内田樹「子どもは判ってくれない」洋泉社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-89691-759-6, \1500
 「ためらいの倫理学」(2000年)以来の3年分のエッセイを集めた単行本。オトナのために,オトナの思考法を「うじうじと」述べた文章が満載されている。といいながら,読んでいて爽快感がわき上がってくる辺り,文才があるんだよね,きっと。ああ羨ましい。
 「ためらいの倫理学」では小田嶋隆の影響が色濃く刻まれていたが,これはすっかりそーいったレトリックからは開放されており,50過ぎのオジさんがじっくりと腰を据えて,複雑な世の中の仕組みを省略することなく複雑なまま語ってくれている。
 著者は小林よしりんが嫌いなようであるが,随分と共通している所があるのは,どっちも現実を見据えようという気構えがあるせいだろう。感情的な行き違いはあれ,世間でそれなりにステータスを築いていけば,自ずと同じ世の中の仕組みを知ることになるから,申し述べる事柄も似通ってくるのである。
 わしが一番感銘を受けたのは,「ハラスメント」を考察した「呪いのコミュニケーション」(P.132~142)と「ヨイショと雅量」(P.154~159)である。特に後者は,「ほめて育てる」ことの重要性を指摘しており,何事に付け,人の足下を掬ってやろうとしている腹黒い教師としては,誠に恐縮する次第である(改めるつもりはないけど)。
 今後ともWebを初めとした様々な媒体で作品を発表され続けるであろう,著者の今後の活躍に期待。いやぁ,小谷野先生に続いて尊敬する書き手と巡り会うことになろうとは思わなかったな,うん。

10/11(土) 掛川・曇

 バファリンPlus様のおかげで,昨日より居座っていたヒドイ偏頭痛がようやっと治まる。わしの母親も頭痛持ちなんだが,こーゆー体質ってのは遺伝するのかしらん? 昨日は講義があったので何とか持ったが,休日ともなると,無理して動く必要がないためにかえって体調が良くない。体を動かす用事があれば,そのうち頭痛は去ってしまうのだが。ズボラ人間は,強制力が常時働いていないと生活が営めないのである。
 フラフラしながらバファリンを買いに薬局へ出かける道すがら,賑やかな御輿とすれ違う。今日は掛川大祭だった。オトナを先導に,子供達が御輿を左右に振りながらゆっくりと進んでいく。それをじーっと眺めている,無精ヒゲを伸ばしたひとり者の中年オヤジの図。そのうち逮捕されるかも知れぬ。
 薬局帰りに,道ばたの野菜売りをしている小さな無人スタンドがあり,枝豆一房を40円で購入する。所々虫が食っている所がよさげで,自宅に戻ってから湯がいて昼飯代わりにむさぼり食う。うまかったっす。
 バファリンPlusのご加護によって復活した後,メンドくせぇ査読リポートをでっち上げ,買い物に行くついでに掛川郵便局に投函。夕食にスパケッチをゆでてむさぼり食い,その勢いで”BNCpack & MPIBNCpack Tutorial”(日本語だけどな)をバリバリと書き始める。プログラムリストを突っ込んだだけなのに40ページを越える。まーったく,プログラムネタで分厚い本を書くってのは,チョロい仕事だよな(誰に言っているんだか)。来月,大学院の講義が終了するまでに仕上げてしまおう。100ページ突破なるか?

10/9(木) 掛川・晴

 なかなか秋晴れと対面できない,と書いたら,本日はピーカン晴れ。でも放射冷却のせいか,かえって寒い。ちょっと暖房を入れる。
 昨日はMPIの教材となる,ごく短いプログラムを完成させる。Send/Resv, Bcast/Gather/Scatter/Reduce/Allgather/Allreduce/Alltoallを使った,IEEE倍精度と多倍長の例である。全部で16本。
 んで思ったんだけど,こーゆー短い例題を使って解説している本ってのは,全然ないのね。個別に教材として先生はいるんだろうけど,本になったものはないんじゃないのかな。欧米にもなさそうである。
 確かに,MPIってのは大規模な計算をするために使われるのが普通なので,小さな例題なんぞ,あっても大して役に立たない。また,プログラミングスキルが高い人しか使わない(使えない,かも)ので,短い例題よりは,いきなり並列Jacobi反復法のプログラムを提示して貰った方が即戦力として使える。・・・でもねぇ,一向に普及しないのはやっぱり適切なTutorialが少ないから,というのも大きいんじゃないでしょうか。敷居が高い,とか,アセンブラのように複雑,ってのは認めるけれど,こうまで一般化してないってのは,まずいんじゃないでしょうか。
 ちょっと検索をかけてみると,例えばこんなのがあって,かなり良くできている。んでも,もっと軽めの,説明もきっちりとした印刷物としての本が出版されていてもいいでしょ。
 しかも多倍長と来たら・・・壊滅状態だもんなあ。日本ではT大学のI先生のグループが先陣切って頑張っていたけれど,科研費の報告書はあれど,ついぞその成果を分かりやすく述べた本が出たという話を聞いたことがない。・・・ああ,いかんいかん,やることやらねば。・・・でも,なんか・・・ムラムラとやりたくなってきたぞい。うーむ・・・どうなることやら。

10/8(水) 掛川・曇

 爽やかな秋晴れとはなかなか対面できないまま,朝の寒さに震えつつ,これを書いている。ここんとこ毎日日記が更新されているのは,朝一コマ目の講義が増えたためである。大部分の人間は強制力が働かなければ勤勉になれない,というイイ見本がわしなのである。
 GPU並列化の動きあり?(PC Watch) うーむ,確かに発熱とダイサイズの増加がコストに跳ね返ってくるようでは,それも一案であるな。ついでにCPUも,もっとじゃんじゃんSMP化して安く提供してくれればありがたいのにねぇ。
 ただし,そうなってくると,MPIよかOpenMPってことになるのかなあ。ライブラリを使うだけユーザはともかく,プログラム開発となると,楽に組める方が良いもんね。全くこの分野はコンピュータのアーキテクチャに左右されることが多くて,一向に安定しませんなあ。そこがいいんだけれどね。

10/7(火) 掛川・曇

 寒いですー。もう気温が単調減少,このまま一気に冬かしらん?
 本年度は何故か(笑)大学院の講義を担当することになり,せっせと資料を作っている。困ったことに,PowerPointで印刷すると,特にTimes Roman部分がすっぽ抜けてしまう。何で?
 それはともかく,今年はMPIプログラミングをやろうと,作ったばっかりのわしのMPIBNCpackを題材に使っている。これが便利なんだ,自分で言うのも何だけど。既に実装されたものがあると,その内部構造を説明して,関数を呼び出して使って貰うだけで済む。しかもIEEE754倍精度,多倍長とどっちもオッケー。ああ,世界中でこんな講義が出来るのはわしだけさ,等と有頂天になってしまう。
 順番としては,先に1CPU用のBNCpackの例題をこなしてもらってから,ということになるが,使う関数はそれを土台にしているし,関数名もMPI版,1CPU版と殆ど共通しているから,提示した1CPU用のBNCpackプログラムをMPIBNCpackプログラムになおしてもらうのはかなり簡単(但し,私見)。ああ,楽チン。
 ・・・とはいえ,資料はかなりごっつい量になってしまっており,わしの担当分は前半7回だけだが,それとても終わった暁にはちょっとした本が書けるぐらいにはなっている筈。ん~,またぞろ本が書きたくなってきたぞ~。って,今日は一コマ目から講義なので,その現実逃避にラチもないことに意欲を燃やしているだけなのだが。
 来年度以降は,担当講義もネットワーク系から外れるし,卒研は全部,並列分散数値計算関係にしちゃおっかなぁ。もうTCP/IPがらみは技術が固定化されちゃって,興味が無くなってしまったのである。
 そーいや,藤田香織さんの新刊がようやっと発行されるようですな。来週に上京するので,その時にでも購入できればいいなあ。楽しみ。
 むー,PSXが年末に(PC Watch),ねぇ。ほ,ほしい。いい加減,HDD Recorderにもしたかったし,DVDに落としたいことも増えてきた。良い機会である。買う,買うぞ。あ・・・車検通さなきゃいけないんだった・・・。