付いて読み始めた。これが面白い。連載が終わった時にはがっかりしていたのだが,この度それが新書にまとめられて出版された。誠にめでたい。
 何が面白かったのか? わしは一応学者であるので,そのヒネクレ具合が心地よかった。学者たるもの,ある程度はヒネていなければならない。物事を多方面から観察しようと思えば,素直に受け取ることも必要だが,同じ比重でもって底意地悪く勘ぐる必要もあるのだ。その両方があって初めて物事を2π(ラジアンね)回転してねめ回すことができるのである。
 本書のタイトル,「やぶにらみ」とは良く付けたものである。著者はあとがきで述べているように,団塊世代の典型的サヨクである。その割には学生に優しくないのは世の大学教師と同じというところが既にヒネくれている。サヨクってさぁ,もっと弱者に優しくないといけないんじゃなかったっけ?それなのに,職場(山梨大学)で,自分の専門書が3冊,学生さんに売れたという事実を知ってこんなことをのたまうのである(P.130)
 本が数冊売れたぐらいで何でそんなにびっくりしたかと言えば,我が大学の最近の学生さんが,私の本を読むなどということは,まずあり得ないと思っていたからである。
 うーむ,世の大学教師が言いたくても言えないことをよくもまぁ臆面もなく書けるものである。あ,わしはそんなことはチラとも思ってませんからねー(と,予防線は張っておかないとな)。
 しかし,それだけに学生さんだけに留まらず,専門たる生物学への「やぶにらみ」具合は大したもので,トリビアではないけれど,へぇと唸らされる考え方が縦横に展開されている。わしが特に感心したのは「クローン人間作って,何が悪い」(P.121~),「自然保護と原理主義」(P.16~),「外来種撲滅キャンペーンに異議あり」(P.174~)である。タイトルだけでも読みたくなりません? ふーん,そういう考え方もあるのね,と感心すること,請け合います。たぶん,山梨大学でも3冊以上は売れるんじゃないだろうか。・・・いや,たき火の焚き付けにされるとかじゃなくって,ね。