小林信彦「出会いがしらのハッピー・デイズ」文春文庫

[ Amazon | BK1 ] ISBN 4-16-725614-2, \524
 現在も週刊文春にて連載が続行中のコラム「人生は五十一から」の第三弾,2000年分をまとめて文庫化したものである。
 相変わらず,偏屈江戸っ子下町っ子ジジイぶりが絶好調で,ファンとしては大変嬉しい。特に近年の政治については居ても立ってもいられないらしく,激しく罵倒しまくっている。とはいえ,そこはやっぱり著者の人柄が出てしまうらしく,あえて全てを物語らず,舌足らずにぷつんと打ち切ってしまう。こちらはもう慣れたモンだから,別段どうとも思わないが,所見の読者は「あれあれ?」と戸惑うのではないかな。
 著者から見れば若いワシは,今の小泉政権については基本的に支持しており,昔の首相よりは大分マシという印象を持っている。従って,著者の意見には首をかしげるところが多いのだが,「そういう人もいるのだな」ぐらいにしか感じないのは,口汚く罵れない上品さ故なんだろう。
 エンターテイメントの目配りの良さについては,ちょっと衰えたところもみられないではないが,基本的には変わらない。伊東四朗・Clint Eastwood・USAのEntertainment贔屓はそのままである。昔話が多くなってきたのは,自分が語っておかなければならないという使命感が強くなってきたせいだろうか。個人的はそちらの方が為になるし,面白いのでありがたいのだが。
 久々の一気読み。こういう「含み」の多い文章は,通り一遍のわかりやすさを求める現在の風潮には反しているが,それだけに貴重である。まだまだ頑張って,更なる愚痴が出ることを期待して止まない。