[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-320-01758-7, \2300
情報セミナーIという,小規模ゼミを二年生対象に行うことになり,さて何をしようかな,Excelでもやろうか,でも自分でテキスト作るのもしんどいなぁ,何か手頃な教科書がないかな?・・・という訳で選択したのが本書である。
本書の目次を,Amazonの紹介ページからコピペして以下に貼り付けておく。
第I部 ホップ
データの入力
Excelの利用法
基本統計量
グラフの利用
ヒストグラム
第II部 ステップ
ピボットテーブルによるデータの整理
相関係数
散布図
第III部 ジャンプ
母集団と標本―代表的な分布
統計的推定 その1―母平均の区間推定
統計的推定その2―母平均の推定(近似的な方法)と母分散、母比率の推定
統計的検定 その1―仮説検定
統計的検定その2―分散分析
回帰分析―単回帰分析
わかりやすい報告書のまとめ方
いわゆる,数理統計学,統計解析,統計学,と銘打った大学学部レベルの内容を扱った教科書であり,もちろんExcelの機能を使って実習を行うことを前提としている。それが第I部~第III部に分割されている訳である。
と,まあ,ごく普通の教科書なのだが,ワシが気に入ったのは,Excelの操作に関しては結構複雑なものが多く,それでいて本文の解説をキチンと読み進めば,その操作がしっかり辿れるようになっている点である。実際,2年ばかりこれを使って,自学自習を行ってみたが,Excelの操作が分からない,と言った学生は一人もいなかった。よって,ワシの教育実践の経験から,本書の教育的レベルの高さは保証できるのである。
ただ,ワシが使用したのは第II部までなのである。ここまでは,一応統計量の解説なんかがあったりするものの,9割以上が単なるExcel操作練習として流せる内容なのだが,さすがに著者らは大学の講義としてそれではイカンと思ったのか,第III部の冒頭に確率の定義,事象といった,一番数学的かつ学生さんたちからは嫌われる内容を短くまとめてしまっている。そして推定・検定へと雪崩れ込むのである。ここに至っていきなり定積分なんかが出てくるんですぜ。そりゃぁ,今までは単なるExcel練習だと思っていた学生は戸惑ってしまうのである。やむを得ない,かなぁ,と思いつつも,もう少しこの第II部から第III部への不連続さを和らげる手段を講じることはできなかったのかなぁ,というのがユーザとしての偽らざる感想である。
一応,統計を講義したことのある者としては,どうせ数学の道具立てを使わなければ説明できない内容なのだから,大なり小なりそれを毎回使いながら説明し,少々の脱落者があっても仕方がない,君たちはこれに慣れてもらわねばいかんのだ,と説教をかましながらやるぐらいであったほうがいいのではないか,と思ってしまうのである。そこのさじ加減をうまくできないもんかなぁ,と日々悩んでいる教師としては,本書の説明の不連続さは一種,爽快ではあるものの,他の教師サンたちも同じ問題を抱えているんだろうなぁ,と消極的連帯感を覚えてしまい,その悩みの解決策が本書でも示されなかったことに,少し失望したのであった。