参考文献と基本データ

 前にも書いたが,ワシは別段,ひとりものであることをここで正当化したいわけではない。「一人で萌えていたらそのまま三十路になっちゃった,しゃーねーな,じゃあ一人でこんな感じで生きていくしかないな」ということを恬淡と述べることが「萌えるひとりもの」の目的である。
 一応こちとらデータに基づいた主張をするのが仕事なので,ここでも感情的な事柄以外は,なるべくそのようにしたい。そのための参考文献と基礎データをここで紹介しておくことにする。これがあると,ワシも今後非常に助かるのである。
 まず,本コラムの先達として
 津野海太郎「歩くひとりもの」ちくま文庫, ISBN 4-480-03377-7, \680(1998年)
を筆頭に挙げておかねばなるまい。残念ながら(何がだ),本書が文庫として出た時には既に著者はひとりものを卒業されていたので,OBからの送辞ということになってしまった。自分の立場を強弁せず正当化もしない本書にインスパイアされて,本コラムは成立したのである。タイトルもここから頂いた。ワシの(まともな)主張の大半は本書に述べられていることの焼き直しみたいなもんである。それだけ著者の意見は常識に基づいたまともなものである,と言える。萌えるひとりものがみんな本田透みたいな主張の持ち主だと思われると迷惑この上ないので,お断りしておく次第である。
 津野さんも取り上げている海老坂武の最新エッセイとしては,
 海老坂武「新・シングルライフ」集英社新書, ISBN 4-08-720032-9, \660(2000年)
がある。もう定年を迎えたんじゃないかなぁ,と思うがお元気でしょうか? 「戦うひとりもの」とは津野さんの命名だが,本書にも「独ハラ」に対する怒りの表明が随所に登場する。ただ,溜飲を下げる,というよりは,「強がり」としか取れないところが少し痛い。小谷野敦先生によれば,海老坂先生は「もてる男」なんだそーだが,真偽の程は定かでない。ワシのように世間に対して申し訳ないという気持ちを持ってコソコソと暮らしたい向きには,うーんそこまで言うか,と思うところが多い。それでも「真面目に暮らしなさいよ」というメッセージがあるところは良い。反抗的に生きたいひとりものにはお勧めである。
 ということで,同性の先達の書を挙げたが,女性でも共感するところの多い先輩として
 群ようこ「貧乏贅沢のマリア」角川文庫, ISBN 4-04-171710-8, \438(1996年)
も挙げておこう。群センパイ((c)西原理恵子)の更にセンパイ(バツイチだけど)森茉莉の評伝であるが,今の自分に関する話題をマクラにして本題にすっと入るスタイルは名人芸的にうまいよな,と感心する。読後感がそこはかとなく哀しいところは,「やっぱりひとりものは・・・」となってしまい,海老坂先生からカツが入りそうであるが。本書ばかりでなく,群センパイのエッセイや人物評伝(女性のひとりものが多いのは気のせいか?)は,ひとりものに関する事柄が多く登場するので,大概参考になるだろう。
 小谷野敦先生がお好みの岸本葉子さんのエッセイも挙げようかと思ったが,どーも,この方のライフスタイルは,ワシみたいなスボラ人間とは真反対で,全然参考にならないため,控えておくことにする。几帳面なひとりものの方なら共感することが多いんだろうな。
 人口統計一般については総務省統計局のデータ以外に頼りになる指標はないだろう。まだ今年(2005年)の国勢調査が終わったばかりなので,最新データが揃った段階で面白いことがあればネタにしたい。