October 27, 2004

10/27(水) 掛川・晴

 うーっ,寒い。明日は放射冷却現象が起こって更に冷え込むらしい。もうすぐ11月だもんなぁ。

 秋田から戻って気が抜けたのか,月曜日は風邪のためか頭痛がひどく,午後になって徐々に復活してきたのだが,以来,どうも日記を書く気分にならなかった。やらなきゃならないことは目白押しで,11月は出かける用事は少ないものの,篭って地道にプログラミングとベンチマークに勤しまねばならない。という訳で,日記更新の頻度は更に落ちる模様。死んだわけではないので,ご勘弁願いたい(誰に言っているのか)。
 ・・・なーんて言った舌の根も乾かぬうちに,何かムカつくことがあって長文を書き込んじゃったりする可能性もある。注意されたし(だから誰に向かって言っているのだ>漏れ)。

 そういやHOKKEの申し込みがそろそろだったよな,と思い,HPCのページSWoPP MLを見ても,まだアナウンスはない。昨年はどうだったかなと,自分のWeblogをチェックしたら,どうやら12月中旬(?)ぐらいで締め切ったらしく,講演申し込みができなかったと愚痴っている。今年はちゃんとチェックしなきゃぁ。

 ガンバローガンバロー。

Posted by tkouya at 08:31 PM

October 24, 2004

糸井重里「ほぼ日刊イトイ新聞の本」講談社文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-06-274901-7, \590

 いやぁ,Webってのは長く続けてこそ価値のあるものなんだなぁ,と思わずにはいられない。その理由は二つある。
 まず,本書は単行本が発行されたときに購読しているものである,ということだ。証拠はこれね。ノグッチーの新書の紹介記事だが,最後の方では単行本版「ほぼ日刊イトイ新聞の本」についても言及している。単行本が文庫化されるまで自分のこのサイトが続いていることに,我ながら感動しているのである。
 この頃ワシは「インターネット論」なる講義を担当していて,そのネタ探しにいろんな本を漁っていた。その一環に,毎日チェックしていたほぼ日のサイトの主催者の書いたモノも読んだというわけである。で,「人気のあるサイトにはちゃんとした理由がある」という当たり前のことを知ったのである。自分もWebサイトを持っていたので,出来うる範囲でコツコツやっていこうと認識を新たにしたのもこの頃だっけか。以来二年経って,ほぼ日もワシも変わった点・変わらなかった点がそれぞれあるものの,まだお互い存続していることに深い感慨を覚える。
 もう一つは,本書の最後に付加された第八章「その後の『ほぼ日』」の内容を,うんうん,と頷きながら読めることである。この「頷き」は,不満も満足も感じ付き合ってきたほぼ日の読者としての視点と,この二年間をそれなりに頑張って生きてきた現役労働者としての視点と,その両方に起因するものである。特に後者が重要だ。イトイは当然ワシのことなど知っているわけはなく,こちらの一方的な共感に過ぎないのだが,この世に生まれてきて,社会的に多少とも責任ある立場にあれば,常に上を目指すベクトルを抱えていなければならない。そーゆーベクトルの持つポテンシャルは,とてつもなく面白い毎日をもたらすとともに,深い疲労も時折運んでくるという,二律背反的な側面を持つ。休日や仕事の合間に訪れる休息の時間に,ついため息が出てしまうことも増えてくる。そーゆー毎日を重ねて二年。繰り返しになるが,やっぱり「お互いよくやってきたよなぁ」と言いたくなってしまうのである。あ,いや,もちろんワシの仕事量なんて,イトイに比べれば微々たるモンですけどね。Webサイトのアクセス数もほぼ日の1/10000しかないが,それはやっぱり仕事量の差でございましょう。

 という訳で,「自分のWebサイトを持ち,長く維持してきた者」として,「ポテンシャルを保持しなければならない,日々の糧を得る仕事を持つ社会人」として,共感を覚えずにはいられない本書は,単行本ともどもワシにとっての宝物なのである。

Posted by tkouya at 12:40 AM

October 23, 2004

10/23(土) >掛川・?

 日が変わってしまったので,昨日のことを書く。

 台風は過ぎ去ったというのに本荘は土砂降りだったが,羽田空港に降り立ったら,雲ひとつないピーカン晴れ。

 今回の研究会は,2年前ごとに開かれているもので,前回は徳島で開催された(2002.11/19の日記参照)。参加者が多くて中々盛況。有意義な情報交換も出来た。
 会場は秋田県立大本荘キャンパス。リゾートかと見まがうでかい建物で構成されているきれいな大学であった。

akita-pu.JPG

 O先生,H先生ならびに研究室の方々にはお世話になりました。帰りは秋田空港までわざわざ送って頂いて恐縮です。Proceeding原稿締め切りは年末とのこと。後もういっちょ頑張らねば。

 帰宅してからも興奮冷めやらず,弊店直前に散髪屋に駆け込んで二ヶ月ぶりに短髪にしてもらい,そのまま職場へ直行。必要な資料をコピーして,今度こそ自宅でゆっくりこれを書いているという次第。

 ボチボチ寝ます。

 起きました。あーぐっすりぐっすり。

 ほぉ,Smithfieldは2005年7月~9月に登場か(PC Wath)。現行のPen4も近々EM64Tが使えるようになるらしい。するってぇと,今年中にはAMD64 vs EM64Tのベンチが,来年末にはDual Coreのベンチが出来るわけね。予算を確保しておかなくちゃぁ。
 後藤さんの記事では,フルでDual Coreを使うことは少ないので消費電力が抑えられるとしているけど,ワシみたいにClusterで使う人間にとってはほぼフルで使い続けることになるから,かなり電気を食ってしまうことになる訳だ。価格次第だが,2006年にはDual Core Clusterが射程圏内に入ってくるので,それまでに単なる計算速度のベンチだけではなく,消費電力の比較検討もしないといけないのかなぁ。どうやるんだろ?
 で,「電力計」で検索をかけてみたら,こういうものがあるらしいことを知る。早速資料を送ってもらう。しかし値段が分からないなぁ・・・。

 今年のを象徴する漢字(昨年までの結果はこちら)は間違いなく「風」だと思っていたが,今日の新潟地震で,「災」になるかも。まあ,規模の割には死者が少なくてよかった。

Posted by tkouya at 11:08 PM

October 20, 2004

10/20(水) 掛川->本荘(秋田)・土砂降り

 新幹線動くかなぁ・・・,あと一時間程で始発の時間。それまでに書けるだけかいておかなきゃ(Weblogではなくて,発表資料の方ね)。

 昨日,クローズアップ現代を見ていたら,全国の信金の格付けを発表しているWebページがあると知り,アクセスするも果たせず。みんな考えることは同じようで,アクセスが集中していたのであろう。先ほど(AM 5時頃)見てみたら,あっさりと繋がった->こちら
 ワシが虎の子の(と言う程の額かよ)預金を預けている信金は幸いなことに三つ星(最高ランク)であった。やれやれ。

 では行ってきます。

Posted by tkouya at 05:18 AM

October 19, 2004

10/19(火) 掛川・雨

 ぐぅおおおおおお,またまた・・・また台風かよぉ。しかも夏のワークショップと同じく,旅先で台風が過ぎ行くのを待つパターン。でも今回は羽田から飛行機を使わねばならないところが深刻である。
 果たして明日の飛行機は飛ぶのか。いや,それよりも東海道新幹線は平常どおりに運行してくれるのか。いやいやそれよりも・・・計算結果だけ何とかひりだして,全然出来上がっていない発表用資料はどうなるのだぁ~(自業自得)。

 何はともあれ,明日は始発の新幹線に乗るので,風呂に入って寝ます。後は何とかなるだろう~。明日は明日の台風が吹くぅ~。

Posted by tkouya at 08:42 PM

October 17, 2004

10/17(日) 掛川・?

 何とか今週水曜日からの研究集会でしゃべるネタは仕込めそう。先ほど,MPIバージョンが動作するようになったので,ベンチマークの結果は明日にまとめてしまいたい。さてどうなることやら。

 SciCADE05のWeb siteはどうやら完成らしい。嫁いびりが趣味の舅が,障子の縁を人差し指でこすり,それをしげしげと見つめつつ,「あ~ら,M子さん,まだ埃が残っていますことよ,おほほほほほほ」と言うがごとくの細かい突込みを以前したのだが,それも殆ど治っていたのは感心。
 それにしても,昨今の研究集会は,国内であろうと国際であろうと,業務の殆どをWebで行うようになってしまった。従って,お世話役はHTMLを書くだけではなく,CGIやPHPスクリプトも書かなくてはならない。IT化のおかげで省力化ができる面もあるが,かえって仕事量が増えてしまったってのは皮肉である。

 金がない。残金300円程か。資金繰りが短期的にショートしてしまった上,貯金を下ろす時間が取れなかったためである。明日以降は解消する見込みだが,こんなに金がないのは大学学部生以来である。あの頃は一袋30円のパンの耳をモシャモシャやってしのぐことが出来たが,イマドキ,そんな良心的な店は存在しない。ましてや掛川のような中途半端な田舎ではなおさらである。
 ただ,米も味噌も備蓄があるので,食うには当分困らない。自炊生活に切り替えておいて助かった。とりあえず,味噌汁の具と納豆を216円で購入し,水曜日までは食いつなぐことにしよう。

 今日はもう風呂に入って寝ることにしようっと。あ,その前に,あの本をやっつけておかないと・・・。

Posted by tkouya at 07:54 PM

October 14, 2004

10/14(木) 掛川・?

 天気を忘れてしまうほど,あれこれと目まぐるしく用事に振り回された日であった。

 N大の学術講演会の締め切りに間に合わず,参加は断念。その代わり,某研究集会のポスターセッションへ発作的に申し込む。一応査読があるそうなので,通るかどうかは不明であるが,まあ一回ぐらいはやっておきたいテーマである。デモンストレーションも可能なので,ちゃんと動作するところをお披露目しておきたいし。11月中にデータをまとめて締め切り(12/10だそうな)前にupしてしまう予定。さてどうなることやら。年末はもう一つ投稿中の論文共々rejectされてしまって,べそをかくことになりそうな予感。ま,それも人生である。

 今年の三年生向けのゼミは「Spidering Hacks」(翻訳版の方)を読んでいる。まだプレゼンというものがどーゆーものかが全然分かっていない学生さんを相手にしているので手間はかかるが,2回目になってようやっと少し形になってきた。一通り発表すると大分マシになるかなぁ。
 ITリテラシの普及とともに,ソフトウェアやハードウェアがのように動いているのかという内部への関心は薄れ,ネットワークの設定だのプログラミングだのとなると途端に能力差が画然と現れてくる。また,社会全般の傾向もそうなのだが,ガミガミと口うるさく学生さんを叱ったり,講義で締め付けたりといったことをあまりしなくなってきていることも影響しているようだ。「柔らかに突き放す社会」が定着した感がある。教師は楽だし,学生さんも楽なんだろうが,ちょっとまずいよなぁ。嫌な嫌なイヤーな教師は絶滅しつつあるんじゃなかろうか。後から振り返ってみると,そーゆーヤな教師から得るものの方が,反面教師という側面に限らず多かったように思えるのだ。

Posted by tkouya at 08:04 PM

October 12, 2004

10/12(火) 掛川・曇後雨

 厚いんだか寒いんだか,寒暖の差が激しく動く気候に,どういう格好をしていいのやら迷うこと多し。このまま暖冬に突入するのかしらん?

 Scilab3.0を使って懸案の大規模(っても50次元足らずだが)を解いてみる。便利ではあるが,パラメータを弄くるのが面倒で隔靴痛痒の感があるな。

scilab30-ode.jpg

 数値計算の機能に限ると,Matlabに比べてどうなのかなぁ。あんなド高いソフトを買う余裕なんぞないから,当分はこれで我慢しよう。あんまし不満もないしな。Octaveよか,よっぽど使いやすいし,Win32環境でもインストールがめっちゃ楽だし。

 寝ます。

Posted by tkouya at 11:07 PM

October 07, 2004

10/7(木) 掛川・晴

 もうTシャツ一枚で寝るのは止めにしようと決意した朝。また台風が来襲しそうだというニュースが。もうどうでもいい。

 再来週の本荘出張と,11月下旬の京都出張のために,「旅の窓口」を使って宿の確保を行う。楽天に買収されて以来,いつこのブランドが無くなるかなと思っていたら,最近,ダイレクトに個人ページにアクセスできなくなった。アクセスしようとすると,「楽天トラベル」に移行してくれよというお誘いページが表示される。面倒なのでずーっと「旅の窓口」のIDを入力して使っていたが,この度は三木谷社長の熱意に押されて移行措置を行った。で,やっとcookieを使って個人ページへの直接アクセスが出来るようになったという次第である。使い勝手が全く変わってないのは幸いであった。これからもよろしく。

 あ,昨日のWeblogに訂正があります。講演数をチェックしていたら10に届くか,せいぜい9止まりであることが判明致しました。「10を越える」というのは査読論文も加えてのことであります。それでもワシにとっては空前絶後の数であることは間違いない。

 「多倍長数値計算」についてのまとまった本ってないよなあ・・・とぼんやり思案中。これについて論じようと思えば,


  1. 固定精度と多倍長精度

  2. 多倍長数についてのアルゴリズム・実装両面の記述

  3. 多倍長数値計算を実行するためのソフトウェア環境

  4. 多倍長数が必要となる事例の紹介(悪条件問題,任意次数アルゴリズム等)

  5. 並列線型計算の有用性とベンチマーク

  6. 大規模な多倍長数値計算の事例


についての記述は絶対に必要になる。理論・実装・ソフトウェア環境の三本柱のどれが欠けても,「多倍長計算はπの計算だけではないぞ」という,actual宣言が出来なくなってしまう。
 そーゆー話題なら,ワシよりもっと相応しい先達者がおられるのであるが,皆さん学術論文を書くのに忙しく,過去の話題をまとめる作業をやって下さるとはちょっと思えないのである(短い記事なら幾つかあるけど)。有言不実行になる可能性大だが,ボチボチ自分がやってきた所ぐらいは(それが上記の項目なのだが)まとめておく時期であろう。本年度のお仕事が一段落したら着手したいなぁ。

 ↑・・・というようなことを以前にも書いたよーな気がするぞ。同じ事を考えつつ,時に堂々巡りしながら,時にちょっと摂動が入ったりして,最終的には何らかの形になっていくのであろう。そういや,Tutorialはこれを目指そうとして挫折した結果できたものであった。まだ未完なんだけどさ。ま,商業出版をしようというのではないから,自分が楽しめるものを,西川きよし師匠のように「小さなことからコツコツ」積み上げて行くしかなかんべよぉ。

 お掃除の神がご帰宅なされるので,それを見送ってあとは終日自宅に籠もる予定。んでは。

Posted by tkouya at 08:07 AM

October 05, 2004

10/5(火) 掛川・雨

 ちょっと肌寒い土砂降りの日。明日は晴れて気温も29℃になるようだ。もう10月である。太平洋高気圧にはもういい加減引っ込んでもらいたい。タダでさえ,うちの若いモンが風邪を引きやすくなる時期なのに。

 Gladmanさんのお仕事を利用して,gmp-4.1.4を使ったMPIBNCpackがようやっとWindows MPI Clusterで動作するようになる。今日はP3 1GHz(cs-pccluster)にて動作することを確認できた。しかし,どーも,アセンブラルーチンの挙動に不審な点が見受けられる。卒研でこの辺りのベンチマークをきっちりやる予定で,そこそこperformanceが上がっていることを確認の上,まとめるつもりである。
 さーて,この先どうやってこのWindows用ソフトウェア群を公開しようかな。ぼちぼちBNCpack関係のソフトウェア群が増えてきたので,いっそのことAnonymous FTPにまとめてしまうかとも思案中。

 連携して,Scilab3.0のODEパッケージを試してみる。500次元を越えた辺りで,stack overflowが出てしまい,数値解の計算が出来なくなることを確認。さて,あとはあれとこれを解いて・・・と,木曜日で半分終われば三連休で何とか。最後のスパート,えいえいおー。

 11月のスケジュールを確認していたらエラいことになる可能性が。毎週研究会に出席することになるかも。今年度だけで10を越える講演数・・・我ながらこのバカさ加減は素敵である。来年はもっと落ち着いて査読論文を書かねば。

Posted by tkouya at 10:05 PM

October 03, 2004

あとり硅子「ばらいろすみれいろ」ウィングスコミックス

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-403-61766-2, \520

 出版社(新書館)によれば,著者が亡くなったのは本年(2004年)7月6日(火)であるらしい。享年34歳というから,ワシより一歳下となる。間違いなく,現代では夭折の部類だろう。
 で,著者が亡くなるとその著作は「最期の」とか「追悼」という文字の入った腰巻を伴って販売されるのが通例である。ワシが直接目撃したところでは,浜松と神保町の大型書店で,店員のポップも飾られて販売されていた。
 そーゆー,人の死を利用した販売戦略を蛇蝎のごとく忌み嫌う人がかつては多くいたように思う。大塚英次もかがみ♪あきらが急死した後,遺稿集の発行を言い出す出版社に対してはカチンときたらしい。ワシも若いころは,書店で平積みの遺稿集を見る度に何だかイヤな気分を味わったものである。
 しかしモノは考えようで,あまりにも露骨な売らんかな的態度ならともかく,それなりに節度を保ったものならば,遺作となった著作の営業もそれほど悪くないと,今は思っている。それは鶴見俊輔が自身の新刊について「これは僕の葬式饅頭本だ」と述べているのを読み,ああそういう考え方もあるのか,と目から鱗が落ちてからのことである。すべからく,その手の営業は「死亡広告」,著作の売り上げは「香典」と考えればいいのであった。

 今回,出版された「香典」は2冊ある。一冊は「あとり硅子イラスト集」(\2000),もう一冊は短編集「ばらいろすみれいろ」(\520)である。・・・2520円の香典は安すぎますかそうですか。でもしゃーない。それ以外の単行本「夏待ち」「ドッペルゲンガー」「光の庭」「これらすべて不確かなもの」「黒男」「四谷渋谷入谷雑司が谷!!(1)」(これだけ第4刷)「同(2)」は殆ど初版で持っているのだから。もう買うものがないのである。すいません。今のうちにもう一セット購入しておくべきかしら・・・。
 というのも,出版社の規模,現在の出版状況からして,また,著作の少なさ,作品自体のインパクトのなさ(後述するが,これは悪口ではない為念)からして,遠からず新刊書店からあとり硅子作品が消え去ると思われるからである。で,悔しいから,ここで弔詞代わりに,彼女の作品に見られる「哲学」をがなり立てておく次第である。

 彼女の作品はどーも人には勧めづらい。とっても乱暴な言い方をすれば,ヌルい癒し系に分類されるであろう。であるから,「ああそーゆーのは間に合っているわ」と言われてしまいそうで,それがイヤさに黙って単行本が出るたびに買って読んで自分一人で「この良さが分かるのはワシだけさ」と自己満足に浸っていたのである。
 確かに,カタルシスを感じさせてくれるような作品を,彼女は一切書かなかった。しかし,一定数の読者を捕まえていたのは確かで,寡作ながらもある一貫した姿勢を貫き通した作品群を残して,この世を去ったのである。
 それを示す言葉を,つい最近,内田樹の「街場の現代思想」に見つけた。

 「愛において自由であろうと望むのなら,私たちがなすべきことはとりあえず一つしかない。それは愛する人の「よく分からない言動」に安易な解釈をあてはめないことである。
 「私にはこの人がよく分からない(でも好き)」という涼しい諦念のうちに踏みとどまることのできる人だけが愛の主体になりうるのである。」

 あとり硅子はこの「涼しい諦念」を持って,「愛」を描き続けた作家なのである。これが一番分かりやすく描かれた作品は,松尾おばさんも取り上げていた「これらすべて不確かなもの」であろう。この作品は,息子たちには「愛していない」とヌケヌケと抜かすものの,どうやら息子たちに対する「愛」らしきものは持っているらしい父親が登場する。長男は父親のこの態度に怒り狂い,次男と三男はこの二人の行動に振り回された挙句,「諦念」を持って「愛じゃなくても・・・・・・なんかよくわかんないもんがあんだろ きっと」と納得する。
 人間,性別はともかく,共同で生きていく限りにおいてはどこかで「涼しい諦念」を持つことが望ましい。その結果が愛と呼ぶものであるらしい・・・という哲学が彼女の作品を貫いているのである。

 遺作となったこの短編集に収められた作品についても例外ではない。「クピト」は正体不明の叔父から送られた,いたずら者の石膏像とそれに振り回される大学生の物語である。「オムレツの月」では,口が悪く出来も悪い召使ロボットを慕う少年が,「シンプルデイズ」では犬猿の仲である友人二人の諍いを楽しみつつ仲裁してとばっちりを受ける青年が,「ひとさらい」ではさびしい物語を記述されたさびしい本が,結果として「涼しい諦念」と引き換えに愛を知る物語と言えてしまうのである。表題作「ばらいろすみれいろ」では,主人公の青年が,中身の伴わない愛情を他人から寄せられて困惑する様が描かれており,ある意味,示唆的である。

 熱血ではない,低血圧マンガ(by 岡田斗志夫@BSマンガ夜話)の定義にバッチリはまる作品群でありながら,人には人が必要で,人同士が一緒に生きていくためには相手の訳のわからない言動も許容することが肝心,という哲学を提示し続けた彼女が夭折したのは真に残念である。しかしまあ,この哲学は一種の悟りであるから,悟った人物は早めに天上へ招聘されるものなのであろう,と一人納得しているのである。
 彼女の生前発行された単行本のあとがきは,必ず次の文句で始まっていた。

 「読もうという強い意志をもって読んで下さっているかたも,そうでないかたもこんにちは!!」

 ワシは最初,「そうでないかた」であったが,そのうち「強い意志をもって読むかた」になった。冊数の少ない彼女の単行本は,あまり書店の棚を占める政治力のない新書館から発行されているため,恐らく,今が一番入手しやすいと思われる。皮肉なことだが,この機会に「そうでない」多数の方に読んで頂き,「強い意志」を持つ方になることを,愛読者として願っている。

Posted by tkouya at 07:42 PM

October 02, 2004

10/2(土) 掛川->東京(予定)->掛川・?

 さすがにタオルケット一枚では寒くなり,寝ぼけ眼で毛布を引っ張り出してまた寝直した。風邪引きそう。これから先は急激に寒くなるんだろうか。

 昨日は静大非常勤のため,久々に浜松へ出かける。独立行政法人化して何か変わったのかなぁと思っていたら,敷地の角に「国立大学法人 静岡大学」という無意味な看板が立っていた。なかなかナイスな税金の使い方である。あとはそれ程変わらず(外面的には)。ま,そんなもんでしょ。
 帰りに谷島屋書店に寄って,「Comic 新現実 Vol.1」とあとり硅子「ばらいろすみいろ」を購入する。感想は後ほど。

 うわー,姫神さんの訃報が(読売新聞)。享年58歳かぁ。まだ若いぞ。昔さんざん聞きまくったことを思い出した。何はともあれ合掌。死んで欲しくない人ばっかり死んじゃって,生きていてもそれ程益のないワシみたいな人間が生き残っているってのは,どーなんでしょうね。やっぱり神様に好かれる人は長生きできないモンなんでしょうか。

 今日はLA研究会なのでこれから東京。あちこち寄り道して日帰り予定。んでは。

Posted by tkouya at 05:32 AM