内田樹「態度が悪くてすみません」角川書店

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-04-710032-3, \724

態度が悪くてすみません
内田 樹〔著〕
角川書店 (2006.4)
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 全く,読者をなめるにも程がある。本書は角川Oneテーマ21(このシリーズ名もフザけている)新書の一冊であるにも関わらず,首尾一貫したテーマがない。一応,無理やり「知ること」というテーマは付いているけれど,そんなモン,学者の書いたものならみんな「知ること」について何らかの考察を行っているに決まっているのである。
 ここに収められている文章は,マスメディアに発表されたものが多く,内田ファンでありかつ遅ればせながらのナイアガラーの一員であるワシは,「あ,これ読んだ」というものも結構あった。つまり一言で言えば本書は「内田のエッセイ集」であり,例えば「先生はえらい」のような首尾一貫した書き下ろし作品ではない。内田が書く以上はコミュニケーション論に関する何らかの哲学論考が含まれているのは当然であるが,常識的に言って「Oneテーマ」と言えるかどうか,はなはだ怪しいのである。「知ること」という取ってつけたような説得力のないテーゼを掲げた角川書店の編集者が本書を刊行した本意は,やはり売れ筋の内田本をラインアップに取り込んでおきたい,というものであり,それ以上のものではないと断言せざるを得ないのである。
 でも内田ファンだから買っちゃうし,新幹線車中で完読してしまうのである。まんまと角川の優秀なる編集者の術中に嵌った哀れな一読者としては,私怨をここにぶちまけて憂さを晴らすほかないのであった。哀号。