二階堂正宏「のりこ」新潮社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-10-3015520-7, \950

のりこ
のりこ

posted with 簡単リンクくん at 2006. 8.13
二階堂 正宏著
新潮社 (2006.6)
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 前作の極楽町一丁目シリーズで主役を張っていた,のりこさんと旦那さんの母親との闘争劇を更に「過激に」した,書き下ろし単行本・・・なのだが,正直,不満である。いや,のりこさんは前作より色気が増しているし,意味もなく胸をはだけたり全裸になったり,いわゆる読者サービスはたっぷりあるし,少なくとも前作よりは面白い。しかし,基本的にはナンセンス漫画であって,その枠をぶち壊すほどの過激さは感じられない。まあ,旧世代の大人漫画家にそこまで期待する方が無理ということは分かっているが,本書中で過激さを自己宣伝しまくっているために,その割には大したことないな,と思ってしまうのである。
 のりこさんがどれだけ残虐にお舅さんをいたぶろうと,最後は生き返ってしまうのでは,どうやってもナンセンスの枠にとどまってしまうに決まっている。大体,介護すべき親を殺してしまうなんていうレベルの過激さだったら,とっくに山科けいすけが漫画にしている。一番の問題は,この程度のナンセンス漫画をすぐに没にするマスコミの脆弱さにあり,それ故に著者や編集者が作品のレベルを過大評価してしまうのだろう。
 そんな程度の漫画であるから,現在老人介護の真っ最中でストレスを溜めまくっている方も,介護される側の方も,安心して読んで頂ける筈である。え? 実際に事件が起きたらどうするのかって? 大丈夫,介護する側もされる側も,望んでいるのは合法的な安らかな死であって,この作品にあるような舅殺しなんて面倒な犯罪は所詮,ナンセンスに過ぎないのだ。つまり,当事者にとっては2重に意味でナンセンスな,安全安心な作品なのである。
 本書で物足りない方には,ヘルプマン!をお勧めする次第である。