小熊英二・上野陽子「<癒し>のナショナリズム」慶應義塾大学出版会

 [ BK1 | Amazon ] ISBN4-7664-0999-X, \1800
 日記にも書いた通り,本書は小林よしりんの「戦争論3」と並んで平積みにされて販売されていたものである。まんまと三省堂本店店員さんの術中にはまって購入してしまった訳だが,いやあ買って良かった読んで良かった,面白くって一気読み。論旨がすっきりしているし,評論にありがちの難渋な言葉もない。何より,副題である「草の根保守運動の実証研究」という言葉が示す通り,第3章の「史の会」のレポートは実際に会に参加し,そこに集う人々に直接取材した結果を用いて傾向を分析した部分が一番興味深かった。
 第4章では「不安なウヨクたち」として詳細にこの分析を行っているが,いやあ,自分が「不安なウヨク」であることをまざまざと教えてくれましたなあ。だからといって「サヨク」になるつもりもないんだけど。
 「不安なウヨク」であるわしとしては,当然丸山眞男の影響大な小熊に対して反論したいことは当然あるのだが,それはいずれ書く(かな?)「戦争論3」のレビューにて述べることにしたい。が,本書はわしや上野を含めた現代日本人にシンパシーを感じさせずにはおかない「新しい教科書を作る会」の運動をかなり正確にスケッチとして描き出した優れた研究書である。「いやぁ一本取られたわい」という気持ちを込めて,断言しておきたい。