「らき☆すた」への恩返しはテロ対策足り得るか?

 遅ればせながら,株主になった。
 角川グループホールディングス100株。
 最低売買1単位分でしかないが,ワシみたいな一般庶民には結構な金額であった。まあしかし,購入予定だった斜めドラム式洗濯乾燥機の性能に疑問符が出てきた上に,能登半島生活以来15年以上付き合ってきた2層式洗濯機の調子がまだビンビンに良いので買い換える意欲もすっかり失せてしまい,洗濯機買替用にとチマチマと貯金してきたおゼゼが浮いてしまっていたところだったのである。遊ばせてもしゃーない,恩義もあるしな,とばかりに投資へ回すことにした。
 住宅ローンをこの先20年も支払わねばならぬワシのメインバンクの関連証券会社に口座を開き,オンライントレードなぞ仕事の邪魔にしかならないから手続き不要と,電話から売り注文を出した。結果,斜めドラム式洗濯乾燥機に少し付け足すぐらいの金額であっさり成り行き買いができたから,ま,この夏の買い物はこれにて終了ということになったのである。

 何故角川だったのか? それは,昨年ワシが久々にはまったアニメ「らき☆すた」への恩返しに他ならない。何せ,すっかり朝方になっていたワシが深夜に放映しているアニメを見れるはずもなく,ついつい目の前にあるPCを通じてYouTubeに違法アップされているもので視聴を済ませてしまっていたのである。
 ごめんなさい。すいません。著作権を厳格に守るべき,そして守らすべく教育に励むべきものが,違法アップロードされているものをついつい24話分,ひとつ残らずぜぇ~んぶYouTubeで眺めてしまっていたのでした。ここに懺悔の意味を込めて謝罪する次第・・・なわけ,ないだろうっ!
 つーか,もしこのアニメがYouTubeにアップされていなければワシがこれにハマることは絶対になかったのである。その存在を知ったのも,ワシが愛読していた某同人サークルさんの日記経由だったし,そこからYouTubeへの番組主題歌へのリンクが張ってなければ,もろ三十路台オタク崩れ世代をターゲットとしたパロディ満載のそれを知ることもパーペキにありえなかったのである。ワシにとってはYouTubeさまさまなのであり,著作権や広告収入を逸したTV局や制作会社には申し訳ないが,時間に余裕のない社会人にとっては大変ありがたいメディアであった。何せ,毎週最新の放映が終了すると数時間後には必ずそれがアップされているのである。しかも余計なCMなし。便利極まりないとはこのことである。

 もちろん違法は違法。YouTubeでもニコ動でも目に余るものはドンドン削除されていき,らき☆すたについても一部は削除の憂き目にあっている・・・が,どうもそのペースは遅いよな,と感じていた。もちろん削除される端からまた違法アップされるといういたちごっこが続いているってこともあるんだろうが,かなり古くからアップされている,特に画像が若干粗いものはそのまま残っているケースが多く見られたのである。人手をかければ違法アップ動画の削除はそれほど難しいものではないから,どうも意図的に「お目こぼし」していたのではないか・・・との感触を持った。
 で,それが事実であったのは,このニュースとかこのニュースで明らかとなる。ほほう,やっぱり違法は違法・・・だが利用価値もありそう・・・そう冷静に判断する人材がちゃんと角川にはいたのだな・・・と感心させられたのであった。同時期に行われていた文化庁の著作権審議会では現状いやもっと古臭い権利ビジネスの枠組みでしかモノを語らない著作権利者団体の言動にうんざりさせられていたところだったので,この角川の姿勢はワシにとっては一種の清涼剤となったのである。
 ここは一つ,さんざん違法動画をただで見ちゃったことでもあるし,贖罪の意味も込めて角川さんに僅かながらも「おひねり」を投げ込んでおこうか,ということで,今回100株分の投資をさせていただいた次第である。

 今から予告しておくが,この先,世界中で「著作権テロ」が頻発することは間違いない。いや,もっと広く「知的財産権テロ」というべきか。ともかく,権利を持っている者に対して,持たざる者があらゆる手を尽くして権利を踏みにじる行為が,世界中に溢れること間違いない。それも声高に「権利を使ったんならその分金よこせ」と厳しく言いつのる輩に対しては相当過激な反動が襲い掛かってくるであろう。加えて,「無視」という合法的な手段によっても,報復がなされるに違いないのだ。「テロリスト」はこう言うに違いない。「それは一重に,知的財産を形成するために不可欠だった社会環境への配慮と,ちら読みを許すことで得られる広告効果を無視したことによる当然の報復である」,と。そしてこのテロリスト達には,相当数の支持が集まること間違いないのである。
 じゃ,どうすればいいのか?
 テロには飴とムチで臨むしかないことは,もう世の常識である。テロの土壌を無くすべく,ある程度の「お目こぼし」システムを作っておくと同時に,目に余る不正に対しては断固とした態度で取締りを行う。現状に甘んじる限り,この態度をとる他ないであろう。しかし個人的には,もっと「お目こぼし」システムを拡充し,お目こぼしそのものから利益を得る仕組みが取れないもんかと思うのだ。角川がその方向に向かってくれるとユーザとしても株主としても2重に嬉しいのだが,果たしてどうなるか。テロへの不安と,角川への期待の両方を抱えつつ,ワシはこの先の展開を注意深く見守っていきたい・・・あ,一応株価も,ね。