吉川潮「完本・突飛な芸人伝」河出文庫

[ BK1 | Amazon ] ISBN 4-309-40787-0, \920

完本・突飛な芸人伝
吉川 潮著
河出書房新社 (2006.3)
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 芸人伝というと,今ではすっかり評価が定着した故人を扱うのが普通だが,これはつい最近物故した芸人か,今も現役バリバリの芸人を扱っている。月亭可朝なんて,本書で紹介されていなければ,ワシにとっては単なる選挙出たがりオジサンとしか認識されなかったであろう。あるいは,ショパン猪狩。昨年(2005年)に亡くなった時には,なんて一般紙の扱いが小さいんだろうと嘆いたものであるが,本書では「本田美奈子より偉大な芸人」と紹介されていて,溜飲を下げることが出来た。レッドスネークカモンよ永遠に,である。
 しかし一番興味を引いたのは,やはり快楽亭ブラック師匠(もう弟子はいないが)である。昨年借金騒動の果てに立川流を除名(破門より軽い)され,その直後に心臓発作でぶっ倒れた,あのお騒がせ真打噺家である。この騒動には吉川先生も立川流顧問として関わっており,ご本人のとりなしによって除名で納まったところを,よせばいいのにブラック師匠,雑誌で先生を批判したもんだからさあ大変,吉川先生のお怒りを買ってしまい,本書の追記ではケチョンケチョンに罵倒されている。文章上では至極紳士な著者をここまで怒らせるとは,やはりたいした玉である。それでも著者はどっかでまだ突き放しきれていないように思えるのだが・・・バカな芸人に対しては情が沸くものらしい。分かるけど。

 あんまし利口でない人間の,エネルギーほとばしる爽快な人生を短い分量で手堅くまとめた名エッセイ,読んで損はあるまいよ。ワシも大いに参考にさせて頂き,周囲の迷惑を省みることなく頑張ります。