[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-09-130396-X, \743
マンガ読み歴30年を超えるワシだが,純然たるコミックスを買ったつもりで,実は教科書だった,という経験は初めてである。いや,べっくらこいた。
もちろん竹宮が京都精華大学の教授に就任した,ということは,本書に収められているエッセイマンガ「K子ちゃんの教授生活!?」を掲載誌(フラワーズ)で読み知っていたが,表題作のオムニバス作品「時を往く馬」までが,「教材」であったとは思いもしなかった。うーむさすがベテラン,作品解説できっちり「構成」について語りながらも,ちゃんと自己表現とエンターテインメント性を両立させている。特にこの4話のうち,第1話を最初に掲載誌で読んだ時には,ちゃんと現代の内戦状態を描いており,絵に土俗性が出てきたことを最大限効果的に見せているところに感心させられたのを覚えている。うーむ,それが教材・・・生徒さんはさぞかし自分とのレベル差に愕然とさせられるのではないか。ま,厳しいけど,いい加減,成人した男女を相手にするのであるから,現実って奴を見据えてもらうためには,いい薬になることであろう。
日本のマンガのレベルを維持するには,大学のような機関で一定数の学生をきっちり教育し輩出する必要があることは教師としてのワシは首肯するしかない。だが,一読者としては,早いとこ教授職なんぞという雑用(それが本業の一部なんだが)はさっさと引退して,面白いけどこんな短い欲求不満が溜まりそうな短い作品集ではなく,もっとまとまった作品を読ませてもらえないだろうか,と切実に思うのである。