[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-7542-3220-8, \1600
筒井康隆原作の小説「パプリカ」を忠実に漫画化した傑作が,連載中断後八年を経て,漫画家曰く「ダイジェスト版」なる第2部100ページを追加して,ようやっと一冊にまとまった。雑誌連載を楽しみに立ち読み(ゴメン)していた私が渇望していた作品だけに,ひときわ感慨深い。
原作の持つ馬力がもの凄いので,果たしてどこまで漫画化できるのだろうかと連載時にはハラハラしていたのだが,「おぉ・・・さすが」と唸らされる出来映えであり,それ故に理屈っぽい漫画家・萩原の苦悩は深かったと思われた。んだもんで,原作の咀嚼がうまくいかずに連載続行が困難になった,という趣旨のコメントを残して中断された時は,がっくりすると共に,まあ仕方がないか,と萩原の誠実さを褒め称える感情が同時に沸き起こったのを覚えている。
今回書き下ろされた第2部については,あれこれ言いたいことはあるのだが,それは全て萩原自身が認識しており(それもまた凄いことだが),巻末の「漫画家覚書」を読んで貰えば済むことであるので,ここでは何も言うまい。原作者・筒井との対談のおまけまで楽しめる(ジブリ版「旅のラゴス」は観たいぞ!),ちっと高くて500ページを越える分厚い傑作,見かけたら是非とも入手すべきである。配本能力に劣る弱小出版社の本だから,すぐに店頭から消えてなくなっちまうぜ,きっと。