10/14(火) 掛川・?

 あー,日が変わってしまった。仕方がないので,火曜日の日記として書くことにする。
 BNCpack & MPIBNCpack Tutorialは70ページを越えたところで小休止。かなり荒っぽいけど,first approximationなんだから,まずは書くだけ書かないと。一日潰した甲斐があり,何はともあれ完成が見えてきた。来月初旬にはupする予定。ふぅ,予定外の仕事だが,今は手持ちのタマを増やして何でも出来るように自分の能力を貯金しておかないといけない。これが終わったら,ScoreOpenMPの勉強が必要になるのである。頑張らnight(誰の真似だ)。
 Tutorial執筆のためにMPI Forumの文書を眺めていたが,来年にはMPI 1.0リリースから10周年なのねん。何かお祝いでもやらないのかしらん?

高安正明「マイコンヒストリー」ソフトマジック

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-86122-001-7, \1500
 まず,1500円も読者からぶんどっておいて,こんだけ誤植(つーかタイプミス)をほったらかしにしている本も珍しい,という事実は指摘しておかねばなるまい。それでも,さすがに本職のライターが書いただけあって文章は読みやすい。しかし流れるように読める筆力があるだけに,タイプミスでその流れが引っかかってしまうのは皮肉である。もし第二刷が出るならば,それを修正した上でお願いしたい。そして私も人に勧めるのはそれを確認してからにしたい。
 前書きで著者が述べているように,本書は客観的な事実に基づくマイコン→パソコンの歴史書ではない。あくまで著者の主観に基づくエッセイであり,かなり重要な事実もすっぽり抜け落ちている,なんてことも多い。DDDはどこ行った?とか,Free UNIX Compatible OS は完全無視か?とか,The Internetの歴史は?等々。しかし,そんなことは著者は百も承知で書いている(よね?)。むしろ,殆ど同時代のユーザとして過ごした私としては,第一章から第五章の記述のあらすじが殆ど自分の記憶と一致していることに驚いている。本書は確かにユーザの主観を記述した歴史書として意味がある。
 しかしそれ故に,学問的には本書はかなり疑義を持って睨まれるべきものである。その時々における社会情勢の記述も,客観的データも,参考文献も皆無である。ラストの第六章の記述にアトムを持ってくるなんてのも,朝日新聞社じゃあるまいし,手垢にまみれた論考である。
 コンピュータってものが,恐ろしく高速な制御機械であり,その枠を外れて使われたことは一度もない,単なるでくの坊である,という事実を,著者は意図的に忘却し,愛着のあるペットとして愛撫している,そんなキライがある。ガクモンとしてはいかがなものかとは思うが,一人の同時代人ユーザとしては,その偏愛のありかたには同情してしまう。中年ヲタクが思い出にふけるネタとしてはよくできた本である。そう思えば,多分,タイプミスにも愛着が持てるかしらん?

内田樹「子どもは判ってくれない」洋泉社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-89691-759-6, \1500
 「ためらいの倫理学」(2000年)以来の3年分のエッセイを集めた単行本。オトナのために,オトナの思考法を「うじうじと」述べた文章が満載されている。といいながら,読んでいて爽快感がわき上がってくる辺り,文才があるんだよね,きっと。ああ羨ましい。
 「ためらいの倫理学」では小田嶋隆の影響が色濃く刻まれていたが,これはすっかりそーいったレトリックからは開放されており,50過ぎのオジさんがじっくりと腰を据えて,複雑な世の中の仕組みを省略することなく複雑なまま語ってくれている。
 著者は小林よしりんが嫌いなようであるが,随分と共通している所があるのは,どっちも現実を見据えようという気構えがあるせいだろう。感情的な行き違いはあれ,世間でそれなりにステータスを築いていけば,自ずと同じ世の中の仕組みを知ることになるから,申し述べる事柄も似通ってくるのである。
 わしが一番感銘を受けたのは,「ハラスメント」を考察した「呪いのコミュニケーション」(P.132~142)と「ヨイショと雅量」(P.154~159)である。特に後者は,「ほめて育てる」ことの重要性を指摘しており,何事に付け,人の足下を掬ってやろうとしている腹黒い教師としては,誠に恐縮する次第である(改めるつもりはないけど)。
 今後ともWebを初めとした様々な媒体で作品を発表され続けるであろう,著者の今後の活躍に期待。いやぁ,小谷野先生に続いて尊敬する書き手と巡り会うことになろうとは思わなかったな,うん。

10/11(土) 掛川・曇

 バファリンPlus様のおかげで,昨日より居座っていたヒドイ偏頭痛がようやっと治まる。わしの母親も頭痛持ちなんだが,こーゆー体質ってのは遺伝するのかしらん? 昨日は講義があったので何とか持ったが,休日ともなると,無理して動く必要がないためにかえって体調が良くない。体を動かす用事があれば,そのうち頭痛は去ってしまうのだが。ズボラ人間は,強制力が常時働いていないと生活が営めないのである。
 フラフラしながらバファリンを買いに薬局へ出かける道すがら,賑やかな御輿とすれ違う。今日は掛川大祭だった。オトナを先導に,子供達が御輿を左右に振りながらゆっくりと進んでいく。それをじーっと眺めている,無精ヒゲを伸ばしたひとり者の中年オヤジの図。そのうち逮捕されるかも知れぬ。
 薬局帰りに,道ばたの野菜売りをしている小さな無人スタンドがあり,枝豆一房を40円で購入する。所々虫が食っている所がよさげで,自宅に戻ってから湯がいて昼飯代わりにむさぼり食う。うまかったっす。
 バファリンPlusのご加護によって復活した後,メンドくせぇ査読リポートをでっち上げ,買い物に行くついでに掛川郵便局に投函。夕食にスパケッチをゆでてむさぼり食い,その勢いで”BNCpack & MPIBNCpack Tutorial”(日本語だけどな)をバリバリと書き始める。プログラムリストを突っ込んだだけなのに40ページを越える。まーったく,プログラムネタで分厚い本を書くってのは,チョロい仕事だよな(誰に言っているんだか)。来月,大学院の講義が終了するまでに仕上げてしまおう。100ページ突破なるか?

10/9(木) 掛川・晴

 なかなか秋晴れと対面できない,と書いたら,本日はピーカン晴れ。でも放射冷却のせいか,かえって寒い。ちょっと暖房を入れる。
 昨日はMPIの教材となる,ごく短いプログラムを完成させる。Send/Resv, Bcast/Gather/Scatter/Reduce/Allgather/Allreduce/Alltoallを使った,IEEE倍精度と多倍長の例である。全部で16本。
 んで思ったんだけど,こーゆー短い例題を使って解説している本ってのは,全然ないのね。個別に教材として先生はいるんだろうけど,本になったものはないんじゃないのかな。欧米にもなさそうである。
 確かに,MPIってのは大規模な計算をするために使われるのが普通なので,小さな例題なんぞ,あっても大して役に立たない。また,プログラミングスキルが高い人しか使わない(使えない,かも)ので,短い例題よりは,いきなり並列Jacobi反復法のプログラムを提示して貰った方が即戦力として使える。・・・でもねぇ,一向に普及しないのはやっぱり適切なTutorialが少ないから,というのも大きいんじゃないでしょうか。敷居が高い,とか,アセンブラのように複雑,ってのは認めるけれど,こうまで一般化してないってのは,まずいんじゃないでしょうか。
 ちょっと検索をかけてみると,例えばこんなのがあって,かなり良くできている。んでも,もっと軽めの,説明もきっちりとした印刷物としての本が出版されていてもいいでしょ。
 しかも多倍長と来たら・・・壊滅状態だもんなあ。日本ではT大学のI先生のグループが先陣切って頑張っていたけれど,科研費の報告書はあれど,ついぞその成果を分かりやすく述べた本が出たという話を聞いたことがない。・・・ああ,いかんいかん,やることやらねば。・・・でも,なんか・・・ムラムラとやりたくなってきたぞい。うーむ・・・どうなることやら。