生涯家計簿をつけてみた

 20年支払いの住宅ローンを組んでから早一年,自分の今までとこれからの収入&支出を整理すべく,Excelで生涯家計簿をつけてみた。40年生きてきた経験に基づき,これから毎月あるはずの収入&支出や,一時的にドカンとかかってくる大規模支出(>10万)を皮算用的に組み入れて,ワシが60歳の定年(65歳の間違いじゃないよ)を迎えるまでどの程度の資産形成ができるかを勘定してみたのである。
 結果。
 ふー,何とか年金が出るまでの5年間は食べていける程度にはなることが判明した。もちろん,今のまま健康で持病もなく親もつつがなく別居して生活し,ワシは永遠に一人で生活するという前提に立てば,の話。どーせこのとーりなんていくはずがないので,まあ思いっきり楽天的な仮定に立脚していればとりあえず人間らしい(ひとりもの生活が人間らしいと言えるならば,だが)文化的な生活が送れるよーだ,というだけである。
 積算根拠となる月々の細かい支出明細をまとめてみたら,まぁこれが質素なこと。もちろん「貧窮シフト」と銘打って食費を絞り込んだりしたから,そのせいでもあるんだけど,ホント,ワシの生活ってば,手取り年収240万で十分やっていける程度のものだったのである。これに住宅ローンその他の遊興費が加わっても+xx万程度。してみれば,ワシの生活水準って,初任給以来ほとんど上がっていないのである。修士出てから入社(入団)したので,当時の手取り分は大体20万円ほどだったのだ。いやぁ~,社会人の生活態度って,ホント,初任給で決まるんじゃないかというぐらい変化なし。困ったモンだっつーか,四十路になっても成長しない奴と言うべきか。もうちっと風俗とか酒とか博打とかにのめり込んでも良かったものを,ぜんっぜん興味が沸かないまま,十数年を過ごしてしまったのである。
 唯一,読書習慣だけは変わらず,以前よりずっと高価な単行本や専門書(洋書ばっか)をバンバン買うようになっている。よって確実に増えたのは本代なのだが,その分,人付き合いを全くしなくなってしまったので,酒代は全然かからない。もともと家で飲む習慣がないし,ワシの一家は正統なモンゴリアンの血を受け継いでいる下戸なので,一人ではアルコールを摂取しようという気が全く起こらないのである。だもんで,飲酒はゼミコンパの年3回程度+α。酒飲まないと,ホント,金かかりません。つーことで,ワシは飲む分を読む方に回すようになった,誠に辛気くさい中年親父なのであります。
 おまけにネットの接続料の安くなったこと。最近はボチボチ高止まりしそうだけど,それでも世界水準からみて,日本の光ファイバー接続料金は段違いに安い。すべてはテカリハゲアントレプレナー親父の無茶苦茶な営業努力のせいであろうが,読書中毒のヒッキー中年男にとって,無尽蔵とも言える活字量がなだれ込んでくるネットの情報を読むだけで十分至福の時間が過ごせるというものである。これでますますリアルなおつきあいが絶えてしまった。いいんだか悪いんだか・・・っていいわなきゃないよな。ま,それでも月々7000円の元は取っているものと確信しております。これなかったら,もう少し人間らしい生活を送れたろうに(言い訳)。
 ということで,つらつらと計算しながら過ごした日曜であった。どーも,こういう計算でもしていないと生きるモチベーションが沸きづらいのがひとりものの厄介なところ。ご家庭のおとーさんにでもなっていれば,自分よか子供や奥さんや奥さんのご両親やらのことも心配せねばならず,とてものことこんなノンビリ計算なんぞしていられず,ガシガシと仕事に邁進されるんでしょうけどねぇ。
 自分の手持ち財産だけが頼りとなり,一人通帳を抱え込む独居老人・・・ってのは「寂しい老人」のプロトタイプなんだろうが,ワシとしては,抱え込むだけの通帳を作っていきたいというのが,偽らざる心境なのでございます。寂しがるのはその後でイーじゃん。
 衣食足りて 寂しさを知る老人となりたい 今日この頃なのでございます。つーか,これって,今の日の本に住む若い奴,共通の念願なんだよなぁ。せいぜい税金支払える奴は支払って,公共の福祉を支えてきたいものである。

牧野貴樹「π 円周率1,000,000桁表」暗黒通信団

[ Amazon ] ISBN 978-4-87310-002-9, \341
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 多倍長計算に手を染めるようになって,10年経つ。一応査読論文も何本か書いてきたから,ボチボチこの分野に関しては言いたいことを言っても罰は当たらんだろうと思うので,ここらで本音をぶちまけておく。
 そもそもワシがGMPMPFRを使ってライブラリを作ってシコシコ計算してきたのは,たーくさんの数字の羅列を眺めるのが好きだからである。まあ元は誤差誤差した計算を解析するのに飽きて,「だーっと桁をたくさん取って計算すりゃいいんだろ!」とヤケクソのように始めたのがきっかけなのであるが,元々数字フェチの気があったのが運の尽きで,以来,100桁,1000桁の数値データをみなければ満足しない体となり,中毒の様相を呈するようになってしまったのである。もちろん,「たくさん数字が並んでると楽しいでしょ?」では論文にならんので,それなりに実用的な意義のある悪条件問題やら多倍長計算の分散・並列化やらを対象としてもっともらしい理屈をつけてまとめるのであるけど,根源的には「数字の羅列が好き」という以上の動機が見あたらないのだ。
 だから,本書のような,ホントにπを百万桁並べただけの潔い本は,もうそれこそベッドに引きずり込んでホンホン(by 唐沢なをき)したいぐらい大好きなのである。もちろん数字の一個一個を丹念に読むなんてことはしない。適当にぱらぱらめくって一ページあたり一万桁並んでいる数字を眺めて悦に入るのである。これで一時間はイケる。
 ・・・ええ,変態だよヘンタイッ! いいじゃないか,誰にも迷惑かけてないんだからさ,ほっといてちょうだい!,とワシは声を大にして言いたいのである。
 変態の告白だけで終わっちゃうと,ワシの学者人生も共に終わっちゃいそうだから,もう少し真面目な話をしておく。
 そもそもπを含む実数は,無限桁小数でなければ正確な表現ができないようになっている。有限桁小数(=有理数)による数列の極限値は有限桁に収まらないのが普通なので,極限計算を土台とする微分積分を行うためにはどうしても無限桁小数を扱わねばならない。とはいえ,それは理論上のことであって,実際に扱う数値が無限桁ではどんなスーパーコンピュータを持ってしてもπの値の出力だって終了しやしない。だから実用的には適当な桁数で打ち切って(丸めと呼ぶ),単精度(約7桁),倍精度(約15強桁)とかでコンピュータでは計算することになっている。ここに理論との齟齬(=誤差)が生まれる。誤差をどーにかする方法は難しいのと簡単なのがあるが,とりあえず桁数をどんどん増やして計算しておけばそんなにおかしな結果にはならないんじゃないの~,とバカの一つ覚え的解決をするのが多倍長計算という奴である。頭の良い方策は,誤差の影響が少ない計算方法を問題ごとに考えるという奴であるが,これは数学的かつ数値計算的素養が必須なので,誰にでもできるというものではないし,やっぱり有限桁計算である以上,限界はあるのだ。
 とゆーことで多倍長計算をしておけば誤差の影響は減るのでめでたしめでたし・・・とはいかない。すぐに分かることだが,10桁の小数同士のかけ算をやるのと,100桁小数同士のかけ算をやるのとでは計算の手間(=計算量)がモンのすごく違ってくる。つまり,桁数が大きくなると計算量が増え,それに比例して計算時間も増えてしまう。なるべく大きな桁数でも計算時間を余り増やさないようなアルゴリズムを考えると・・・やっぱりここでも頭を使う必要が出てしまうのだ。
 ワシはバカなので,頭を使うより定評のある多倍長計算ライブラリ(GMP,MPFRはこれの一種)を使うだけという安易な方法を取ったけど,ここんとこを自力で解決しようとすると,アルゴリズムとコンピュータの内部構造に通じる必要が出て,相当の馬力を必要とする仕事になる。手計算をそのままなぞる計算方法では桁が増えると非効率になるので,計算量を減らす複雑なアルゴリズム(たとえばGMPのマニュアル参照)を使い,しかもそれを高速に実行できるようチューニングを行うという作業になるからだ。
 円周率πの計算も事情は一緒で,桁数を長くすればするほど計算時間は格段に増える。ちなみに世界記録を作った研究室出身の方は,計算時間を極力抑えるアルゴリズムを極めて,その方面では世界的に有名なライブラリを作り上げている。純粋数学の方々にはπの計算なんて,と軽視する雰囲気もあったようだが,コンピュータ屋にとってはかなりいい仕事(の目標)を与えたと言えるのである。もっともその後,BBP公式なんて理論的にもおもしろい結果が出たりするから,みんなが面白がって群がっている研究テーマからはいろんなものが発生するものだと感心する。
 最近はパソコンも高速になったので,本書に載っている百万桁計算はかなり軽い計算になっている。試しにSuper πというベンチマークソフトを使ってみたら,Athlon64 X2 3800+マシンで53秒(104万桁)だった。最新のQuad core CPUならこの1/4,さらにSIMD命令を使ったりすればもっと高速化されるので,本気になってあれこれ高速化のためのチューニングをやれば,10秒を軽く切るんじゃないのかな。
 本書に掲載されているπの百万桁は自作のプログラムで計算したとのことであるが,だからまあ多大な計算時間を要するというものではないし,計算の仕方はそれこそググってもらえば山ほど出てくるから,真にオリジナリティのある仕事とは言えない。著者としてはプログラムを作る方もさることながら,数字をかっちり並べてTeXで製版する方もおもしろかったのかなぁと想像する。本書は暗黒通信団というサークルが発行した同人誌ではあるが,ちゃんとISBNコードも取得して一般書店に流通させたりしているあたり,しかも314円という,あらかじめ決められていたようなやっすい頒価をつけちゃうあたり,ワシみたいな数字フェチを喜ばせるというやり方で日本文化に貢献しようというあたりの,心意気は見事である。つーか,心意気しか褒めようのない本を出したこと(eの本もあるらしいがワシは未見)が素晴らしい,とワシは,これはイヤミではなく,素直に感心しているのである。

4/1(水) 掛川・?

 ふ~,本日はCentOS 5.3 x86_64インストールデイ。CentOS5.2マシンを片っ端からアップデートしまくったが,あの訳の分からんキモい壁紙はFedora起源か? それ以外はまあそこそこ。懸案だったCore i7マシンのハングアップが解消されたかどうかはもうちっと様子を見ることに。ズボラして5.2からアップデートかけたらフリーズしましたからね。BIOS設定をデフォルトに戻してHTもonにして,クリーンインストールしなおして起動してあるが,さてどうなりますから。二三日様子を見ないとまだ何とも言えないな。
 Google面接blog記事の翻訳。うーむ,すげぇ手間かけてんな・・・。ワシなんかはたぶん1次試験でアウトであろう。
 本日一番感心した記事(デイリーポータルZ)。そうかウズラの卵でピータンが簡単にできるのか! ワシんちは植木がないので,ある方は試して作って自分で食ってみて下さい。ワシはいらん。
 猫Watch創刊。うーむ,ホントにやればいいのに・・・。株価,元に戻んないんですけど,猫でも犬でもイタチでもでもいいからなんとかせーよ>インプレスHD首脳陣
 どーしよーもなくVistaの仮名漢字変換がバカになっちゃったので,とうとうATOK2009をインストール。おお確かに使いやすいし,変換もそこそこ精度が良い。つーか,元に戻っただけとも言えるが。x86_64環境でも使えるのが嬉しい。しばらくはこれで行こう・・・って,もうIMEの候補って,M$かATOKしかないんだよな。ITという言葉が使い古されてしまった昨今を象徴するような話ではある。
 何かいても本日は嘘臭くなっちゃうのでこの辺で。