日本IBM「グリッド・コンピューティングとは何か」ソフトバンク

[ BK1 | Amazon(まだ在庫なし) ] ISBN 4-7973-2339-6, \2400
 昨日(2004,3/25)八重洲ブックセンター本店に入ったら,コンピュータ書籍コーナーの所に専用の台が備え付けられ,本書がドドーンと積んであったので買ってしまった。そのすぐ後にGGF報告会に行こうって輩が,こんなもん買ってどーするよ・・・と思いはしたものの,何分,よーわからんのですわ,正直言って。この手のまとまった資料本が出てくれるのは,大変ありがたかったのである(情けない)。
 こちとら,HPC研究会の末席を汚しているから,それなりに話を聴く機会はあるものの,Gridっつーもんの実物を拝んだ訳ではなく,触ったこともないから,Gridがらみの研究報告があっても,「はあそーですか」という以外,さしたる感想はないのである。判ったよーな気がしなかったのである。まあ,The Internet上にセキュリティやら認証やらのAPIを備えたミドルウェアが出来ているのであろうというぐらいのイメージしか持っていなかった。
 で,本書を読めば,そーゆー漠然としたGrid像をもっと明瞭なものに出来るのか? と言えば,それはやっぱり無理だったのだ(泣)。しかも,GGF報告会では,本書P.169のコラムにあるWS-RF(Resource Framework)がOGSIの次を担うということになってしまったようなのである。詳細は,グリッド協議会の会員になって,中田氏のプレゼン資料参照して下され。いやぁ,日本語文字コードと言い,ISOと言い,IEEEと言い,標準化作業ってほんとに複雑怪奇な代物ですなぁ。・・・つまり,Gridを活用した具体的事例集とか,最新情報までばっちりフォローした完璧な資料集とか,そーゆーものではないのだ,本書は。かなり誠実にGridが成立するまでの歴史概略や,Globus Toolkit 2/3の解説とそれに必要なCAやらWebやらXMLやらの周辺技術解説,インストール方法等がコンパクトにまとめられていて有用であるには違いないのだが,ワシみたいな小規模PC Clusterしか使ったことがないバカタレにとっては,これでGridを分かれと言われても,うーん,難しいのであります。やっぱり具体的事例の解説がほしいなぁ。URIだけ示されても追いかけるのは大変であります。
 一応,素人向けの書籍に仕上がってはいるが,分散処理とか並列処理とか,TCP/IPに疎い人には,ここで用いられている概念理解が相当困難じゃないのかしらん? 著者らの努力によって,現時点ではかなり良い出来のGrid解説書になってはいるが,Gridを成立させているのは確固とした独自技術の固まりではなく,The Internetの上で培われて来た標準化技術,しかも激烈な競争を勝ち抜いてきたde facto Standardも含んだ寄せ集めである。もし本書の半ばで読了を諦めても,それは著者らの責任ではない。Gridというものを,シチめんどくさい内部技術をぜーんぶすっ飛ばして,ごく簡潔に提示する言語がまだ確立していないためなのである。逆に,ここで提示されている要素技術に親しんでいるIT技術者なら,付録のGlobus Toolkitのインストール方法を参考にして,Gridらしきものをでっち上げて楽しむことができよう。
 ・・・で,ワシと言えば,GGFの報告会を拝聴し,Globus Toolkit 4.xが出るまで様子見を決め込むことにしたのである(ぉい)。