12/20(日) 駿府・晴

 先週から急激に寒気がシベリアから降りてきたらしく,平年並の寒さになってきた。日本海側はドカ雪に見舞われて関越自動車道が通行止めになり,自衛隊にお出まし願うという有様。コロナ大流行に陥った旭川や大阪でも自衛隊に助けを求める状況で,かなり末期的な感がある。ワクチン接種は来年から少しずつ開始されるようで,夏までにはだいぶ良くなるかなとは思うが,それもこれも東京オリンピックのためと思うと,何だかやるせない気分になるのは気のせいかしらん。何かとこの手の公共事業でしか金の使い道が見つからないという老齢化社会日本を象徴しているように思えて仕方ないんだよなぁ。

 何とかシコシコ間に合わせて「Python数値計算入門(仮)」,入稿しましたよ全く。PEP8に合わせてソースの書式変更が一番面倒くさい上に不毛っぽくてイヤんになってきたが,関数定義の後は2行明けという規則のおかげで行数は稼げるという,著者にとってのメリットはある訳で,痛し痒しかな。何にしろ,次週には第一校が到着するとのことで,正月は暇を見ながら校正作業に勤しむことになる。全く,額縁よ〜なのによー働くなワシ。しかしこれで当面本を書くこともなさそうだし,プログラミングに勤しむことにしよう。

 とゆーことで,何とか「AVX2によるマルチコンポーネント型多倍長精度行列乗算の高速化」が形になってきた。

まぁ先達のある研究なので二番煎じ的ではあるけれど,Strassenとの組み合わせて最高速を目指すというところは売りになるかと。第一校が到着するまでには日本語の下書きは終わらせて,ヘボ英語DraftのArxiv登録は済ませてたいところ。どーなりますことやら。そろそろ線形計算の飽きてきたんで,直接法と疎行列の実装終わったらいよいよアレに着手したい。夏休み以降の課題なんだろうけどねぇ。

 つーことで,次年度の実験講座向けの資料の作成,大体材料は揃った。

 Flaskで計算させようという実験資料

 どーせ全部は終わらないので,これに追加する形でDeep Learningに繋げるような内容にして,卒研ネタにできればいいかなと。要素技術の追求は個人的には面白いし,定年後もやりたいお仕事ではあるんだけど,若い世代にそれを押し付けるのは老害もいいところ。やりたい向きが自発的に取り組むのはいいけど,総合的な技術の積み重ねの小山に登らせる経験なしで盲目的に下積み的テクニック習得に時間を使わせるのは教育機関としてはよろしくない。ま,FlaskでMVCの習得をさせてPythonにも慣れて貰うというのは一応その方向ではあるので許してもらえるかなと。

SIRモデルで,平均感染期間2週間(14日,左図)と3.5日にして計算したものを題材の一つとした。やっぱり感染者数(オレンジの線)が違うんだなと再認識。

 さて,コロナ禍でドタバタの本年もあと2週間,今週末で職場も仕事納めに入る。今年末はぷちめれ祭りする暇もなさそうなので,数冊,現実逃避がてら紹介することにしようっと。

 山下達郎の朗々としたクリスマスソングを聞きながらの,穏やかな日曜日でございました。ひと段落済んだらまたなんか書こうっと。

永坂秀子先生の思い出

卒業生の遺稿集を出すそうなので,その下書きとして書いた文章を以下に掲載しておく。

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 忘れもしない1991年,大学院生の受け入れはしないという方針の研究室にて数値解析の面白さに目覚めた学部4年生の私は,どうにかこうにか他大学の大学院へ行きたいと,手当たり次第に国内の数値解析系の研究室をリストアップし,電話(E-mailが普及するのは1990年代終盤)をかけて大学院生として受け入れて頂けるかどうか面談を申し入れまくっていた。リストアップした二番目が山梨大学の田中正次先生で,タイミングの悪いことに電話が繋がらず,三番目に挙がっていた日本大学の永坂秀子先生に電話をかけるとご本人在室で直接お話しでき,面談の快諾を得た。以来亡くなる前年の2019年まで,三十年近いお付き合いの始まりになるとは思いもしなかったことである。日本大学理工学部数学教室の研究室でお目にかかった先生は,一面識もない他大学の学部4年生に親しくお話しして頂き,「興味があるようなら6月の数値解析シンポジウムにいらっしゃい」とお誘い下さって,これもまた今も続く研究集会・数値解析シンポジウムとの長いお付き合いが始まるのである。

 そうして何とか潜り込んだ日本大学大学院理工学研究科博士前期課程(いわゆる修士課程)において,私は永坂研究室に泊まり込んだりしつつ,TeXやPC-9801や日立の汎用マシンや,SUN Sparcマシンと戯れつつ2年間を過ごしたのである。研究は面白く,計算にのめり込んだ私は,当然博士後期課程に進みたかったものの,金銭的な問題もあり,兄弟子の室伏誠先生のつてで雇用促進事業団に雇ってもらい,遠く能登半島の真ん中辺,穴水町の石川職業能力開発短期大学校にて,給料をもらいつつ理解のある校長の許可も得て社会人博士課程大学院生として3年間を穴水と東京を行ったり来たりしながら過ごし,永坂先生と戸川隼人教授のご指導のもと査読論文を三本執筆し,晴れて博士号を取得することができたのである。ちなみに,この時の副査のお一人は,戸川教授のツテで,二番目にお会いできなかった田中正次先生にお願いすることになったというのも何かの縁を感じざるを得ない。

 博士号を取得後も,私が静岡理工科大学に職を得て異動してからも,果ては永坂先生が日本大学を引退されてからも,先生のご自宅へ定期的に通うという習慣は続き,取り止めのない世間話や数値解析の研究についての楽しくお話しするという至福の時間を過ごすことができた。最近はもっぱら永坂家に伝わる古文書に関する話が多かったが,私の結婚後は妻共々親しくおつきあいさせて頂き,2019年12月まで,武蔵小山近辺の中華料理屋やイタリアンの店で会食させて頂いたのは良い思い出である。

 その他にも様々なことが思い出されるが,近年一番印象深い出来事は,2018年,常微分方程式の数値解法の世界的権威であるAuckland大学のJohe Butcher教授主催のセミナーで,永坂先生が五十嵐正夫先生や室伏先生らと精力的に取り組まれた捕外法の歴史をテーマとするマレーシアの研究者の講演で,かのNIM法(Nagasaka-Igarashi-Murofushi)の論文が取り上げられていたことである。このセミナーでは私も捕外法を例とする研究発表を行ったのだが,そこでもNIM法を取り上げており,この偶然の一致にいたく感動したことを今でも鮮明に覚えている。

 考えてみれば,はた迷惑な押しかけ弟子として出発した私は,学位取得もその後の精神衛生的支柱としても,永坂秀子先生の人徳に寄りかかりっぱなしの研究者人生であった。先生なくして今の私はここにはいない。ここに次の追悼の辞をお送りして締め括ることにする。

 日大の学部生でもないのに突然押しかけてきた私を暖かく迎えて頂き,大学院5年間のご指導を通じて修士号・博士号を取得することができました。以来,本年まで30年近くお付き合いさせて頂き,誠にありがとうございました。妻と共に静岡の地より御礼と共に,ご冥福をお祈り致します。

11/15(月) 駿府・晴

 晴天だが雲が多めの日。富士山が見えず,さっぱりとした秋空とはいかず,明日からは天気が崩れるとの予報。本格的な冬に入る前段階のようで,寒さはまだ本格日しそうにもない。その割にはコロナウイルスは,GoToなんちゃらの影響で緩みまくったワシら日本人に容赦なく襲いかかっており,感染者数は過去最高を更新しそうな勢い。冬になる前に第三波がやってきた訳で,ボチボチ東京をぶらぶらしたいなぁと思っていても,今年いっぱいは無理っぽい。ワクチンがくるのを待つしかないなぁ。

Intel Mac用としては最後のmacOSかしらん?

 自宅用メインマシンのMacBook Airを Big_Surにアップデートした。どうやら今度出たApple Silicon M1マシン用のOSとして出てきたらしいが,将来のないIntel Macとしては最後のメジャーバージョンアップかしらんと不安になってくる。Arm用とx86_64用の両バイナリをサポートするアプリがこれから出てくるようだが,後のないマシンオーナーとしては余計なモンをくっつけてくるんじゃないと言いたくなる。
 ちょうどSIMDに凝っているので,ArmのScalable Vector Extensionsを勉強するのアリかなとつらつらマニュアルなどを見ているのだが,肝心の使い勝手の良いGCCは来年以降にならないとHomebrewからは出てこないらしい。

 つーことで,M1マシンの購入は様子見。まぁソフトウェアの厚みについてはx86系の優位はそう簡単に崩せないし,AMDのRyzen快進撃もあって,ワシの科研費が終わるまではAVX2だけ相手にしていれば十分であろう。AVX-512? あんなクソ命令,高速化に寄与できないんだったらAMD見習ってコア数増やせ!・・・という代物である。

 どうやらAVX2によるDD,TD,QD線形計算の高速化は達成できそうでほっと胸を撫で下ろしている。懸案の3倍精度もQD演算を流用することでしっかり高速化できることはしっかり確認できた。後はベンチマークをやりつつ,来年2月投稿予定の論文の下書きを書くことになる。問題は同時期に締め切りが来る本学紀要論文で,書くと明言しちゃった以上,何か書くしかない。昨年に書いたPython多倍長精度計算の続きみたいなモンを書くしかないなぁ。DLL化してODEの計算にも有用とか言ってみたいものである。・・・頑張らねば。

 コロナ禍でも,というか,だからこそシコシコ論文書くにはもってこいの環境であるにもかかわらず論文生産性が上がらないというのはサボり以外の何者でもない。せいぜい引き篭ってシコシコやることにしよう。今月末からはまたPython本の最終ゴールに向けてラストスパートをかけないといかんしなぁ。

 来週も頑張ります。

10/23(金) 袋井・雨後晴

 大学祭準備のための休日であるが,折角の金曜日なので出勤してこまごました用事を済ませている。最近の論文査読,査読者の皆さん真面目なので,締め切り前にレポートを上げておられる。ということでワシもこれから第2回目の査読報告書を書く予定。ま,誠実に直してあるので「このままでもオッケー」と書けばいいんだけど,修正点のチェックはやらなきゃならんので,ある程度手間はかかるかな。

 2011年に出版した「情報数学の基礎」,めでたく11月下旬に第2版が出ることと相成った。これもひとえに本学だけでなく,他大学等で教科書採用して頂いたおかげである。どこがどう変わったかは,発売日以後にこちらで告知がてら書きつけることにするが,第1版を持っている人も悔しがることはなく,値段は据え置きだし(感謝したまえ!),記述そのものもさほど変わっていないのでご安心を。

 ところで「Python数値計算入門(仮)」,演習問題と解答以外の本文は完成したものをお送りしてあるので,11月以降は現状のものを手直しして学内で使用しちゃいますですよ。2月には内部テキスト印刷の〆切なので,年内にはお返事よろしくです。>某さん

 にしてもコロナ禍は長引くなぁと,皆さんと同じ感想をワシも持っている。この日記,新型コロナウイルス感染症対策本部の尾身・新型コロナウイルス感染症対策分科会長の感染防止策の具体的な説明を聞きながら書いているのだが,東京の感染者が200人/日で安定して生成されていることから,GoToなんちゃらの勢いも手伝って地方に感染が飛び火するという構造らしく,日本全体の感染者数もちっとも減らない。激増しないのは,小林よしりんのような暴論を皆聞かず,真面目にマスクしつつアルコールで手指消毒しているからで,公衆衛生的には理想なのだろうが,教育関係者としてはヒヤヒヤしっぱなしである。首都圏とは違って静岡県内ではせいぜい日に数人程度の感染者数で済んではいるが,誰が掛かってもおかしくない状況であることには変わりなく,用心に越したことはないのである。まぁ「コロナ論2」が出たら買うけどね。「コロナ諭」については話題が古くなりすぎて,ここで取り上げる気にならない。よしりんにサイエンス的な議論を期待する方が間違いなのは承知しているが,どうも医療関係者との見解の相違が大きすぎて,トランプ大統領同様,よしりんコロナ論を支持する気にはならんなぁ。

職場のメインマシンを20H2にアップデートした証拠

 Windows 10 2004がちっともやってこないのでおかあさんあのあっぷでーとどうなったでせうねとやきもきしていたら,次の20H2がやってきた。相変わらず手持ち環境のWindows Updateではお誘いがないので,手動updateを強行して成功。ちょっとExcelが重たくなったかなぁというぐらいで,今のところ正常に使えている。ボチボチNote PCの方にも突っ込んでいくことにするか。

 そういや,このサイトのPHPもバージョンアップをしないとイカンのだった。一旦,全部対比してCentOS 6→Ubuntuに挙げる必要があるのだが,クソみたいなサービス品質に成り下がっちゃったWebArenaとの付き合いを考え直したいし,いっそのこと丸ごとさくらに鞍替えしちゃおうかなぁ・・・とも考える。年度末までに結論を出すかな。

 面白い本を何冊か読んだので,10月中にもう少し記事の更新をしてみたいというだけのテストで終わるかも。さて査読に戻ります。

9/14(月) 駿府・晴

 朝晩は25℃を下回る気温となり,日中は暑いが,空気から湿気が抜けて爽やかな秋風を感じるようになってきた。これからの台風シーズンが思いやられるが,猛暑日を今後は経験せずに済むかと思うと一安心である。

 大師匠が先週逝去され,本来ならイの一番に駆けつけてご葬儀の手伝いなどすべきところ,このコロナ禍の中,東京へ出かけることも憚れる上に,一度出かけてしまうと家族にまで迷惑が及ぶので,不詳の弟子ということでご勘弁願うことに。代わりに香典だけでも兄弟子に届けてもらおうとう現金書留で送ったら日曜日に返送されて大慌て。電話番号が同じだったので住所も変わってないかと思ったら引っ越しされてたとのこと。今度はご遺族の住所をきちんとうかがって本日再送,明日には届くかなぁとは思うが,誠に間抜けは話である。あの世で大師匠が「あらあら」とほくそ笑んでいるさまが見えるようである。とまれ,ほぼ100年間の人生お疲れさまでした。思い出話はまだ改めてここにでも書きつけることにする。

往生際の悪い本日の朝顔一輪

 プランターの朝顔,全滅かと思いきや,後からヒョロヒョロ伸びてきた輩がしぶとく生き残り,数日ごとに花を咲かせ続けている。ぐんぐん伸びて四方八方に弦を這い回しまくった先人はとっくに枯れて種を残しているのだが,後塵を拝した輩はその枯れたツルの上にはい回って今頃活躍を始めるという大器晩成タイプ。まぁ長く楽しめるのは良いことなので,全ての朝顔が枯れ切るまで付き合うことにするか。

 さて,Python本は一段落したし(校閲はゆっくりでいいですよーと言っておく),二本目の査読は〆切日にぎりぎり間に合わせたし,Springerの冊子に掲載予定の論文の校閲も終わったし,現在気が抜けている有様。次年度以降のPython実習計画なぞをひねくり回しつつ,SIMD命令の勉強を今更ながらしている所である。参考になるかなと今頃Pythonのテキストを買ってきてパラパラめくっているのだが,やっぱり望洋先生のが一番しっくりくるかなぁ。感想はまた後程まとめてここに書きつけることにしよう。

 さて新首相が誕生間近,えっマジかってなモンだが,だからって今の日の本が劇的に変わる訳じゃなし,そもそも国民が見たいものしか見ていないっていう有様だから・・・という宮台真司の皮肉な論説が一番しっくりくる現状,予防的ワクチンがしっかり機能してコロナ禍が終わるまではまぁ世の中ひっくり返るようなことは起こりそうもないな。いいんだか悪いんだか。

 さて,明日からまたゆるゆると頑張ります。そーいや,ワシが大師匠と初対面したのは還暦過ぎだったよなぁ・・・それに引き換えワシは50過ぎにしてへばってたりして,元気さが違うわなぁと反省しております。