8/20(水) 掛川・残金五円

 うひょ~,珠洲市ぃ~,いや,涼しい~。
kakegawa_castle20080820.jpg
 ワシは寝る前に寝室の窓を開けて外の気温を確認し,涼しいようならクーラーを止めて寝るようにしているのだが,先日まではクーラーなしではとても眠れる気温・湿度ではなかったのだ。それが昨夜は,「こりゃ下手すると寝冷えするかも」と思うほどさわやかな涼風が吹きこんでいたのである。今朝もまだそれが持続しているので,これを書いている室内は自然風だけでさわやかな気温に落ち着いている。日中はまだ真夏の気温になるようだが,秋の気配は一足早く到着したようだ。
 日曜日のTV番組で,雇用・能力開発機構廃止の方針が首相からなされたと行政改革担当相が述べたそうで。
 今一番やり玉に挙がっているのは「私のしごと館」。しかし,回収・効果の見込みが薄い巨大投資をするって体質は今に始まったことではないし,そもそもそれだけの銭が流れ込み,それをあてにした政治家の食いものにされることが常態化しているってことが問題の本質なんだよな。だから,今の事業を続けるかどうかってことも含めて,今流れて来ている雇用保険の利子収入をどこに付けるか,都道府県に移管するのか,やっぱり中央で監督するのか,それが決まらんことにはまた看板の架け替えで終わっちゃう可能性が高いと思うがなぁ。ま,首相のお手並みを拝見させて頂きませう。
 戦利品を獲得するのと引き換えに,ワシの口座の今の残金は5円である。
goen.jpg
 給料日まで,冷蔵庫に確保してある食材と,財布の中の1500円で食いつながねばならない。仕事する他ないのである。
 頑張って仕事します。

とり・みき,唐沢なをき「とりから往復書簡 1」リュウコミックス

[ Amazon ] ISBN 978-4-19-950091-6,¥933
comic_correspondence_between_tori_miki_and_karasawa_naoki.jpg
 それにしてもまぁ,とり・みきほど漫画家同士のコラボレーションが好きな漫画家は珍しい。一本立ちしている他の漫画家とコラボした作品集はこれで3冊目になるのだから。
 最初は原田知世ファン続きの畏友・ゆうきまさみとの共著,「土曜ワイド殺人事件」,「新・土曜ワイド殺人事件」である。これは,とりがコンテを起こし,ゆうきがそれを土台に下書きを入れ,とりがペン入れをして原稿を完成させるという,原稿を持って往復する編集者泣かせの手順で作成されたギャグシリーズである。後述するが,とりの絵に現れてきたシャープな線と抑揚は,本作でゆうきから影響を受けて形成されたモノではないか?
 次は,とりと同じく秋田書店で活躍していた,おおひなたごうとの共著,「エキサイトな事件」(秋田書店)である。今では弱小に落ちてしまったポータルサイトExciteで細々と連載されていた四コマ(?)マンガを,西原理恵子担当者として名を挙げた,新保信長が編集し,コラムを追加して一冊にまとめ上げたものである。
 そして今回,3冊目,唐沢なをきとの往復書簡,というより,受と攻の形式で原稿をお互いキャッチアップしながらコミックリュウに連載を続けている異色作が単行本として出版されたのである。それがこの「とりから往復書簡」である。
 唐沢なをきがメジャーになって来た頃,等身の短いキャラクターといい,サインペンによる抑揚のない描線といい,無機質なギャグといい,その作品はとり・みきのものとよく見間違えられたものである。それも当然,唐沢なをきは,とり・みきの臨時アシスタントを務め,強く影響を受けているのである。本書に収められている対談でも触れられているが,その詳細は「マンガ家のひみつ」(徳間書店)で唐沢自身が語っている。ちょっとその部分を引用しておこう(P.138)。

唐沢なをき「それでとりさんのマンガを読むようになって,初めて感動したのが『ポリタン』と『ときめきブレーン』。このふたつは本当に泣けるほど感動しました。ああ,こういうのを許されている人がいると(笑)。しかもそういう人にネームを見せたら,すごい褒めてもらったじゃないですか。スゲェうれしかったですよ。なんだ,やっぱりこれでいいじゃん,という。」
とり・みき「悪いほうへ導いた(笑)。」
唐沢「それまで編集者にはケチョンケチョンだったのが,あ,これ面白いよ唐沢君って言ってくれたんですよ。あのひと言はなんかすごい支えになったなぁ。」

ということで,自信を失いかけていた唐沢を復活させたのはとり・みきだったのである。美談である。
 しかし,一見すると作風が似ている両者だが,こうして一冊にまとめられたものを読むと,今ではかなり絵にもギャグにも違いが出てきていることが分かる。唐沢の絵は,とりが流行らせたサインペン調を保っているのに対し,師匠・とりの絵は,一度解体した抑揚のあるペンタッチが復活しており,デジタル処理を使いこなせるようになったことでシャープさがより増している。印象を一言で言うと,唐沢の絵には温かみがあり,とりの絵には冷たさを感じるのである。本書が心地よいハーモニーを奏でているのはそれが理由の一つなのだろう。
 もう一つ,心地よいハーモニーの理由として,とり単独作品に比べてギャグの「毒」も「中和」されていることが挙げられる。この「毒」に関してはとり自身が自覚しているようで,おおひなたとの共著における対談でも「人が悪い」(P.134)ということを述べている。そう,とりのギャグにはかなり奥深いところを抉る鋭いものが秘められているのである。ちょっとこれは言わない方が・・・と思った所をズバッと言ってのけるところがあるのだ。
 一番印象深いのは「愛のさかあがり」で使っていた

「いきなり自由落下がオッシャレーになってしまった」

というものである。これ,某人気アイドルが飛び降り自殺した事件を受けてのギャグなのだ。ワシはこれを最初に大判の単行本で読んだとき,ヒドイ,と思うと同時に,スゲェ,と驚嘆したものである。この辺のDNAはDr.モローにも共通しているようで,さっき買ってきた同人誌「フデコ伝説 XII」を読んでいたら,コミケ前代表・米澤嘉博の急死を受けて

「ヨネザワさんはアタシたちに身をもって教えてくれたのよ」
「やっぱりタバコは体に悪い」

というギャグをカマしていて,ひっくり返ったところである。これ,コミケカタログに掲載されていた漫画なんだが・・・。
 そんな訳で,久々に集った師弟が共作した本書,とりの「冷たさ」と「毒」が程良い具合に唐沢によって中和された,万人にお勧めできる漫画エッセイになっているのである。連載はまだまだ終わりそうにないので,次の2巻が出るのも確実である。楽しみに待つことにしたい。

8/18(月) 東京->掛川・晴後曇

 脱糞の成果を見せるべく,朝一で丸の内オアゾに駆けつける。久々に東京の通勤ラッシュというものに巻き込まれてちょっと弱る。何せ,昨日の戦果が肩に食い込むからね。
 お盆明けというのは人間ドックに入るにはいい時期なのかどうか知らないが,今まで経験した中で一番込み合っていた。特に一番手間がかかる胃カメラは希望者が多く,これだけで30分以上待たされることに。検査の結果は3週間後に届くそうだが,軽い胃炎になっている以外は特に問題なさそう。午前11時前にはすべて終了した。
 品川駅のSUICAロッカーに昨日の戦利品を預け,神保町をブラブラ。昨日と違って夏の暑さがぶり返しており,予定の品を購入した後は喫茶店に逃避する。
grape_fruits_juice20080818.jpg
 神保町も,来るたびに靖国通り沿いの古本屋さんが減っていくなぁ,と思う。三省堂本店を出て九段下へ向かう角に何件かあった店はチェーンの食いもの屋になっているし,老朽化したビルを建て直す工事が始まっている一角もあった。背後には再開発によって生まれた巨大なビルがそびえるようになっているし。
tall_buiding_in_jinbotyo20080818.jpg
 ワシの足腰が立つうちは,まだまだ古本屋さんにはたくさん残っていてほしいものである。
 大師匠のところへ立ち寄ったのち,新幹線で帰宅。ふー,疲れた~。ぷちめれをアップしたら,今日はもう寝ます。明日から日常業務に復帰だだだ!

8/17(日) 掛川->東京・晴後雨

 決戦は日曜日~。というほど大げさなものではないが,先週は完全にヒッキー状態で運動不足ここに極まれり,だったのでちょと中年オヤジとしては体力に不安があったのである。
 帰省ラッシュの最中なので,掛川を朝一に出発するはずが寝坊。仕方がないので,掃除洗濯を済ませて8時30分のこだまで東京へ。空を見上げるとうろこ雲が出ていた。もう秋の気配が漂っている。
kakegawa_st20080817.jpg
指定席はいっぱいということだったが,自由席は最後まで7割ぐらいの乗車率だった。みんなこだまが嫌いなの?
 両国の定宿についた頃には小雨がぱらついていた。
ryogoku20080817.jpg
 今日一日,もってくれるかしらん?しかし涼しいな。後でニュースを見たら,最高気温は都心でも25℃だったらしい。運動不足の身には助かったぁ。
 で,伯爵のお住まい((c)伊藤伸平)の下をくぐって戦場へ向かう。
tokyo_bigsite20080817.jpg
 荷物検査・・・気配もないな。まあ実際にやらかしていたら,午前11時に入場制限解除なんて無理だわなぁ。
 西ホール→東ホール(片方のみ)を流したところで約一時間。東ホールの野郎流体に流されて,一本木蛮さんのところにたどり着くのに泳ぐようにしたのがご本人には受けた模様。やでうでしや。・・・などと言っているバヤイではない。この時点でもう疲れがピーク。西ホールに戻ってゆっくり探索を・・・と思ったが,半分ほどで流したところでもう限界に達し,午後一時前には新宿方面に脱出した。宿で戦利品を見たら・・・
my_trophy20080817.jpg
げげ,高さ15センチはあるぜ・・・どーりで重かったよなぁ。しかもエッチ本は一冊もなし。ワシも枯れたものよ(ウソ)。
 新宿では紀伊国屋書店で「レッド1」「同2」を購入し(1を買いそびれていたのでこの機会にまとめ買い),崩壊寸前のデイバッグの代替品を東急ハンズでゲットし,晩飯用にと高島屋のデパ地下で焼きサバ弁当を入手した。短時間でこのすべての買い物が済んでしまうのは,これだけの規模の店が一か所に固まっているから。やっぱ,南口って便利。名古屋駅もこの組み合わせ(書店は三省堂だけど)なんだが,やっぱり新宿の成功があったからなのかなぁ。
 つーことで,今この記事を両国の宿で書いてます。はー,買い物は楽しー。が,明日は人間ドック。今までの脱糞の成果を見せる時だ。気合いを入れて丸の内オアゾに出撃するぞ~。
 戦利品を読みながら寝ます。

寺島令子「墜落日誌 社会見学編」エンターブレイン

[ Amazon ] ISBN 978-4-7577-4397-7, \780
falling_down_diary_social_watching_part.jpg
 ページ数の割に,読了するまでに時間がかかる漫画,は存在する((c)須賀原洋行)。例えば小田空。例えば西原理恵子。読みにくいわけでは決してないが,一コマ当たりの情報量が多く,それをきちんと読み取って次のコマへ移動するまでの時間がかかってしまうのである。但し,小田はチマチマと書き込む派(以下,チマ派と略記),サイバラは芸術的なギミックを詰め込む派(以下,芸術派と略記)であり,タイプは完全に異なっている。しかしどちらもエッセイ漫画であるという点は共通している。
 かつてのアスキー,今のエンターブレインが出版していた漫画にも二系統が存在している。芸術派の代表は桜玉吉(今どうしているのやら~)だ。そして,小田空タイプ,つまりチマ派には,水玉蛍之丞,そして寺島令子がいる。この二人のチマ派が描く作品は,かのいしかわじゅんより「濃いマンガ」として認定されているぐらい,情報量が豊富なのである。それが水玉の「こんなもんいかがっすかぁ」(1994年)であり
how_do_you_like_that_things.jpg
今回めでたく新刊が6年ぶりに出た,寺島の「墜落日誌」
series_falling_down_diary.jpg
なのである。ちなみに墜落日誌は4巻目「ネットゲーム編」があるはずなのだが,ワシは買いそびれてしまった。ごめんなさい。
 このチマ派の2シリーズは,長期に渡って連載されたということもあって,すっかりGUIにインターネットが当たり前になった昨今では,日本のITの歴史を語る貴重な資料となっている。水玉のものは1994年までのPC通信(インターネットじゃないのよ,ええ)について,寺島のものは1989年から2008年現在までのゲームの進化を知らしめてくれるのだ。特に後者は作者自身の体験日記(それを「墜落」と称しているらしい)となっているので,何とゆーか,エンタメにはついぞ縁遠かったワシとしてはそのバイタリティに感心させられてしまう。
 この夏(2008年7月)出版された「墜落日記 社会見学編」は2002年から2008年まで,掲載紙のログインが休刊するまでの作品が,著者の注釈や編集者との対談記事と共に収められている。前作4巻と異なり,版型が細長くなっているため,タダでさえチマ派な見開き2ページのコママンガが更に縮小されており,そろそろ老眼になりかけている中年オヤジには写植文字がちと読みづらい。だもんで,最初の方はナカナカ内容に入れず,グズグズと枕頭に置いて少しずつ読み進めていたのだが,次第に慣れてくると一気に読了できた。つまりそれだけハマる作品なのである。そして一度このチマ派のマンガに慣れてしまうと,もう普通のスカスカエッセイ漫画なぞ,生ぬるく感じてしまうのである。恐るべし,チマ派の洗礼!
 内容はというと,
 ・ネットゲームをやりつつ
 ・PCの不調に悩み,パーツをとっかえひっかえしつつ
 ・うどん会と称する編集者らとのパーティを定期的に催して料理や山登りを楽しみつつ
 ・e-Taxに挑戦しながらついぞ電子申告を果たせず
 ・様々な博物館を探訪する
というものになっている。これを毎回2ページに詰め込むんですぜ,ダンナ。チマ派の技巧ここに極まれり,となるのも無理はないのだ。
 それにしても楽しそうな日常で,羨ましい限りである。バツイチになっても健全な社会生活が維持されているのは,本人のバイタリティもさることながら,うどん会を初めとする友人知人関係とのコミュニケーションの賜ですな。一人でシコシコ作業せざるを得ないマンガ家という職業なのに,あくまで創作態度はオープンに保ち続けている。そこが,20年近い連載を維持できている秘訣なんだろうな,きっと。