小林信彦「テレビの黄金時代」文春文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-16-725617-7, \638

テレビの黄金時代
小林 信彦著
文芸春秋 (2005.11)
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 今では古典になってしまったが,成長のモデルとしてロジスティック曲線というものがある。グラフにするとこんな感じである。
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 特徴は,成長の速度が三パターンに分類できるところにある。
 勃興期(ネーミングは自己流です為念)の立ち上がりが遅く,急成長期に一気に駆け上り,飽和期には成長がほぼストップする。
 本書で述べられているのは,著者が覗き見た急成長期のテレビ業界である。特に「放送作家」が大量に必要となるバラエティのはしり番組について,日本テレビの立役者であった井原高志を中心に描いている。それが本当に急成長期=黄金時代であったかどうか,ということについては異論もあろうが,TV番組制作のシステムが確立し,「イグアノドンの卵」→「シャボン玉ホリデー」→「11PM」→「ゲバゲバ90分」という,今でも人口に膾炙する名番組の多くが生まれていった時代であり,その後はオリジナリティが払底していったところから見て,概ね著者の見方は正しいと思われる。
 小林信彦の偏見はつとに有名だが,客観データと他書からの引用も豊富な本書の記述自体には見るべきものが多い。飽和しまくって,これから先は現状維持が精一杯という時代を生きねばならないワシらとしては,単に急成長期の立役者達の活動を羨ましがるのではなく,そこからせめて現状維持のための知恵を授かりたいものである。