片岡義男「ホームタウン東京」ちくま文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-480-03909-0, \840
 目次はない。前書きもない。見開き2ページにそれぞれ「東京」マイナス「生物」を写したカラー写真が1枚ずつ掲載されていて,その写真を説明してくれるマニュアル代わりの600字程度の文章がセットになっている。それだけだ。最後に,これも長くはない「あとがき」があって,本書全体に通じるニュアンスを伝えてくれている。
 従って,本書は写真メインの文庫本ということになる。しかしその写真は,東京を良く見知ったわしには何の感慨も催さない。恐らく,高度成長以降に生まれた世代なら,わしと同様だろう。東京を明瞭に感じさせる写真は皆無である。ここに示されたものは,現代日本の都市にはごくありふれたものでしかない。
 ではその写真は乾いているのか? 違う。 ではウェットなのか? ベタベタではないが,そこに写っている人工物を介して,東京に生きる人間の湿り気は,少し,感じる。 突き放しているのか? 違う。文章はその写真を正確に述べている。
 述べている? そう,explainではなくてdescribe。よって,本書に文章は不要なのだ。片岡義男は,不要な文を写真に付属して200ページちょっとの文庫本を編んだのである。著者の「ホームタウン」をdescribeするためだけに。
 版元の筑摩書房を「不要不急の出版社」と言ったのは誰だったろうか。本書によってその「名声」はまた不動のものとなり,自社ビルを保持するまでになった。そんな不要不急の出版社を,そしてそこに作品と提供している片岡義男を経済的に成り立たせている,デフレ不況の現代日本に,そしてその中心都市・東京に,これからもよろしくお願い申し上げます。

11/27(木) 掛川・?

 cs-pccluster2の部材発注はボチボチ完了しつつある。CPU, MotherBoard, SATA HDD, DVD-ROM Driveの一括注文となるので,相見積もりが必要な価格になる。A, B, Cという三つのPCパーツショップに見積もりを依頼して比較,ものすごーく差が付いたので,あっさりA社に発注することが決定する。法人掛け売りだと値引きをしてくれたり(わずかだが),ショップに並んでいる価格をそのまま提示するところもある。しかし,どこも営業の対応があまり丁寧でないのは一緒であった。まあ事前に「相見積もりなので,実際に発注するかどうかは不明」と言ってあったのが悪かったのかもしれないが,それよりも先方の人手が全く足りないように見受けられる。発注が決まったA社は,返信FAXを送るのを忘れ,ほぼ一週間待たされることになった。高々数十万の買い物だから,舐められたのかしらん?
 CPUをP4 3C Gから2.8C Gへスペックダウンしたら,予算がちょっと浮いた。部材が届けば組み立て作業に掛かる訳だが,ブチ壊れる可能性もあるので,余裕があるのは精神的に重要である。
 毎年,ボーナス時期には自宅のPCを更新していたが,今年はなし。P4にしたところで,アプリの動作が劇的に良くなる訳でなし,何よりセットアップ作業が面倒で仕方がない。現状のCeleron 1G+RAID 1マシンで十分である。小金があるのでNote PCも考えたが,喫緊に必要な訳ではない。メガネと車検に消えることになりそうである。
 もう11月もおしまい。DKA法は本格的になりつつある。Aberthの原論文も送って頂いたので(N大Bさん,どーもですぅ),あとは計算するだけである(これが大変なのだが)。SACSISの締め切りも間近だし,ガンガン行きましょー。つーことでまた日記の更新がまばらになることをあらかじめ宣言しておく。煮詰まったら,逆に長文が増えるかも。

11/25(火) 掛川・雨後曇

 朝から雨降り。11月下旬としてはかなり暖かいが,明日にはぐっと冷え込む模様。寒暖の差が激しくて,風邪も流行っているようである。しかし,食事が規則正しく,きちんと自炊もしているせいか,今年のわしは全く風邪を引く気配がない。ちゃんとインフルエンザに罹患したお方とも接触しているというのに,何故だ。これでは「バカは風邪を引かない」を身をもって立証しているようなものではないか。
 毎年おなじみとなりつつある,小柳先生のSC2003リポート。マメである。おかげで国内にいながらにして雰囲気がわかるのでありがたい。
 O’ReillyのPthread Programming(和訳)が届き,第一章のみ読む。うーむ判りやすい。判りやすいが,やっぱり欧米人の書いた本は「くどい」。これはつまり「出来うる限り判り易く書いているんだから,それで理解できないようなら読者が悪い」という言い訳のためではないか。
 今,様々な理由から,日本の大学教員のプレゼンテーション技術はどんどんレベルアップしており(一部取り残されている人もいるけど),平均的に見て,わしが学生の頃よりも格段に分かりやすい講義を行っている。これはつまり欧米流に「くどく」なっている訳で,当然,それと平行して「これで判らなければ学生が悪い」という判定を下す動きも進んでいるのである。世の中,複雑よのう。
 SCoreが5.6.1になっていた。Fedora Core 1で動かしたいのだが,ソースからコンパイルし直しかぁ。Kernelもrecompileしなくちゃならないし,面倒よのう(贅沢)。ISO Image中にはomniの新しいコンパイラが入っているのかしらん?まだ単体ではリリースされてないようだけど。

いしいひさいち「ドーナッツブックス いしいひさいち選集37」双葉社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-575-96082-9, \429
 何か今月は漫画ばっかり紹介しているよーな。まあいいか。ここんと専門書ばっかり読んでいるので,自然と頭が息抜きを要求しているのであろう。
 ひさびさのドーナッツブックス新刊。朝日新聞で連載を初めてから刊行がほぼストップしていたとおぼしい。ジャンル別の単行本も良いが,これは忍者もの,戦場シリーズ,小説家広岡先生,ナベツネ,ノンキャリアウーマンとバラエティに富んだ作品が一気に読めてお得。ずーっと愛読していたのだが,このたび再開されて誠に嬉しい。著者のページで発売を知って早速買ってきたという次第。
 どれも四コマの天才いしいひさいちの才能が光っていて面白いが,やっぱり白眉は巻頭の「月子」シリーズだろう。わしの記憶では,藤原センセーを書くようになって,「得体の知れない美人」を使い始めるようになった。鼻面が長く,目がデカイキャラは慣れるまで違和感があったが,この月子シリーズはそれを更に増幅させて,不気味さを醸し出している。
 デビュー以来,もう何年になるのか? いしいの亜流漫画家が,今は亡き文春漫画賞(いしいも取っている)を受賞するぐらいの大ベテランなのに,まだ新境地を開拓している。誠に恐ろしい,天才とはこーゆー人を言うのであるなぁ,と長年の読者をしてため息をつかせる意欲作である。

11/20(木) 掛川・雨

 ぼそぼそと昨今の景気のように雨が降る一日。ちょっと暖かい。
 今日は一気呵成に雑用を片づける日となった。まず査読。昨日の内にupしなければいけなかったのだが,ちょっとパジャマに着替えて布団で横になったらあっという間に朝になってしまったのである。いやぁ,おかしいなぁぁぁ? で,慌てて査読報告書を二通もアップ。ACS論文誌HPCSとの同時投稿なので,こういうことになるのである。しかし論文は一本だ。馬鹿馬鹿しいが,同じ論文にちょっとだけ異なる査読報告をアップすることになる。何とかならんか,この官僚体質。学会も図体がでかくなると小回りが効かなくなるようである。んっとにもう・・・と自身の怠惰をシステムに八つ当たり。
 査読が上がれば気が楽。来年度のシラバスやら関連書類を一気に書き上げて提出する。今の職場に五年目もいれば,今までに書き上げたWord/Excelファイルを引っ張り出せば大抵の用事は事足りる。しかしファイルが増えすぎて,収拾がつかなくなっているのも事実。ちゃんと階層フォルダに整理しているから何とか見つかるものの,あと数年もすれば絶対にワケワカになる。Drag&Drop一発でファイルをDB化してくれるシステムはないものか。Plain Textファイルばかりならgrep allという技も使えようが,わしはもうM$の呪縛に填ってしまっており,今更抜け出すことは出来ないのである。
 ・・・えーっと,大事なことを書き忘れたような気がするが・・・あっ,思い出した。近頃,こーゆーことが多くて困る。あと5年もすれば惚けているやも知れぬ。
 このサイトのアクセスログを見ると,一番参照されているのが「ソフトウェアとしての数値計算」として公開している一連のPDFファイルである。んが,大部分はGoogle様からのお導きによって,たまたまキーワードが引っかかったから訪れたという人ばかりで,その後にちょくちょく参照するといった,Potal的な使われ方はしていないようである。恐らくは,一瞥して「けっ,なんじゃこれば」とすぐに立ち去ってしまう人が殆どと思われる。
 それだけが理由ではないけれど,次年度に向けて,このテキストを改訂することを考えている。・・・あまり期待されては困るが,Sボスのご助言によれば,教科書たるもの,何度も改訂して改訂して,各章が均等な分量になるように,しかもミスは極力減らすようにしなければならないそうである。むろん,わしがそんな助言を真に受けるはずもなく,受けたとしても実行できる訳もない。でも,さすがに講義を重ねてくると,自分としてもこれを土台にしても喋りづらい部分が出てくる。そこだけでも手直しして,自分の講義ノートとして使えるようにしたい。
 つっても,これから年度末に向けてやるべきことが山積していて,果たしてんなことが出来るのかどーか,甚だ怪しい。ま,現段階では気分が向いたら取りかかる,とゆーことにしておこうっと。
 そーいや,A Tutorial of BNCpack & MPIBNCpackもそれなりに眺めて頂けているようである。むしろこっちの方に力を向けた方がいいかなあ,とも思案中。どーせなら,今構築中のCS-PCCLUSTER2の話題も入れたいよなあ。P4のHT機能とPthreadの相性も調べたいし(誰か既にやっているとは思うが)。ああもうやりたいことが多くて困るよな。しかもロクに業績にならないものばっかり。困ったモンである。
 あそうそう,今度「産学連携フォーラム」に出席しますので,よろしく。パネルの前でぼーっとしている筈なので,話し相手募集中です。