[ Amazon ] ISBN 978-4065363874, \759
初物買いで,1巻が出たところで書評した作品であっても,その後の展開次第でこちらの興味が薄れ,完結までお付き合いしなかった作品,結構あったりする。あれとかそれとかこれとか・・・いちいち取り上げないけれど・・・とゆーことで最近は長めの連載作については,もう大丈夫だろうと見切ったものか,完結した作品のみ取り上げることにしている。
とゆーことで,本年完結したヒット作,「未熟なふたりでございますが」(全18巻)を取り上げることにする。本作,いわゆるエッチな作品,つまりはセックスアピール全面展開の漫画ではあるのだけれど,健全極まりない夫婦愛を描くための道具としてのSEXを軸としているので,万人にお勧めできるものなのである。
昨今は著名人の不倫とやらがトレンドで,やたらめったら文春リークスにはタレコミが寄せられているようだが,こちとら昭和の感性から一向に進化していないせいか,無関係の第三者視点では何処が悪いのかサッパリ分からない。不倫そのものは犯罪ではないし,双方の当事者(配偶者込みの家族)以外はせいぜい「よーやってはるわ(ニヤニヤ)」程度の感想を持つ程度の話だと思うのだが,スポンサーやら応援団やら,利害を共にするグループの構成人数が多ければ多いほど迷惑をこうむる率が高まる,というか,正確に言えば「迷惑をこうむると感じられる人たちからの苦情が増えて商売に差し支えるレベルに達する」ことを恐れなければならないという,極めてメンドクサイ事態になっているらしい。はてさて人間の道徳心がどれほど向上しているのかと皮肉の一つも言いたくなるが,とはいえ,一度籍を入れた以上は添い遂げるべき,という「世間の声」が復活していると考えれば,そのこと自体は悪いことではないと言える。そして「一度籍を入れた以上は添い遂げる」一手段として,性欲が有り余っている時期に夫婦ともどもSEX込みで仲良くすることを寿ぐ漫画があっても好かろうと「世間の声」の後押しがあった・・・のかどうかは知らんけど,ともかくシリーズ累計100万部(電子含む)の売り上げにつながったことは,過剰とも思える不倫バッシングがいかに強いかということを物語っているのである。
幼馴染のカップル,年長になって一緒になったものの中々ことに至らず悶えまくるという,前半4巻目までの葛藤が引っ張る展開から一転,ラブラブやりまくりになってからの展開もまた趣深い。そんなに性欲が長続きするのかというリアルな声はどーでも良く,ファンタジーとしての生活臭漂う,さほどヤバいことも夫婦の危機が全く感じられない日常もまた良いのである。「こうあらねばならぬ」イズムが薄れ,あれもこれもまぁ個人の選択だし的な,独身の友人や見合いの夫婦との緩いコミュニティ感も令和風と言えよう。そんな付き合いを続けていくうちに「まぁああいう感じもアリかな」との感想から「じゃぁ自分も」という,自然発火的なムーブメントがあるのも時代である。そんなご時世に,破壊的衝動に身を任せるキャラが登場しようもんならあーた,この作品の雰囲気ぶち壊しですぜ。そーいや「よろめき昼ドラ」とか一時期はやった時期があったなぁと感慨にふけるのは昭和世代だけだな。
以前のペンネーム時代の作品から今の「カワハラ恋」になってからのセックスアピール的漫画力向上を狙う功名心がどこからやってきたのかは分からねど,前作「淫らな青ちゃんは勉強ができない」での飛躍があっての本作の大ヒットであることは疑いない。ただ,本作が単にエロいから売れた,というだけではないのは,前述した通り,「世間様」のニーズに合致したからに外ならず,不倫なんぞに現を抜かすよりは一途を貫くことの重要さを認識するようになった,いわゆる「保守的」な倫理観を持つ世代が台頭してきたということ,そのこと以外にはありえないと言えるのである。