[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-12-003684-7, \880
本書を一言でまとめると,不法滞在者のバングラディッシュ人と結婚した日本人漫画家によるエッセイ漫画ということになる。今回始めてこの結婚の顛末を単行本として刊行したことになるので,高橋由佳利,小栗左多里,流水りんごという国際結婚エッセイ漫画家グループにまた一人お仲間が加わったことになる。
黒川あづさといえば,ワシにとっては青年誌に連載されたラブコメ漫画「リダツくん」の著者,というよりは,やはり「じょりじょり系」ホモ漫画家としてのイメージが強い。
いわゆる男×男(この表記も古いかな)恋愛のジャンルは「ショタ系」「美青少年系」「じょりじょり系」の3つに大別される。このうちショタ及び美青少年系は,じょりじょり系に相対する,頭髪以外の毛を持たない人間しか登場しない「つるつる系」としてまとめることもできる。黒川あづさはデビュー当初この「つるつる系」の作品を描いていたが,そのうち中年オヤジに目覚めたらしく,ダンディかつアンニュイなじょりじょり無精髭漫画家を主人公とするシリーズを描くようになっていった。いわゆるBLと呼ばれるつるつる系作品群とは違い,青年漫画テイストの濃い絵柄だったと記憶する。ただ,作品や単行本に対するコダワリが強かったらしく,それ故なのか,近年はあんましワシの目にとまる所では描いていなかったようである。で,久しく見なかったじょりじょり系作家が,エッセイ漫画ライクな白くて軽い絵になって登場したのであるから,まぁ驚いたのなんのって。反射的に手にとってレジに向かったのは言うまでもない。
で,そーゆー経歴を知っていると,本書においては中年以上のオヤジの描き方が「じょりじょり系」的に丁寧であることに御納得頂けることであろう。資産家である義父や政治家の義兄の絵は力がこもっていて,さすが黒川先生ご健在なり,と拍手を送ってしまうのである。
最後にタイトルについても触れておこう。著者のダンナさんは結婚するまでは不法滞在者として日本で働いていたのだが,前述の通り,実家は資産家であるので,黒川先生は特に狙ったわけでもないのに玉の輿に乗ってしまったのである。で,「アジアの玉の輿」を略してこのタイトルになった,らしい。
まぁそれはいい。しかし,萌えるひとりものとして気になるのは,黒川先生がバングラディッシュ人のボンボンと結婚するに至った理由である。勿論,日本人とは何人かとお付き合いをしてきたのだが,「言葉は通じても本音を語らない」(P.10)野郎ばかりでお気に召さなかったらしいのである。「仕事でもないのにうわべだけのおつきあいするほど私もヒマじゃない」(同上)とは,誠にその通りであり,日本人独身男性を代表して,無駄に時間を使わせてしまったことを深くお詫びする次第である。
しかしまぁ,(現実の)日本男児に愛想を尽かしたおかげで玉の輿にも乗れて,セクシーなおみ足を持つダンナさんとも生活が共にできるようになったのであるから結果オーライ。今後の課題は唯一,本書がそこそこ売れて続編が刊行されて日本での生活を続けて行く事だけである。もしそれが適わなければご実家に戻られて,リッチな生活(だけではなさそうだが)を送る羽目になるらしい。黒川先生のお眼鏡が適わなかった日本人ひとりもの男としては,本書を身銭切って購入し,ご夫婦の日本生活への援助をさしあげることで,せめてもの償いをさせて頂きたく,今後のご活躍をBlogを見つつ,お祈り申し上げます。