古谷三敏「BAR レモン・ハート 19巻」双葉社

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 第一巻が1986年の初版であるから,もう16年のつき合いになる。途中,作者が大病して長期休載になって以来,年に一冊刊行というペースになった。大体は秋に発行されるから,今年もそろそろ,と思っていたら案の定,見つかったという次第。わしも仕事(逃避?)に明け暮れる中年になっちまったので,このぐらいの刊行ペースはちょうど良いのである。

 それにしても16年間,よくぞこれだけネタ切れにもならずに続いているよな,と感心する。蘊蓄漫画の元祖である著者だが,ここまで毎回酒をネタに取り上げていれば,もう蘊蓄を越えて専門家として威張っても良いのではないか。こちとらまるっきりの下戸であるが,おかげさまで酒の知識だけはこの漫画から摂取できている。

 松っちゃんは相変わらず女性に振られまくってまだひとり者だし,メガネさんのハードボイルドスタイルも変わらない。マスターはますます年齢不詳になる。この作品世界の安定感は,世知辛い世間とは隔絶されていて大変心地よい。こちらが飽きるまで,BARレモン・ハートの営業が続くことを願わずにはいられない。