いしいひさいち「ドーナッツブックス いしいひさいち選集37」双葉社

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-575-96082-9, \429
 何か今月は漫画ばっかり紹介しているよーな。まあいいか。ここんと専門書ばっかり読んでいるので,自然と頭が息抜きを要求しているのであろう。
 ひさびさのドーナッツブックス新刊。朝日新聞で連載を初めてから刊行がほぼストップしていたとおぼしい。ジャンル別の単行本も良いが,これは忍者もの,戦場シリーズ,小説家広岡先生,ナベツネ,ノンキャリアウーマンとバラエティに富んだ作品が一気に読めてお得。ずーっと愛読していたのだが,このたび再開されて誠に嬉しい。著者のページで発売を知って早速買ってきたという次第。
 どれも四コマの天才いしいひさいちの才能が光っていて面白いが,やっぱり白眉は巻頭の「月子」シリーズだろう。わしの記憶では,藤原センセーを書くようになって,「得体の知れない美人」を使い始めるようになった。鼻面が長く,目がデカイキャラは慣れるまで違和感があったが,この月子シリーズはそれを更に増幅させて,不気味さを醸し出している。
 デビュー以来,もう何年になるのか? いしいの亜流漫画家が,今は亡き文春漫画賞(いしいも取っている)を受賞するぐらいの大ベテランなのに,まだ新境地を開拓している。誠に恐ろしい,天才とはこーゆー人を言うのであるなぁ,と長年の読者をしてため息をつかせる意欲作である。