糸井重里「ほぼ日刊イトイ新聞の本」講談社文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-06-274901-7, \590

 いやぁ,Webってのは長く続けてこそ価値のあるものなんだなぁ,と思わずにはいられない。その理由は二つある。
 まず,本書は単行本が発行されたときに購読しているものである,ということだ。証拠はこれね。ノグッチーの新書の紹介記事だが,最後の方では単行本版「ほぼ日刊イトイ新聞の本」についても言及している。単行本が文庫化されるまで自分のこのサイトが続いていることに,我ながら感動しているのである。
 この頃ワシは「インターネット論」なる講義を担当していて,そのネタ探しにいろんな本を漁っていた。その一環に,毎日チェックしていたほぼ日のサイトの主催者の書いたモノも読んだというわけである。で,「人気のあるサイトにはちゃんとした理由がある」という当たり前のことを知ったのである。自分もWebサイトを持っていたので,出来うる範囲でコツコツやっていこうと認識を新たにしたのもこの頃だっけか。以来二年経って,ほぼ日もワシも変わった点・変わらなかった点がそれぞれあるものの,まだお互い存続していることに深い感慨を覚える。
 もう一つは,本書の最後に付加された第八章「その後の『ほぼ日』」の内容を,うんうん,と頷きながら読めることである。この「頷き」は,不満も満足も感じ付き合ってきたほぼ日の読者としての視点と,この二年間をそれなりに頑張って生きてきた現役労働者としての視点と,その両方に起因するものである。特に後者が重要だ。イトイは当然ワシのことなど知っているわけはなく,こちらの一方的な共感に過ぎないのだが,この世に生まれてきて,社会的に多少とも責任ある立場にあれば,常に上を目指すベクトルを抱えていなければならない。そーゆーベクトルの持つポテンシャルは,とてつもなく面白い毎日をもたらすとともに,深い疲労も時折運んでくるという,二律背反的な側面を持つ。休日や仕事の合間に訪れる休息の時間に,ついため息が出てしまうことも増えてくる。そーゆー毎日を重ねて二年。繰り返しになるが,やっぱり「お互いよくやってきたよなぁ」と言いたくなってしまうのである。あ,いや,もちろんワシの仕事量なんて,イトイに比べれば微々たるモンですけどね。Webサイトのアクセス数もほぼ日の1/10000しかないが,それはやっぱり仕事量の差でございましょう。

 という訳で,「自分のWebサイトを持ち,長く維持してきた者」として,「ポテンシャルを保持しなければならない,日々の糧を得る仕事を持つ社会人」として,共感を覚えずにはいられない本書は,単行本ともどもワシにとっての宝物なのである。