中島守男「先生!!原稿下さい。」講談社

[ Amazon ] [ Kindle ] ISBN 978-4-06-217297-4, \619
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 ああ下らない。相変わらず中島守男は下らない。デビュー以来,一貫して豊満な女性をセクハラしまくるような昭和テイストなオヤジのエロスを追求してきた中島が,「小説現代」に毎月チミチミと5ページずつ連載してきた作品をまとめた単行本を満を持して刊行したのだ。素晴らしい。あまりに作品の魅力がありすぎて,せっかく買ってきた本書はワシが読む前に神さんがけらけら笑いつつ,さっさと読了してしまった程だ。
 中島の作品は本当に芯がぶれない。「吉田家のちすじ」では長男の嫁,時代劇に初挑戦した「月夜のお曜」では年若いミステリアスな娘,そして本作では美人編集者,いずれもグラマラスなムチムチ女性を秘宝館ののぞき窓から見るがごとくに堪能させてくれるのである。それでいて,下卑た厭らしさを感じさせないのは,洗練された線がもたらす緻密で上品な画風によるものだろう。「月夜のお曜」では初めて完結したストーリー物にチャレンジしていたが,今後のこの方向への展開も期待させてくれた一方,も少し下らない方向への深化(?)も見てみたいなぁと思っていたのである。本作はその意味で,期待通りの下らなさ全開(分かると思うがほめ言葉です)の出来だったのだ。わしが小躍りしたのも無理はないのである。
 全く本作の主人公である美人編集者を嘗め尽くすベテランエロサスペンス作家はとんでもないセクハラおやじだ。マツタケ食わせて作品執筆の意欲に火をつけるわ,下着の色を執拗に聞いてくるわ,あまつさえ,スポーツクラブのプールでハイレグ競泳水着(なんというマニアック!)姿を堪能するわで真に羨ましい限りだ。このムチムチ肉体へのあくなき嗜好に,同じく豊満な女体への欲望を燃やすワシとしては(以下略)。
 とはいえ,やっぱり全体としては上品さの漂う端正な作品になっているところが,ワシの神さん(念のため言っておくが女性である)も素直に受け入れた所以であろう。昭和的オヤジエロスと上品な画風の微妙なバランスの上に立った中島作品は量産せず,コツコツと積み重ねていって欲しいものである。