[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-09-389056-0, \1000
ここんとこ,ゴー宣ことゴーマニズム宣言とはご無沙汰である。ここでも何度か書いてきたが,主張がマンネリ化したため,エンターテインメントとしての面白みが薄れてきたからである。同じことは,愛読していた藤原正彦の著作にも言える。「国家の品格」がベストセラーに入ったのは,その筆力と主張の見事さ(正しさ,ではないよ為念)から当然と言えるが,ワシは一見して購読するのを止めてしまった。「情緒」と「国語力」の主張のないエッセイなら喜んで読んだであろうが,それの連呼ばかりでは「あーあー分かった分かった」と言いたくもなるのである。藤原といい,小林といい,どうして保守論者の主張はこうも同語反復が多いのであろうか・・・おっと,これはサヨクにも言えるね。兎も角,己の思想信条を声高に連呼し続けられれば,どうしたって飽きられてしまうのである。もう勘弁してくれと言いたくもなるのである。
かようにして,ワシとよしりんは倦怠期の夫婦関係の如く疎遠になっていたのであるが,ゴー宣掲載誌をチラと眺める習慣だけは続いていたのだ。そんな折である。よしりんが目の病気になり,ゴー宣が休載となったのだ。
ありゃぁ,こりゃ大変だ。復帰できるかな?・・・と心配していたのは杞憂も杞憂。転んでもただでは起きないエネルギーの持ち主であるからして,重度の白内障に罹って入院し手術,そして退院して短期休養,という一連の事件を作品にしてしまったのである。それも書き下ろし160ページ! ホントに病み上がりか?というぐらい,充実したテンションの高い作品に仕上がっており,しかも殆ど「いつものアレ」的主張がない。これはうれしい,国家主義者ではない,純粋なエンターテナーよしりんを楽しめるではないか。ワシが本書を購入してから小一時間で一気に読了してしまったのも無理はないのである。
「えー,小林よしのりぃ~?右翼だろ~?」という向きにもお勧めの,無難かつ楽しめるエッセイ漫画本である。損はしない。どーせ年寄りになればみんな白内障になるんだから,予行想定演習のつもりで読んでおくと,いざ目が白くなっても,「白内障の手術?軽い軽い,わっはっは」と笑い飛ばせること請け合いである。