路上観察学会「中山道 俳句でぶらぶら」太田出版

[ Bk1 | Amazon ] ISBN 4-87233-851-0, \1500

 国の財政事情がこれだけ借金漬けとなり,地方自治体も殆どが火の車,将来の少子高齢化社会に備え,いくら福祉や教育に力を注ごうにも金がなければ話にならぬ。それもこれも全ては要らぬ公共事業に金を注ぎ過ぎ,土建屋だけが儲けるようになってしまったからである。これ以上,インフラ整備のための公共事業は不要である。静岡空港しかり,第二東名自動車道しかり,神戸空港しかり,である。能登空港?・・・な,何事も例外はあるっ。
 (気を取り直して)しかるにっ,本書は国土交通省関東地方整備局,同東京国道工事事務所,同大宮国道工事事務所,同高崎工事事務所,同長野国道工事事務所,同多治見工事事務所,同岐阜国道工事事務所,同飯田国道工事事務所が主催もしくは後援に付いたシンポジウムのための「調査事業」として実施された中山道の路上観察を元に執筆されたもので,これこそっ,税金の無駄遣いの確たる証拠であるっ。なぜ全国の行政オンブズマンたちが本書を焚書にせぬばかりか,本書に多数掲載されている道路調査には全く役に立っていない写真とコメントと俳句を見てへらへら笑っているだけなのか,ワシには全く解せないのである。
 人の顔に似ているとはいえ単なる鉄板のへっこみ(P.54)が,「不要」とだけ書かれた安っぽい玄関チャイム(P.34)が,干からびて立てかけられた箱庭(P.121)が,一体何の調査結果だというのか,国土交通省はきちんとアカウンタビリティを果たすべきであろう。確かに横川で発見されたという横顔に見える家(P.67)には爆笑させられたが,一体全体どうして道路事務所の後援を得て,このようなものを見つけるような輩に由緒正しき中山道を徘徊させて俳諧させる意味があったというのであろうか。わしにはさっぱり分からない。分かったのは誰もこのような暴挙を責めたりせず,タダ笑っているだけだということだ。しかも呆れたことに,「奥の細道 俳句でてくてく」という類書が2,200円で既に出版されているということである。このような税金の無駄遣いを,ブンカだのゲージュツだのセンスだのという一言で許していいのであろうかっ! 日本の財政状況を悪化させている原因の一つとして,本書をここに提示する次第である。笑いながら怒る初期竹中直人を演じられて一石二鳥である。