September 21, 2010

「Comicリュウ 11月号 創刊4周年」徳間書店

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 4周年記念号である。・・・じ~ん。よくもまぁ続いてきたものである。2周年3周年での記事は既に書いたので,今回は常々感じていることを箇条書きにしてみる。

1.思ったより新人の活躍の場がない
 毎年2回,安彦良和&吾妻ひでおを審査員として招いての「龍神賞」を募集している他,Comitiaとかでも有望な人材を見つけてデビューさせたりと,結構新人発掘には熱心である・・・が,思いのほかヒットが少ない・・・ように思える。これが例えば一昔前の10代~20代前半の青少年をターゲットとした漫画誌であれば,5年経ったら相当な数の新人が人気連載を引っ張り,その分,ベテラン勢が別冊系列や他誌に活躍の場を移していくってのが普通だった。今は景気が悪い上に出版不況に加えて雑誌がダメになりつつあるので,なおさらなんだろうが,ベテラン勢がここまで固定化しているのは,嬉しい反面,ちょっと残念な感じもする。
 ワシが思うに,原因は二つ。一つは,龍神賞に集まる漫画家に,スッピンの新人があまりおらず(最終審査に残ってないだけかもしれないが),再デビュー組が結構な率で混じっていることが挙げられる。結果として作品の完成度の高い後者の作品が選ばれる率も上がり,新鮮さに疑問符が付くことがあるのだ。もちろん再デビュー組としては必死で生き残りを図ってのことだろうが,雑誌の新陳代謝としての機能に問題はないのか,と考えてしまう。二つ目は,2年目以降は雑誌の厚さがさほど増えておらず,そもそも多様な人材を登用する余裕がないように思えることである。普通,ここまで続いた雑誌であれば,ぼちぼち別冊を作るとかしても良さそうなモンである。台所事情は結構厳しいのかもしれない。

2. ターゲット層がSF・アニメ世代のオッサン中年に偏っている
 いや,いいことかもしんないけどw。意図していたかどうかはともかく,雑誌のカラーが当初から変わっていないどころか,さらに純化しているように思えるのは気のせいか? おかげでますます購読をやめられなくなっているワシなので,まんまと編集部の術中に嵌っている訳だが,もうちっと若いオタク連中を引っ張り込む作品布陣を考えてもいいように思う。年寄りのオアシスは,「別冊リュウ」に移行して,もっとガンガン新人を登用する場として本誌を活用できればベストかなぁ・・・と夢想しているのだが,いかがか?
 しかし,今のご時世,安定して収入があって,こーゆー700円近い雑誌に金を払って無邪気に喜んでいられるのは,のうのうと正社員天国を満喫しているバブル組以上の世代に限られるのかなぁ・・・と思うと,なかなか理想と現実のマッチングは難しおすなぁ。

3. 雑誌も単行本も営業力が増えていない・・・ように見える
 以前にも書いたが,単行本も雑誌も,営業力ねぇなぁ・・・・と思いつつ4年,今もそれほど事態は好転していないよう見える。ひとえに,あまり数が出てない故,なんだろうが,2に述べたような理由で購買層がオッサンに限られ,雑誌購読者が単行本を熱心に買うわけないってことを考えると,むべなるかな,である。やっぱ1で指摘したように,もちっと若者に媚びうる路線を強化してもいいんじゃね? まぁ,しばらくは電子書籍と紙媒体がせめぎ合う時代が続きそうだから,若い世代に紙媒体を買ってもらえるようにする工夫は必要だが。具体的なアイディアはあんましないけど,まずは徳間書店のWebサイトをもうちっと更新頻繁にするとかWebコミック版のリュウを作るとかしてもいいかなぁ。ともかく,書店で目立ってないことは事実なので,頑張りは認めるけど,徳間唯一の青年(中年?)向け漫画雑誌なのだから,かつての「少年キャプテン」程度の部数(知らんけど)と目立ち度は確保してほしい。

4. 大塚英志の連載が全然浮いている
 今月号の「大塚教授の漫画教室」,いつもにも増して熱い! 怒りというか情熱というか,グデグデした文章で本音をぶちまけつつ,最後は「やってやるぜ!」という決意表明,さすがである。でも一度神戸芸術工科大学の学生+教員による合作が掲載されて以来,とんと大塚が育てた新人さんの音沙汰をリュウでは聞かない。大塚によると,縁もゆかりもない少年サンデーとかでは担当さんがついたりしているようだが・・・やっぱ,1に戻るけど,あんまし手間のかかるスッピンの新人さんを積極的に育てる方針ではないのかね?せっかく大学内部で全然評価されてない連載を持ってくれているのだから,龍神賞を大塚に任せてみるとか,漫画講座から誰かデビューさせるとかしてもいいんじゃないか?

 ま~,毎月編集後記を読んでいると,なかなかリュウも大変そうな状況であることは理解するけど,このご時世,どこだって楽な日常を送っているところは少ないはず。4周年ということで張り込んだせいか,ビニール加工してテカテカになった本誌を見る限り,やる気はみなぎっていると判断する。5周年に向けて,ますますの繁盛,もとい,最低でも現状維持を期待して,このぷちめれを締めることにする。

Posted by tkouya at September 21, 2010 3:00 AM