春日太一(聴き手・構成)「黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄」文藝春秋

春日太一(聴き手・構成)「黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄」文藝春秋

[ Amazon ] ISBN 978-4-16-391108-3, ¥1900 + TAX

 いやぁ,他ならぬ春日太一の著作だし期待外れになることはない,とは思っていたけれど,書店で手にとって驚いたのはその分厚さ。本文419ページ! もちろん,全く映画ファンではない一般ピーポーであるワシでも「奥山和由」という名前は知っていたし,著者がまえがきで述べているように,その電撃的な松竹からの解任劇についても,TVや新聞を通じての報道はワシもリアルタイムで見聞きはしていたが,そこに至るまでの狂気的な映画への奉仕者・プロデューサーとしての仕事っぷりがこれほど凄まじいものだとは,想像の範囲を超えていたのである。分厚いことは分厚いが,その熱量と読みやすさに当てられて,即位礼の儀を横目に一日で読んでしまったぜよ。しかしまぁ,解任される直前に自分から辞めることを考えていたというのは本書を通じて初めて知り,そこまで思い悩むまでの入れ込み具合が放逐される原因なんだろうなぁと,奥山の主観に満ち溢れた本書の記述を通じてボンヤリ浮かんでくるあたりが,聴き手・構成を通じてしっかり春日太一の著作になっているという証にもなっているのである。

 ワシは大変下世話な性格なので,成功者の自慢話より挫折経験者の失敗談の方を好む。組織に馴染めず辞めてしまったり,放逐されたりした経験が自分にとって一番身になる知識だと感じているのである。奥山和由という人の絶頂期,バブルの勃興期から崩壊して失われた数十年に入りかけのプロデュースした映画の本数は60本を超えているが,直接見た映画は少ないにもかかわらず,恐らくはTVを通じてだろうが,そのタイトルは結構覚えている。TV番組にも露出するし,派手なプロデューサーだなという印象は持っていたが,その分,世間,というより松竹という古い体質を持つ大会社内部からの風当たりは相当強かったようで,アゲンストの風に向かいながらグングン上昇していく凧のような存在だったのだろう。才能はあってもそれ以上に癖の強い映画監督や俳優と議論したり宥めすかしたりしつつ,身内からの足の引っ張り合いにも揉まれながら,それらのゴタゴタをエネルギーに変換して疾走する様は凄まじいの一言に尽きる。語りっぷりに熱がこもっているのはもちろんだが,どのぐらい春日の手が入って整理されているのかは定かではないけれど,かなり映画に対する審美眼が一貫していて,作品の善し悪しを客観的に評価しているし,それでいて興行師としての仕事もおろそかにしておらず,ヒットを飛ばすことでしか,やりたい仕事ができないということも「ハチ公物語」の大当たりを通じて学んでいる。ワシはこういう体験を通じての学習というものしか信用していないので,毀誉褒貶はあるにしても,この奥山和由の経験談はかなりワシ自身の身になるものになると確信しているのである。

 ・・・という本書の語りの面白さはピカイチで申し分ないけれど,ワシの下衆根性は奥山の松竹放逐の原因にやっぱり興味があり,その辺りをズバリ知りたい向きには不満が残るのかなぁと感じる。奥山当人はあまりに変わらない松竹の体質に嫌気が差して放逐される前に辞めることも考えていたようだが,さて額面通り取っていいものかどうか。組織人として生きていれば,辞めたいと考えることは当然ありがちではあるし,父親が最初から重役として,最後は社長として君臨している会社で,自分も重役として引き立てられている立場であったことを考えると,その立場を生かしての活躍ができているメリットも大いにあったわけで,何となく言い訳めいているとも感じる。しかしその点を追求することは本書の目的ではない。組織人であれば,放逐する方もされる方もそれぞれ言い分があり,片方が一方的に悪いというキレイな話にはならないということも承知していることである。そんなことより,奥山という稀代のプロデューサーの持つ危うさと熱量,そしてその疾走してきた歩みを本人に語らせることで生きた日本の映画史を読者に提示することにあり,映画のプロデュース業というものの過酷さと面白さが生み出すダイナミズムを体感させることにある。ワシはすっかり本書に当てられ,この浮かれた休日に熱くなってしまったのである。

10/6(日) 駿府・晴後曇

 10月超えてもまだ日中の気温が30℃を超える日が続く。台風は19号が発生し,次週の三連休には九州・沖縄近海に近づいてきて,その影響が出てくるという予報。最近は週末引きこもっているので,世間的な休日が荒れようがどうしようがどうでもいいが,収穫期に入った米などの農作物に被害が出るのは困る。全世界的に温暖化がじわじわ進んで16歳の少女まで大演説を国連でブッこく時代,ワシが死ぬまでにどんだけ強力なモンスター台風が発生するのか,楽しみでもあり,怖いようでもあり。せめて自宅リビングのガラスに保護シートでも貼らなきゃなぁとツラツラ思う。

 「多倍長精度数値計算」(森北出版),Amazonにページができてた。

 画像の背景のプログラムが本文で説明しているものと違うなどというツッコミは聞かなかったことにする。10月発売予定と言いまくっていたのだが,消費税増税前の駆け込み需要で印刷所が混んでおり,11月22日発売に遅延してしまったのは当方の不徳の致すところではないので謝らないよ。しかし8%に据え置かれた新聞じゃないので10%の消費税丸かぶりで¥4620っつーのは高いよなぁ。まぁGNU MPの一部とQDとMPFRとfloat128リファレンス込の,部数の見込めない本なので致し方ないところです。草稿送りつけた多倍長精度関係者には問答無用でお配りしたいところではありますが,何せ部数が部数なもので(って聞いてないけどせいぜいコミケ島角サークルの新刊ぐらいと想像),届かなかったらすいません。サポートページはすでに作ってあるんだけど,発売日と同時にリンク貼って公開予定。・・・しかしシンドかったので,MPACKの解説が欲しかったとか抜かすと丑の刻参りするぞコラ。無い物ねだりするより自分で書いてみてはと言っておく。ご本人の英語解説はこっちにあるので買うとよろしい。

 Pythonプログラム,ぼちぼち追加しつつあり,Autogradパッケージを使って遊んでみた。額縁ょ〜などというものの宿命で,あれこれ余計な事務作業と書類作業が無限に割り込んでくるので,Jacobi行列で遊ぶまでには至ってないけど,接線引きまくって元の関数をイメージするグラフを書くところまではたどり着いた。

 次は多段法・・・など言い出したら全然終わらないので,先に偏微分方程式の計算事例を2,3積み重ねてケリにしたい。10月いっぱいの予定,忘れてませんのでしばしお待ち下さい・・・って何度目だこの言い訳。

 さて,神さんから委託されている明日の朝ごはんの準備をしよう。

9/23(月・祝)京都→駿府・曇

 台風17号が,北九州をかすめて日本海に駆け抜けていったおかげで,京都は蒸し暑い空気が淀んだ嫌な気候になったものの,風が強いが雨は降らず,昨日から開催されていたODE-JP 2019は無事閉幕したのであった。来年も無事開催できると良いが,何せ人手と場所がねぇ。

ODE-JP2019@同志社大学今出川キャンパス

 さて,明日から本格的に後期が始まる。今週の目標は
・「多倍長精度数値計算」(「入門」が外れました)の最終推敲
・再査読レポート執筆
なんだけど,当然のことながらPythonスクリプトも書かねばならぬ。今の所,

とゆーよーなグラフは書いたりしているのであります。とりあえず,次年度向けテキストはなんとかなりそうなので,どこまでPython的な課題を盛り込めるかが勝負。ま,前期にそこそこスクリプトは揃ったので,何とかなるでしょ。

 ボツボツ,ブログもできる範囲でチマチマ書いていきまする。

 風呂入って寝ます。

7/21(日) 駿府・曇

 予報ではこの週末あたりで梅雨明けの気配が見えてくるということだったが,台風5号が沖縄から韓国に抜けるコースで到来したせいで,九州の五島列島と対馬に記録的な豪雨をもたらしてくれたもんだから,梅雨明けは延期となってしまったようである。今週末,ワシが北見を往復している辺りかなと。さすがに梅雨寒は収まり,気温がようやく30℃まで上がるようになってきた。小中高が夏休みに入ることもあり,閑散としていたプールやかき氷屋にも人が入るようになるであろう。日本経済には良いことである。

 本日は参議委員議員選挙の投票日。Googleも投票を即している。期日前投票数は過去最高となったとのこと,与党でも野党でも,応援するなり批判するなり自分の意見を主張できる貴重な機会なのだから,18歳以上の,特に若者はつるんででも一人でも投票に行くべし。投票券を忘れても投票所で名簿確認できれば問題なく投票できるようなので,遠慮することはない。ドシドシ行きましょう。

 「多倍長精度数値計算入門(仮)」,初稿を一週間遅れで返送した。この期に及んでの悪あがきは封印してシャカシャカ進めてパッキングして宅急便に託したのである。サンプルプログラムの整理も進めないとなぁ。当然,日本語の本だから,本文に提示したソースのコメントは日本語になっているが,GitHubに乗っける奴は,ヘボでも英語にした方がいいかしらん。

 つーことで,多倍長が一段落したので,北見行きの準備を進めつつ,Python3本の方も進めないとなぁ。ガンバルンバ。

7/14(日) 駿府・曇

 今年は夏の湿気含みの大気を運んでくる太平洋高気圧の勢力が一向に強まらず,今年の梅雨前線は九州から関東までの太平洋岸に張り付いている。おかげでその前線の上を次から次へと低気圧がやってくるので,今年の梅雨は梅雨らしいジメジメした日が続く。オホーツク高気圧から吹いてくる涼しい空気のおかげで暑くないのが救いだが,日本経済と農業にとっては,冷夏というのはあまり宜しくないので,太平洋高気圧にはせいぜい頑張って頂いて,梅雨前線をトーホグまで押し上げてかーっと晴れた夏らしい夏を期待したいところである。

 ふ〜,何とか「多倍長精度数値計算入門(仮)」の第一弾校正作業に目処がついた。月曜日には送って火曜日には届くように致しますです。一週間遅れで申し訳ないですが。>Mさん
 にしても,改めて読み直すと,あれが足りないこれが足りないあそこはダメここもダメと,頭抱えたくなってくる。いやまぁ「LAPACK/BLAS入門」の時もそうだったんだが,薄く書けという事だったので手離れの決断は割とスンナリできた。今回は我ならがテンコ盛りで,能力の限界を超えた感があり,収拾のつけようが無く手離れし難いところがある。まぁ,C/C++で多倍長計算したい方にはそこそこ役に立つ包括的なプログラミングテキストにはなると思いますんで,宜しかったらお手元に一つに置いておかれても損にはならんでしょう。つか,そーゆーものを誰も書かんのは困った事である。GMPやMPFRやQDのマニュアル翻訳したところで分かった感じがしなかったんで,ワシ的にはまぁ良かったかなと。

 色々尻カッチンで詰まっていたお仕事がこれで進むかなと。Pythonも頑張らにゃいかんが,目前にはUnplugged algorithmの高校生向け講座が8月上旬に迫っているし,下旬にはMATLABでLife Gameする市民講座はあるし,額縁ょ〜にしてはそれ以外の教員としての通常業務が普通に重なってくるので,頑張って乗り越えましょうぞ。